通常兵器が効かない

結騎 了

#365日ショートショート 152

「キャップ!くそう……!やつらには通常兵器が効きませんッ!」

「なんだって」

 特殊生物対策班の作戦室は、騒然となった。舞い戻ってきた先兵から、息も絶え絶えに驚きの報告が入ったのだ。

「なんてことだ。それでは手の打ちようがないッ!」

 キャプテンの幾島は頭を抱えた。

「……つまりそれは、どういうことでしょうか」

 熱心にパソコンに向かっていた分析官の小沢は、メガネの位置を直しながら問いかけた。

「通常兵器が効かない、とは。具体的にどういうことか、教えてください」

「ええと……」

 先兵が言葉に詰まる。

「キャップ、あなたも勢いで頭を抱えるのはやめてください」

 幾島は両手を頭から離し、苦笑いを浮かべた。

「すまない、ついノリで」

「よろしいですか」

 小沢は立ち上がった。

「通常兵器が効かない。この表現にはふたつの意味があります。ひとつは、通常兵器では単純に火力が足りないパターン。地雷、戦車、軍艦、戦闘機、大砲、ミサイル、あるいは拳銃を含む、大量破壊兵器を除く全ての武器で有効なダメージを与えられない事態を意味します」

「もうひとつはなんでしょう」、先兵が尋ねる。

「概念上の『効かない』です。つまり、物理法則を無視した何らかの因果や法則。例えば、悪魔を倒せるのは天使だけ、オーラを破れるのはオーラを身にまとった者だけ、といったものです。それを指して、通常兵器が効かない、と表現するパターン」

「なるほど」、幾島は顎に手をやりながら頷いた。

「前者であれば、国家レベルの危機になります。核兵器や生物兵器といった大量破壊兵器の運用は生半可なことではありません。後者であれば、敵を緻密に分析し、必要な『人材』の選定に移るべきです。……それで、どっちなのです」

 鋭い視線を向ける小沢に、先兵はたじろいだ。

「本当にすみません。つい、ノリで言ってしまいました。もう一度確かめてきます」

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