第36話
――――避けた
ギリギリだった。
弾丸は背中をかすめた。
あと一瞬、今の行動のタイミングがずれていたら、脇腹に穴が開いていただろう。
連が取った行動。
地面を蹴る足を刀に変え、伸ばしたのだ。
手足は、伸縮自在の刀に変える事が出来る事はもう解っていた。だから、地面を蹴る右足に力を込め、前への推進力を十分に得た直後、足が地面を離れる一瞬、その時に足を刀へと変貌させ、伸ばした。こうする事で、その一歩だけ歩幅を変えたのだ。
もし弾丸が正面から迫っていたのならこの手は使えなかった。しかし、弾丸が側面から迫っている今なら歩幅を変える事で、タイミングをずらす事が出来る。
こうして、連は弾丸を避けた。
「うおおおおおっ!」
一歩でステージの上に、踊り上がる。
連が刀の峰で女を強打しようとしたその瞬間。
連は地面に倒れ伏していた。
何が起こったのか認識が追いつかない。驚異的加速した思考の中ですら、何が起こったのか解らない。
そして、連は背中に鈍い痛みがある事に気がつく。
(背中を撃たれた……? 馬鹿な……弾丸は一発しか……)
そして、気付く。
(今、避けた弾丸が戻って来たのか……!)
連から見て左から迫った弾丸は、連の背中をかすめ、連の右側へ。そして、その弾丸はもう一度曲がり、連の背中に直撃した。まるでブーメランのような軌道を描き、連の背中に襲来したのだ。
「まあ、一回しか曲げられないとは言ってないわな」
女は平然と言い放った。
「それで? このまま死ぬか?」
後頭部に銃を押しあてられる。発砲直後の高温の銃口を当てられた事で、刺すような痛みを感じる。その痛みによる恐怖がじわじわと身体にしみこみ、震えが止まらなくなる。
自分の身体の回復力が果たしてどこまで上がっているのか解らないが、流石に頭を撃ち抜かれて、生き残れるとは思えなかった。
死の恐怖が再びせり上がる。
死にたくない……!
――諦めるな!
自分自身を叱咤する。
立て! 立て! 立て!
考えろ! 考えろ! 考えろ!
何かまだ手が――
「チェックメイトだ」
そして、女は引き金を――
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