ぷぷぷらいはい

#365日ショートショート 155

　お坊さんって、絶対にラップが上手いよね。

　一度そう思ったら、もう駄目だ。笑いを堪えるのが大変だ。おじいちゃんのお葬式なのに、僕はひとりで苦しんでる。だって、すごいリズム感だもの。お坊さんもカラオケに行くのかな。あの衣装で行くのかな。あの格好でカラオケでラップを歌うお坊さん…… 想像しただけで、吹き出しそうだ。お母さんはハンカチを目元にあてている。お父さんは真面目な無表情だ。おかしいなぁ、僕だけかな、笑っちゃうのを我慢してるのは。笑っちゃ駄目だ。笑っちゃ駄目だ。でも、なんでだろう。どうしてこんなに面白く感じてしまうんだろう。み〜んな、悲しい顔をしてる。しかめっ面をしてる。おじいちゃんの顔が白かったのも、お化粧みたいでちょっと面白かった。司会のお兄さんが、「らい・はい」って言うのもなんだか面白い。ぷぷぷっ、て声を堪えて、歯を食いしばっちゃう。駄目、駄目、駄目。笑っちゃ駄目。笑顔は駄目。お母さんに叱られちゃうよ。

「ほら、たかし。おじいちゃんをお見送りに行くよ」

　お母さんに連れられて、僕はおじいちゃんが乗せられた車のところに来た。お母さんは、僕の手をぎゅっと握って言った。

「おじいちゃんを、笑顔で見送ってあげようね」