第8話 ヴァルキリー
騎士王リュカーンを模倣した俺の動きに皆が大きく戸惑っていた。完璧すぎるその身のこなしや構えに惚れ惚れする女子もいるほどであるがこいつほど憎たらしい奴はいないと思う。
まず、騎士王コイツは完璧すぎる顔だ。theイケメンと言った感じで金髪のショートヘアー瞳は美しい蒼で身長180で体重は72騎士ならではの綺麗な筋肉を持っており、その美貌と強さも分け合ってかなり女性に人気のキャラクターではあった。しかも性格も女性にとても優しく人当たりもいいという完璧超人なのだ。
だが、コイツは男を徹底的に嫌う。結局リュカーンは男性NPCから毛嫌いされなおかつ冒険者…つまり俺らのような男性ユーザーからも嫌われる事になったのだが、実力は申し分ないのがまた憎たらしい。
「くそぉ!!!」
1人の男性生徒がヤケクソになりつつも俺の指示したところを的確に守りつつ不意の攻撃を放っていく。かれこれ訓練開始から2時間が経過しており、殆どの生徒がくたばっていた。
俺が厳しい訳では無い。ただ、リュカーンの纏うイケメンオーラというのだろう。そういったものが女性を魅了し攻撃を繰り出す度にブーイングが起こるという現象が起きていた。そのため、肉体的より精神的にノックアウトしているのだ。
「…なめるなぁ!!!」
おっ…やるなぁナイフを取り出すふりをしたフェイントからの魔法かなかなか見応えがある男だな
俺はあえてその男の攻撃を食らう。避ける事も出来たのだが面白いものを見せてくれたため合格を出してもいい。
炎の玉が俺の顔面で爆発する。女子から悲鳴が上がるが煙の中から出てきた俺の顔には何一つ傷が付いていなかった。攻撃を与えたはずであるがその威力が問題だ。リックは一定のダメージはレジストするのだ。そのため、火魔法ファイアーボール程度の一撃なら無効化してしまうのだった。
「お見事。あの技を常に使えるようにしておけ、そうすれば騎士や盗賊を恐れることはない。油断は禁物だがな」
「はぁはぁ…ちくしょう。めちゃくちゃ余裕じゃねぇか…」
「当たり前だ…っと安心しろお前の好きな女の子を取ってくったりしねぇからよ…キャシィーちゃんだろ?」
その生徒の顔はみるみる赤くなっていく。そう、俺…いや騎士王オーラが魅了してしまうためこの生徒の好きな子が取られると思ったのだろう。そのため、極限の一撃を放つことが出来たわけだ。
キャシィーとはFクラスの中でもちょっと大人しい子で身長152cmで黒髪のぱっつんだ。目元は垂れており優しそうな顔だが戦闘スタイルが魔法接近スタイルという性格と真逆な子だ。
この生徒…名前を確かダオスとか言ったかな。ダオスは燃えるような赤い髪に瞳も赤い。ちょっと暑苦しいところがあるが、熱血漢で闘いのスタイルも潔い。拳闘士を目指しているらしい…。
「んな!…そんな訳ねぇだろ!!」
「嘘を付くなよ。お前の目を見りゃわかる…向こうも脈はあるんだ手伝ってやらんこともないぞ…幸い今の攻撃で好感度は上がってるしな」
「…キャシィには手を出すなよ…」
「分かってる」
そう言って俺はダオスの肩をポンポンと叩いた。ダオスは未だに顔が赤いがキャシィーちゃんの前だと凛々しくなる。こうして見るとめっちゃ好青年だよな。
「ふぅこれで終わりだ。そうだな合格者がいたから御褒美として俺の全力を見せてやろう。…そんなに怯えなくていい。相手は俺だからな」
スキル(ドッペルゲンガー)…自身の姿をした影を作り出しその設定をいじることにより最高で自分の全力と同じくらいの強さまでにはなる。
そう、リックはこのドッペルゲンガーを使ってエルダーワールドの頂点に立ったのだ。
ドッペルゲンガーとの戦闘においてまずデメリットが100パーセントの全力でないと各経験値が得られないということ、そして自分がそのドッペルゲンガーに敗れた場合もちろんロストし経験値などが失われるのであった。
つまりはドッペルゲンガーという自分の弱点を知りつつ自由に動くことが出来る相手に対して勝たなくてはならないという事だ。エルダーワールドにそういった猛者をいたのだが、何人かはそれに気が付きドッペルゲンガーに勝利したものの自分が強くなるほど勝ち目が薄くなるため次第に廃れていった。
闘技場の中央に対峙する俺の分身。その姿は丸いっきり俺と同じでなんといっても魔王の戦斧を携えている。
