閲覧注意。「声」が語る、ある少年が起こした残虐な殺人事件の余波

 いつもレビューを書く時は他人に薦めたくて書くのですが、僕は本作を誰彼かまわず薦める気にはなれません。だけどこの衝撃と読後感を自分一人の中に留めておく気にもなれません。なので最初に忠告します。覚悟のある方だけ読んでください。

 本作について概要を説明します。

 本作に地の文は出て来ません。インタビューを行う「インタビュアー」とインタビューを受ける「インタビュイー」のやり取りで構成されています。多くの章の最後にインタビュアーのメモが残されており、敢えて言うならばそれが地の文と言えるでしょう。かなり変則的なスタイルを取った作品と言えます。インタビュアーがインタビューする内容は十年以上の前にとある殺人事件を起こした中学生について。インタビューする相手は主に加害者の関係者です。

 このような説明を聞くと「様々な人間の証言によって殺人事件を起こした中学生の素顔が浮き彫りになっていく」という展開を予想される方が多いでしょう。少なくとも僕はそう予想しました。しかし予想は裏切られます。インタビューによって浮き彫りになるものは「何」で「誰」なのか。それがはっきりとし始めた頃、物語は加速します。取り返しのつかないスピードで。

 肉声のみを綴る文章はそれぞれの語り手を生々しく描写し、時にはその存在感から逃げたくなるほどに心を抉ってきます。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」。覗かれる覚悟のある方は、是非。

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