概要
塔に上って届かぬ月に手を伸ばすのは愚かか……
取れぬものを望んで、みな手を伸ばしよる。少しく近くと櫓を立てても月は取れぬ。取れぬことは承知の上じゃ。如かれどみな櫓を立てる。
老僧鉄心の嘆きは、何処に行き着くのでしょうか? 答えのないお話です。みなさんが読後にどのような印象を持たれるか。月に訊いてみることにいたしましょう。
老僧鉄心の嘆きは、何処に行き着くのでしょうか? 答えのないお話です。みなさんが読後にどのような印象を持たれるか。月に訊いてみることにいたしましょう。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!燃え上がる鉄塔と赤い月。手に出来ぬと知っていながらも。
時代ものと思いきや、途中から現代の話に突如変わります。
主人公の過去を知っている読者からしてみたら、その現代人の困惑がやけに滑稽に見えてしまう。
しかし、長い時の隔たりがあったとしても、人の心は交わるものです。
小説の転換点である、大雨と落雷のあった日。
ぬらぬらと燃え上がる鉄塔と、妖しく光る月。
永遠とも思えるものと、たかだか数十年の寿命とされるものの邂逅。
月と鉄塔。
この小説の主人公と、彼を見守る女性との、けして通い合えない、しかし通い合う距離感にも似ています。
けして手の届かぬものに手を伸ばす。
人の中にある業をまざまざと見せつけられるような、ザラリとした小説。
その奥深さを、…続きを読む