生徒のみんなは危険があるといけないため闘技場のVIP専用席まで退避させる。一応そこならシールドが一番強度が高く恐らく安全なためである。
「久しぶりだな…俺」
「ああ、この時を待っていた」
ドッペルゲンガーは生み出した瞬間から別の生命として生きている。俺の記憶もあるしドッペルゲンガーを倒したとしてもその時の経験を身に付けた状態で生まれてくるのだ。
「全力で殺ろうか」
開始の合図は要らない。俺とお前、そんなものは不要だ…何年お前と相手してきたか…リックは身体の奥が熱くなっていく。戦闘のエンジンがフルスロットルで火を吹き始めていた。
俺と俺は一瞬においてその距離を詰め、斧と斧をぶつけあった瞬間に切り抜ける。
刃と刃がぶつかる音ではない。もはや爆発音であった。その耳を劈くような音に思わず生徒達は耳を塞いだ。聞いたこともないだろう武器と武器がぶつかり合うだけで爆発音が響き渡るなど…。
「…炎よ!」
ちなみに無詠唱でも唱えることが出来る。無詠唱のプラスの所は相手にどんな魔法か悟られずに使用することが出来るため不意をつける。だが、今のリックのように属性名を口にすることにより相手に属性を悟られてしまうがそのかわり威力を引き上げる効果がある。
火属性レベル9、バーストフレア。相手の場所に体の一部も残らないような爆発を引き起こす魔法で超高威力でなおかつ爆発半径を大きいため周囲にもダメージを与えることが出来る。
リックによって引き起こされた大爆発はシールドを破壊するだけでなく、空気をすべて吹き飛ばすほどの威力である。一気に酸素がなくなったことによりリックそしてドッペルゲンガー共々呼吸という事が出来なくなる。
空気のない空間で繰り広げられる攻防。幸いVIP席の周囲は守られていたようで生徒たちは安心していたがリンとアルシェそしていつの間にかヒルダがその場に立ち尽くしていた。
「…あれがリックの実力」
「見たこともない魔法や技ばかりですね」
「……すごい」
「ふははは!!流石は俺だな」
両者ともに服は存在していなかった。幸い下半身の方は無事だが上半身は裸体を晒していた。女子達は両手で顔を隠しつつ指の隙間からリックの裸体をくいるように見つめていた。
「化け物が」
「そりゃお前だからな」
魔王の戦斧もボロボロでもはや使い物にならない。コンマ1秒とかからない間の一瞬の攻防で彼らは光速を超えて戦っていたのだ。ヒルダの身体強化やリックが事前に魔法を付与してくれたメガネをつけていてもその姿を捉えることすら出来ないほど速かった。
実際のところリックにとってまだ全力ではなかった。無論ドッペルゲンガーも同じことを言える。
彼らは光速の中である種の限界を悟ったのだ。これ以上やったらこの一帯が生き物の住めない大地になってしまう。というか最高速に到達した瞬間、めちゃくちゃ危なかった…ありゃ時空間を超える。裏ボスと相手していた時も似たような感覚に陥った。過去現在未来というものを超えた戦い。肉体が持つ持たないという話ではなく精神とか想いとかの戦いだ。
「…この一撃で終わりにしようか」
「そうだな」
俺とドッペルゲンガーが武器を持ち替えた。
ドッペルゲンガーは大破剣グラム。天と地万物を破壊せし絶対にして最強の大剣。黒色の大剣だが、この大剣には時折紫の血が流れるという。一撃を持ってどんな敵でも粉砕する力を持ったグラムはラスボスにおいてドロップした品である。
俺は聖盾ヴァルキュリア。絶対の防御を兼ね備え自ら戦場に立ち戦士達を導く美しき戦女神ヴァルキリーがもつ盾である。その白を基調とする中にヴァルキリーの青い髪を彷彿とさせるラインが入っており、綺麗な盾である。
だが、ヴァルキリーが戦士たちを導くのにはもう一つの理由があった。聖盾ヴァルキュリアは全方位からの攻撃を受け流すことができ、かつて三十万もの軍勢をたった1人で全滅させたことがあった…それから戦士達は彼女に忠義を近いそして崇めていた。
そこから聖盾ヴァルキュリアは別名血染めの呪盾とも言われたという。
「掛かってきな。すべて跳ね返してやるよ」
「ふん、そんなもの粉砕してくれる!!!」
グラムを持った俺は縮地によって俺の目の前に現れ、そしてグラムの武器本来の力を解除した。
