概要
――『唯一の交響楽団』に入団するため、楽団専用ホールの最寄り駅に降りたった、十朗(じゅうろう)と巡理(めぐり)。彼ら二人を駅で出迎えたのは、指揮者のステルだった。
彼女に連れられ、楽団の専用ホールに到着した二人は、十朗に酷似した宮川澄(みやがわとおる)や他メンバーに歓迎されるが、二人の正体とは音楽家ではなく、〈イーシァン〉の執行者だった。彼らの本当の仕事とは「この世界に突然現れる仮想世界と、それを出現させる外部世界の住人で〈ドリフター〉と呼ばれる者」を消失・強制送還すること。なぜならば、仮想世界と〈ドリフター〉は、十朗達のすむ「世界」の構成要素、すなわち養分や領域を浸食するものであり、本来完成されていたはずの「世界」の形を変える害以外の何物でも
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!最後にタイトルの意味を知る
これは、確かにSFである。
けれどもこれは、ミステリーでもある。
そしてこれはある意味で、「人間」というものに言及したものである。
あまり多くを語ればネタバレになる、というより、何をどう語ってもネタバレになるように思う。
ステルはプラットフォームを降りた。
まさにこの言葉にすべてが詰まっていると言えよう。なぜこのタイトルであるのか、なぜこう書いたのか。
最後に見れば分かる。ああ、これ以外のタイトルはない、と。
この作品にはずっと、音楽が流れている。
どこか悲しく、けれど背中を押すような曲が。
もう一度言おう。だから、ステルはプラットフォームを降りた、なのだ。
この言葉の意味こそが、この…続きを読む - ★★★ Excellent!!!SFというジャンルに対する、ある小説家の独創的回答
作中に登場するショスタコーヴィチ『交響曲第5番』。
この曲への「正当な批判に対する一人のソビエト芸術家の実際的かつ創造的な回答である」という批評に対し、ショスタコーヴィチ自身が「私を喜ばせた」と表明している。そのため欧米では「正当な批判に対する、ある芸術家の創造的回答」という一文が、副題のように宣伝されたという。(日本では『革命』という副題で呼ばれることが多いですね)
本作には、『SFというジャンルに対する、ある小説家の独創的回答』と、本家へのオマージュをこめた副題を贈りたくなる。それほどまでに、独創性に満ちた物語だと思う。
『唯一の交響楽団』に入団するため集う登場人物たち。
奏でるはシ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この世界を創り出した人間は、どんな未来を導くのでしょう
突然現れた『仮想世界』から、それを出現させた張本人〈ドリフター〉を強制退去させる仕事を請け負う巡理(めぐり)と十朗(じゅうろう)。今回の仕事でチーム解散を決めているふたりだけど、何やらいつもと違う様相を呈している。無事このミッションをクリアすることはできるのか?
と、あらすじをざっくりまとめるとこんな感じの当作品。細かい内容はぜひ作品ページをご覧ください。しっかり魅力的に紹介されていますので!
ジャンルはSFですが、タグにある通りミステリ&ファンタジーも存分に楽しめる内容となっています。ただミステリ感が強いので、ここで何かに言及すればどこかに引っかかりそう。伏線がみっちり張り巡らされ…続きを読む