「#365日ショートショート」を含む小説

「ネギがこのペースだと腐ってしまいそうです。あと鶏肉ですね。もう、安いからってあんなに買ってくるからですよ」「すまん、つい。その他には？」

その昔 身を清め子を作れなくも仲睦まじきはおばあさん

貸与されている合鍵を使い古びたドアを開ける。ぎいっと、湿気を感じさせる音。この木造のアパートは築何年になるのだろう。こんなことでもなければ訪れる機会はない。

「ご存じですか、信号機の耐用年数。約20年だそうです。信号の色をコントロールするのは信号機の中にある制御機ですが、一説によれば、全国で約4万基以上が更新期限を過ぎたまま稼働してい…

「それがあり得るんです！お任せください！」国立大学の事務局長である三ノ宮は頭を抱えていた。この営業マン、思っていたより押しが強い。三ノ宮が勤める大学は、スポーツ科で有名だった。野…

あの傍若無人な者たちがひしめく土地を、俺は死ぬまで恨み続けるだろう。ついに辿り着いた、昭和8年の大阪。俺の遺恨もここまできたか。あの土地へ就職し、過労とパワハラで社会からドロップ…

「博士、ついにやりましたね」「やったぞ。ショートショート自動執筆マシンの完成じゃ」陽が差し込む大学の研究室。博士と助手は固く手を取り合った。

あの日本の野郎ども、我々を何と呼んでいるかご存知ですか」「米、だろう」「そうです。我がアメリカ合衆国をなんだと思っているんだ。

切り株神社と呼ばれるそこは、地元でも有名な神社だった。事の始まりは数年前。長い年月を経て直径数メートルの幹に育った大樹が、雷の直撃を受けたという。

「もう、よせ。世間がそれを求めちゃあいねぇよ」株式会社西宝映画制作。老舗の映画会社の正門で、初老の男を若い女性が追いかけていた。

一度そう思ったら、もう駄目だ。笑いを堪えるのが大変だ。おじいちゃんのお葬式なのに、僕はひとりで苦しんでる。

「おお、戻ったか。よくやった。これで我らの農作物も無事に育つというもの」「遠路はるばる海を越えて、あの国まで行ってきました。

こうして刃物を突きつけて、もう数分が経っているのだ。ゆっくりとそれを肌にそわせ、つつっと滑らせる。肌の弾力が、まるで抵抗するかのように刃先を押し返した。

「なんだって」特殊生物対策班の作戦室は、騒然となった。舞い戻ってきた先兵から、息も絶え絶えに驚きの報告が入ったのだ。「なんてことだ。それでは手の打ちようがないッ！」キャプテンの幾…

子供が尋ねた。母親は展示ガラスの手前にあった説明文を読み上げる。「なになに……。これは、『タイムマシンの発明に失敗した人』というタイトルね」「へえ、面白い展示だね。私、この展示会…

「ええっ、あの胡散臭いやつ？」「そうそう。一昔前って、そういう変なサイトいっぱいあったじゃない」「あったあった。本当にいるのか分からない学者が出てきたり、成功した人の体験談が載っ…

裏路地にある雑居ビルの一室。結婚を誓い合った正男と義子は、フードを被った男とテーブルを囲んでいた。

君には俺よりふさわしい人がいるから、なんて、自分だけが気持ちのいい振り方。こんな男と付き合っていたなんて虫唾が走る。その優しい言葉がどれだけ小狡いか、自覚がないのが恐ろしい。「よ…

老人は空虚に話しかけた。コタツでみかんを食べながら、まるでその横に生涯の伴侶が座っているように。

運ばれた丼の中には、白い塊があった。ふにふにとしたそれは、微かに脈をうって動いている。なんだこれは。「あの、店員さん。これは……」