グラムが脈動すると同時に紫の色が放出され禍々しい色合いに染まっていく。
「ヴァル!俺に力を!!」
(ふふ、やっと呼んでくれたのね…待ってたわよ)
聖盾ヴァルキュリア…いやヴァルキリーと呼んだ方がいいのかもしれない。エルダーワールドの隠しクエスト「ヴァルキリーの愛しの君」というものがある。それはヴァルキリーと共に戦い最後に2人で命を散らしてしまうという童話のような話なのだが、クエストのくせに難易度がとてつもなく高く、ヴァルキリーをその目的まで死なせてはいけないし失敗すると一生そのクエストを受けることが出来なくなる。
そんなクエストにおいて最終ボスを倒すのだが本来であれば攻略不可能のボスなのである。いわゆる死にイベントというやつだ。だが俺は倒してしまった。しかもヴァルキリーが殺されることなく…それからヴァルキリーは俺に恋をしたようなのだがこれは運営も準備していなかったようだがNPCも生きているのだ、もはや修正することもないのだがヴァルキリーをこの場から移動させると色々不都合があるかもしれないという可能性を考えてというかヴァルキリーがそう言った。そしてこの聖盾ヴァルキュリアとは自分の呼びかけに答える一種の召喚器としての役割を果たすことになり、今の今まで使ったことは無かったのだ。
ヴァルキリーの声が聞こえると同時にグラムとヴァルキュリアはぶつかり合いそして白い閃光とともに時間が止まった。
白い空間…だがとても温かくそしてマージョラムの優しい匂いがする。懐かしい…忘れるわけがないあの匂いだ。
「久しいなヴァルキリー」
「ええリック」
自然と俺とヴァルキリーは抱きしめ合う。鎧も何もつけていない普段着のヴァルキリーは俺の腕の中にすっぽりと入り込む。彼女の身体は変わらず柔らかくだが、騎士の身体つきではない。
お互いに何も言わなくとも唇と唇を合わせる。彼女の甘い唾液が身体を満たしお互いを貪りあう。
「…ふふ」
「変わってないな」
ヴァルキリーの青い髪を撫でる。彼女は気持ちよさそうに俺の肩に寄りかかり目を瞑っていた。何年ぶりだろうか…あの時あの瞬間を忘れることは無かったが攻略に勤しんでいた俺には彼女に合う時間などなかったし、彼女を連れていくわけにも行かなかったから…。
「そうね…全く変わらないわ。リックがこの姿が一番好きそうだからね」
「お前なら歳をとっても愛してやるがその姿の方が可愛くて好きだぞ」
「そうやって余裕な顔して甘い言葉を吐く姿勢は変わらないのね」
ヴァルキリーは俺の胸あたりを指でクルクルと円を書くようにして触れる。まるでイチャラブのカップルだ。
「嬉しいくせに」
「ええ嬉しいわ。でも他の女の子にもそうやって口説いてるんでしょ…」
カリッ…円を書いていた辺りをヴァルキリーは噛み付いた。まるで所有者の印を示すかのような傷の付け方だが、痛みはない。彼女は結構独占欲が強いのだ。だが、傷をつけた所を舐めていき傷を癒していく。チロチロとした焦らすような舐め方だが、逆に自分の体が疼いていることに気が付いていない。
「…ねぇ…まだ時間ある?」
「この結界がどのくらい持つかだな」
「……じゃあ…大丈夫よね…」
「…ねぇリック。なんでこっちに来たの?」
俺とヴァルキリーが時の停まったこの白い空間でラブラブし終わり、まだ頬が赤く息を乱していたヴァルキリーは疑問を口にした。
「こっち?」
「うん…っあん!……アースガルドのことよ…」
「俺はなんかエルダーワールドの方で裏ボスを倒した報酬としてこっちに来た感じだな…というかこっちという事はヴァルはアースガルド側の人なのか?」
「んー監視は解けてるし問題ないか。私はアースガルド側…っもう。お尻触らない!…時間があるから詳しく話すけどエルダーワールドの世界はこっちのアースガルドの世界観を使ったものなのよ。だから地形が似てたり魔法の一部が同じような感じなの。
エルダーワールド開発責任者…及び社長の人間はこっちのアースガルド側の人達よ。何不自由なく暮らせているけどね。
んで、エルダーワールドのユーザーの中に突如現れたのがリック。私も驚いたわよ。まさかゲームの限界を超えた存在が出てくるなんて…まあ、それで責任者達が会議を開いた。私もその1人。なぜリックのような人が現れたのか…いろいろ調べさせてもらったの。ごめんね?
