第34話
連と対峙する女。
時川文香は、正直驚いていた。
もともと笹賀原の奴に「面白そうな奴がいます」と連絡は受けていた。しかし、わざわざこちらから出向いてやるほどの事ではないだろうと考え、当初は放置しようとしていたのだ。
部下から妙な連絡がきたのはその後の事だった。どうやら何者かがわざわざこの場所に入る許可を電話で取ったらしいのだ。
そして、直感的にその電話の主が、笹賀原が言っていた「面白そうな奴」だと気がついた。
そして、よく取引場所として使っていたこの場所まで来て、様子を見れば、確かに笹賀原から送られてきた写真データの餓鬼だった。
だから、少し遊んでやろう。
そして、つまらん奴ならさっさと殺そう。
そんな風に考えていた。
でも、こいつは確かに面白い。
笹賀原の奴もたまにはいい仕事をするじゃないか。
笹賀原の話が本当なら、この餓鬼は力を得て、まだ一週間そこそこしか経ってないはず。それなのに、こいつはなんと弾丸を薙ぎ払ったのだ。高速の弾丸を薙ぎ払うなど、ベテランの能力者でも難しい事だと言うのに。
おそらくこいつには、眼に関して、『適正』があったのだろう。
そして、こういうタイプは伸びる。
時川はその事を、経験を通して知っていた。
だから、生かそうかと考えた。
時川は根っからの戦闘狂だ。常に戦いの中に身を置き、流し合う血の中でしか、人と語り合う術を知らなかった。
いつか、絶好の好敵手となりえるかもしれないこの命をここで奪うのが忍びなくなったのだ。
殺してしまったらもう、殺せないから。
だから、これは最後の「テスト」だ。
そう考えた。
この攻撃を防ぎきる事が出来たら、生かしておいてあげてもいい。
これで死んでしまうなら――
まあ、その時はその時だ。
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