熊本くんの本棚

作者 キタハラ

17

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★★★ Excellent!!!

あと数話で本作は終わるそうですが、結末を知らずにレビューを書きたい、そう思いました。
本作は10万字を楽々と超え、その一行一行が練られ、思考されているため、十全に読み解けている自信がないことをここに白状します。

作者様によると本作は夏目漱石の「こころ」を換骨奪胎した作品のようです。
噛み砕いて記せば、「こころ」の形式を借りて作者様の思考や価値観を作品として成立させることかと思われます。

「顔よし、からだよし、性格良し。そのうえ読書家。なんだか現実味のないイケメン、熊本くん。仲のよい「わたし」は、同級生から熊本くんの噂を聞く。
どうやら熊本くんが、ゲイ向けアダルトビデオに出演している、というのだ。 」

下手に私が要約するよりも作者様ご自身による作品紹介をそのまま転載しましたが、第一章第二章では熊本くんの大学の同級生である女子「わたし」目線で物語が描かれ、それ以降、熊本くんが書いた小説を「わたし」が読んでいるという形式で読者は本作を読んでいることになります。

ここら辺の形式に対する言及は私は得意ではないので上手な方にしてほしい、それを読みたいと思うのですが、私の疑問のひとつは、ゲイビデオに出演しているらしい熊本くんのセクシュアリティがどうもよく分からないことでした。
理由は、通常セクシュアリティに由来して「こういう人と付き合いたい」とか「こういう人と暮らしたい」などの将来の展望が見えないからです。

LGBTという言葉が流行っていますが、MSMという言葉もあります。
「Men who have sex with men 」の略で、この場合セクシュアリティはゲイでもバイでもヘテロでも構いません、男性と性行為をする男性のことです。
将来を考えず、刹那の性行為を繰り返す熊本くんをMSMと考えるのが私には最もピッタリして、そして、私自身の感じ方では、彼のセクシャリティは本作の… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

現在、37話目の段階でのレビューとなります。

この作品、まだ5話目あたりの時から読ませて頂いております。


まず最初にあまりの文章の巧さにただただビックリします。表現や比喩の書き方が心情やその場の風景・情景をよく表しており、構成も含めてとても読みやすくなるように工夫がなされています。



次にその美しい文章とは真逆な世界観。人間の闇の部分、弱さ脆さ汚さ傲慢さ残虐さ。狂人が当たり前に息をしている世の中。みんなが傷付いて、ある人はそれに呑まれたり、またある人はそれに順応していく人達。途中から普通の人達(今のところ)が出てきてくれますが、それがまた何とも狂った日常をリアルに浮かび上がらせています。



最後にストーリーですが、これがまたあるようでないスタイルです。あえていうなら現代版の夏目漱石「こころ」といった感じでしょうか。もちろん破綻してはいません。そこがこの人の器量なのでしょうが、本当にギリギリ「小説」になる所を狙っている感じがします。そこにまた作者の凄さを感じます。



本当に今まで読んだ事がない小説です。感想としては、はっきり言って頭では理解が追いついていません。が、そこがこの作品にハマってしまっている一番の理由です。何故なら感覚では全て知っていると思わされているというか…。とにかくラストまで付き合っていきたいと思わせてくれた作品です。これからも頑張ってください!