ひとっておもしろい

人って面白い

とても面白い。
大変参考になり、刺激を受けました。
有難うございます。

何が驚くって、面白さとランキングがまったく関係ないことでしょう。
レビュー少ない、コメント少ない、フォロワー少ない。
実に驚くべきことです。
内容に関係ないランキング。
では、それは一体何を計測しているのでしょうか?
ランキングの有害性をまざまざと見せつけてくれる作品です。

ええ、それでいてキャラクター文芸部門 大賞。

賞って大事ですねと、これでもかとばかりに教えてくれます。
読みそびれたこと間違いなしです。


それと表紙なんですけど。
イラストがとても清潔感あふれていて。
ドバン!と
そこに熊本君が半裸で登場(なぜ全裸ではないのか?)
(二人共全裸の方が合っているような気がしないでもありません)。
はさておき。
しかも横向き。
さらに本を読んでいる。
その上で立ち読み。
止めは背中合わせという。
それでみのりはこちらを覗いてる。
意味込めまくりです。


そう、半裸で読書。熊本君は熱中してますね。
わかります。

その本。

滅茶苦茶面白い。そのタイトル名は。

「キタハラさんの本棚」




この作品の書きたいことは何だろう?
序盤はみのり視点で、「外から熊本くん」を見ている。
後半は、目次からわかる通り。熊本くんの書いた小説の主人公視点で読者の視点。
みのりが読んでいる。読者も読んでいる。三重の視点が絡みに絡む。
その上、作者の視点、思惑、衝動。二人の作者は端的に対立します。

だってそうでしょう?
そもそも生まれが違う、目的が違う、想定する読者が違う。
住んでいる世界までもが違ってる。
ある一点を除いて何もかもが違うと言っておよそ過言ではなく。
だけれども、好き勝ってに操っては全てが台無し。無粋であります。
なんと言っても、彼が書く、そこに意義が詰まっているのですから。

本来は作品も運命も作者の思うがまま。
であるはずだ。だがしかし?なにがどうして。そうはいかない。
つまり、書けないものを書いている。
書けないものを書く、それが作家の本領にして真髄、妙味。

作り話。全ては嘘であっても。
真実にするのはそれの細部に宿るもの。
神であるのか悪魔かもしれない、幻の想いは。見える人にしか見えないでしょう。

読者と作家。果たして読まれない作品は作品なのかというテーマも見え隠れしています。
みのりは決定的な存在でした。彼女だけは、ただの読者ではない。
読むという行為自体が、大きな謎を秘めている。玄妙そのもの。どこまでも深い。
・・・・・・作家と読者はどこかで繋がっている。
おそらくは。届く、ということ。

ところで。
熊本くんは小説を書いてますが、その中に登場する熊本くんも小説を書いている。
小説の中の小説の中の小説にも熊本くんが登場します。
そう、小説を書かない熊本くんは、熊本くんではないとでも言いたげで。

熊本くんを書いているのは、どこまで行っても熊本くんなのでした。
それは。無数の小説、無数の本棚。貫いて。
そうしてそれはあらゆるすべてのあらゆるすべてへ・・・
ここまで言えば言いたいことはただひとつ。



そうなると、問題は。
あの結末・・・


書きたいことがいくらでも続々湧き出てくるけれど。
それを全部書くわけにもいきません。
困りました。いくらでも深読みできる作品が大好きなので。
例えば「ゲイ」の意味とか。「ゲンジツ」「まつり」「みのり」等々。

読み終わらないから楽しい。
批評とは自己理解であり。理解するとは自己を解体することにある。
謎は謎のままであるから美しい。
理解の残骸になるなかれ。

理解とは区別すること。
偽から真を区別する。
切れぬもの無き、理念の刃。
だから切ってはいけないものまで切れてしまうのでした。
闇を切り裂き光を照らす。
しかし。
切らなければ。見えないものは、見てはいけないのだ。




本は心で読むものだから。

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