2025年6月13日に富士見L文庫より刊行される『男装姫は、鬼の頭領の執着愛に気づかない』。
第7回富士見ノベル大賞で〈入選〉を受賞した作品です。
本作の発売を記念して、著者の日部星花さんにお話をうかがいました。
裏側を知ることで、いっそう作品が楽しめること間違いなしです。
最後には、富士見ノベル大賞の応募を考えている皆さんへのメッセージも!
作家デビューを目ざす方にとっても必見の内容となっておりますので、ぜひ最後までお楽しみください。

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――刊行される作品はどんなお話ですか。
人間と鬼とが対立している和風異世界を舞台に、宿敵にしてライバル同士だった主人公(人間)とヒーロー(鬼)の恋愛模様を描いた作品です。同時に、敵対しあっていた二つの種族が共存していく過程を描いた物語でもあります。
物語は戦に出るために男装をしていた主人公・一初が、ヒーロー・紅炎に敗北するところから始まります。人間の一族の頭領だった主人公の敗北を経て、二種族は同盟の道を歩むことになるのですが、探り探りの中であろうことか殺人事件が起きてしまい……と進んでいきます。
主人公とヒーローのジレジレ両片想いと、サスペンス的なストーリーライン、どちらもお楽しみいただけたらなと思います!
――どんなきっかけで作品を思いつきましたか。
恋愛要素強めのキャラクター文芸に挑戦してみようとして書きはじめた物語なのですが、それならばせっかくなので昨今のトレンドを押さえたものにしたい、という考えが初めにあったように思います。そのため人気の先行作品の多い「和風ファンタジー×あやかし」という題材を使うことは、比較的早く決まった覚えがありますね。
そのうえで、「ロミジュリ的構図」「ライバル関係」「異能バトル」「勘違いからのすれ違い」などなど大好きな要素を入れ込んで、この作品が出来上がりました。
それから、サスペンス的な香り付けもしたかったので、そちらの要素も作中から感じていただければ嬉しいです。
――作品内のお気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。
主人公・一初とヒーロー・紅炎はもちろん大好きなのですが、その上で、サブキャラクターたちもとっても気に入っています。
特に、主人公ともヒーローとも関係の深い檜扇はお気に入りです。
檜扇は一初と四つ年の離れた弟なのですが、弱冠十四にもかかわらず大人たち(姉を含め)を手玉に取れるような聡明な少年です。そんな強かで聡明な少年が、一初や紅炎に対して時折見せる子どもっぽい顔……書いていて楽しかったです。
紅炎と一初が隣に並び立つ関係なら、紅炎と檜扇は背中を預け合う関係にしよう――そう思って書きました。
このように、サブキャラクターと主人公たちの関係性にも注目して読んでいただければ幸いです。

――富士見ノベル大賞に応募したきっかけを教えてください。
いくつか理由はありますが、まず私自身が富士見L文庫というレーベルに憧れを抱いていた、というのが一番の理由になります。
友麻碧先生、顎木あくみ先生をはじめとして、多くの作家さまが出されてきた富士見L文庫作品を拝読してまいりました。富士見L文庫さまの作品を読んだからこそ、その影響を受け、キャラクター文芸を書いてみたいな……と思い始めたと言っても過言ではありません。
読者として大好きなレーベルで本を出す……そういう夢を見て、応募させていただいたというわけです。
――応募が完了したときや受賞の連絡を受けたときのお気持ちを教えてください。
私はお恥ずかしながら大雑把な性格なくせに、事が済んでから細部を心配し出す性格なので、応募が完了してしばらくは不安でいっぱいでした。
「この話を面白いと思うのは私だけなのでは?」という不安、そして何より「応募要項を見逃して規定違反をしていたらどうしよう」という不安……。
そのため選考経過発表で拙作の名前があった時は、「よかった、ちゃんと規定を守れていた」と安堵したのを覚えています。
お電話で受賞連絡をいただいたときは、月並みな感想ですが、たいへん光栄に思いました。舞い上がりそうになるのを抑えてお礼のお返事をしたため、声が震えていなかったか心配です。
――改稿の過程や編集との打ち合わせの中で印象に残っていることはありますか。
改稿作業の際に担当編集さんからコメントをいただくのですが、「これはこう直してみるのはどうか」というアドバイスのほかに、「このシーンはいい!」「このセリフは素敵」といったお褒めの言葉をいただけたことが強く印象に残っています。
「こう直したら?」というアドバイスをいただけるだけでもありがたいのに、嬉しいコメントをいただけたのは、「ああ、この作品を『良い』と思ってくれる方がいるんだなあ」と、改稿作業の励みになりました。
――これからどんな作品を書いてみたいですか。
いろいろなジャンル、世界観の話を書いていきたいです。今回も作品にサスペンス要素を盛り込んでいますが、ミステリーベースのラブコメにも憧れがありますし、ホラー要素のあるお話も書いてみたい。今回は架空の和風世界をもとにしたファンタジーでしたが、実際にある国や地域を舞台にした歴史×ファンタジーも楽しそうです。
なんであれ、まだまだ未熟ではありますが、読者さまに楽しんでいただけて、かつ、私の「好き」を盛り込んだ作品を書き続けていくことがこれからの目標です。
――これから富士見ノベル大賞に応募しようとしている方へのメッセージをお願いいたします。
私だけであればお恥ずかしいのですが……書き上げた作品や、また書き途中のお話が「これは本当に面白いのか?」と不安になる現象に見舞われることもままあるかと思います。「自分を疑う」ことは創作するにあたって大切なことだと思うのですが、「きっと大丈夫! 評価してくれる人もいる!」と楽観的になることも肝要なのではないかと考えています。
不安になりすぎることなく、心に余裕を持って作品を書き上げていきたいですね。私も、もっともっと多くの本を読み引き出しを増やすなど精進してまいる所存ですので、お互い頑張りましょう!
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