自死生命迷惑論

その日、米田彰良は、マンションの屋上から身を投げた――筈だった。
気付いたとき、彼は見知らぬ街中に立っていた。そして目の前に立つスーツ姿の男に、これでもかと怒鳴られていた。
「何で死ぬんだよ！！」
走馬灯か幻覚か。自分の死を嘆く男は、次の瞬間ひどく泣き叫んだ。

「何で死ぬんだよ！　今日こそ定時で帰れると思ったのに、これじゃまた残業じゃないか！！」

自殺はいけない。その理由は、倫理や道徳よりも単純だった。