第17話

「最近、何か危ない事に首突っ込んでない?」

 帰りのホームルームを終えた直後。騒がしいクラスの中。帰ろうとした連を呼び止めて、遥は言った。

 反射的に答えかけて、一度言葉を呑みこむ。そして、一呼吸おいてから平静を装って答えた。

「そんな事はない」

 連は嘘を悟られぬ様に慎重に答えたつもりだった。

「うそでしょ」

「……嘘じゃない」

「うそだわ……」

 遥は呆れた目で連を見ていた。

「何を根拠にそんな事を言う?」

「最近、放課後になったら慌てて帰ってるでしょ。放課後に何かやってんだよ。後は経験則と幼馴染の勘」

 恐るべし幼馴染の勘。

「何? なになに? 何の話?」

 そう声をかけてきたのはお調子者の友也。

 なにか面白い話をしていると思ったのだろうか。連達の傍にやってきて、楽しそうに二人の顔を交互に見ている。

「何でもない」

 そう答える連の答えを遮って、遥は言う。

「連がまた危ない橋を渡っているようなんだよ」

「またかよ。こないだも月高の奴らともめて問題になってたでしょ」

「あれは、たまたま洛高の生徒が絡まれてるのを見たから……」

「どっちにしても危ない事に、首突っ込んでるのは一緒」

 遥は連をじっと睨む。

「なんかあるなら言ってよね。あたしも力になるから」

「何にも無い」

 あくまで連は突っ撥ねる。

「あたしの合気道の実力をなめるなよ。部のエース候補なんだからな」

 そう言って、遥は鋭く拳を突き出す。確かにそのさまは非常に堂に入っている。

「合気道にエースがあるのか」

「ともかく、あんま他人の事ばっか構ってないで、自分の事も考えなよ」

 遥はそう言い捨てて、教室を出て行った。部活に行くのだろう。

「全く夫婦喧嘩とはうらやましい事で」

「誰が夫婦だ」

「最初はみんなそう言うんだよ」

「みんなって誰だよ」

 「じゃあーな」と言い捨てて友也も教室を出て行った。いつの間にか教室の生徒もまばらになっている。

 行こう。

 今日もパトロールと情報収集だ。

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