ショートショート自動執筆マシン

結騎 了

#365日ショートショート 159

 古臭いワープロに、なにやらボタンやネジが数えきれないほど付いていた。

「博士、ついにやりましたね」

「やったぞ。ショートショート自動執筆マシンの完成じゃ」

 陽が差し込む大学の研究室。博士と助手は固く手を取り合った。

「これで全国のショートショート愛好家に無限に新作を提供できます」

「ああ、ショートショートといっても型は決まっているからな。短く、すぐ読めて、小難しくなく、あっとなるオチ。それさえ守れていれば、ショートショートはすぐに出来るのじゃ」

 助手はボタンをいじり、ネジを回した。「早速、ひとつ執筆してみましょう」

「いいぞ。ここに成分ボタンがある。どれかを押したまえ。SF、ホラー、恋愛、日常など、ジャンルを自由に指定できる」

「では、恋愛を選びます。えいっ」

 ガガガッ、と稼働音。マシンは早速執筆を開始した。

「ところで、わしは気づいたんじゃ」。博士は助手に向き直った。「この発明を成し遂げられたのは、他でもない君のおかげじゃ。なにも研究だけではない。公私ともに、君の支えがあってわしはここまでこれた。本当に、感謝は尽きない」

「博士……」。助手の目は潤んでいた。「尊敬しています。研究者として、いや、人として……」

 やがて、ふたりの影が重なった。

 ガガガッ。ガガガッ。マシンの下部から紙が出力された。書き出しは『古臭いワープロに、なにやらボタンやネジが数えきれないほど付いていた。「博士、ついにやりましたね……

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