ここから国家機密になっちゃうから言えないけど、つまりあなたも何故か知らないけどアースガルドの血をほんの少し受け継いでいたのよ。だから監視役として私が任に就いた。まさか仕事なのに恋をするなんて思いもよらなかったけど……って…も、もう…んんっ…ちゅ…
で、私が進言したの。リックをアースガルドに送るべきだとね?でもほとんどこれは私情…だってリックと本当に会いたかったんだもん。寂しかったんだよ…モニター越しに好きな人を眺めるだけの毎日なんて…」
それから裏ボスとかいう凶悪難易度の敵を倒せたらアースガルドに送るという条件を提出、それを開発者側が認めて本当にクリアしてしまった。
ヴァルキリーのなんで来たのというのは本当なら拒否することも出来た異世界転生についての事である。ほとんどヴァルキリーが私利私欲のためだけにリックを別の世界に送ったのだ。ヘタをすれば責められても文句は言えなかった。
「当時は必死だったからな…。異世界…男の憧れだろ」
いや、リックは開発者側の挑戦と思ったのだ。ゲームの域を超えたエルダーワールドで俺はそれを開花させて行っていた。そして裏ボスとかいう滅茶苦茶強いヤツを倒すことを目的として達成するのだったのだが、報酬の異世界転生についても楽しみといえば楽しみだったのだろう。
「そんなところに惚れたのよ。さて、そろそろこの空間も終わりよ…ふふ、私は霊峰都市リビアというところに住んでるわ。早く会いに来てねリック」
「安心しろ…すぐに迎えに行くさ」
カチリという音とともに白い空間が消え去り時間が動き始めた。閃光が消えると同時に激しい炸裂音とともに上空の雲を突き抜ける衝撃波がドッペルゲンガーを遅いその姿を散らした。
聖盾ヴァルキュリアのカウンターが発動したのだ。一撃をもってすべてを破壊するグラムだが、それを受け止め、何倍もの威力にしたカウンターの一撃により自身の体を貫いた。
「くく…やっぱりヴァルキリーには勝てないな」
聖盾ヴァルキュリアはドッペルゲンガーを持ってしても再現できない代物である。そのため、ドッペルゲンガー戦において何度も打ち合ってきたが未だにその盾を貫くことは出来ていないのだった。
途端に拍手が鳴り響く。
「スゲェ!!」
「…さすがリック君だね!」
「カッコイイわ」
闘技場は原型をとどめていないほどボロボロになっていた。グラムのあの技は受け止めるだけでもここまでの被害をもたらすものであったのだ。そして、その反動をモロに食らっているリックは当然肩膝をつくほどの大ダメージを負っていた。
まさか、グラムの威力がここまでとはな…聖盾ヴァルキュリアすら完全に押さえ込むことが出来なかった。ボス泥の中でもレアリティが高いだけある。
グラムの予想以上の強さにリックは感動していた。自分自身ではグラムを使ったことがないのだ。だからかも知れない。ドッペルゲンガーが最後の一撃にグラムを選んだのは…。
リックはニヤリと笑った後ゆっくりと立ち上がる。既にHPは回復しつつある。正直に3割体力を削られただけでもかなり身体的には大きなダメージになった。
「どうだ!これが本気の戦いってやつだ。さて今日の授業はこれで終わりだ…ナターシャ先生後は頼みます」
アイテムボックスから普段着を取り出して着込む。何故か女性陣から小さなブーイングが起こるが裸体をずっと晒すわけにも行かない。何故か知らないがヴァルキリーに付けられた跡が見え始めたのである。
ナターシャは俺の言葉に頷くとパンパンと手を叩いて授業の締めをしていた。
闘技場はあれほどの壊れ方をしたのだがゆっくりと自動的に機能を回復し始めていたしシールドもナターシャ先生が直してくれていた。
「皆さん、これ程の実力は望みませんがみなさんの命はとても大切なものです。ですので無理はしないように…そして1週間後実地において魔物との戦闘を始めたいと思います。明日からはFクラス内でパーティーを組んでもらいます。4人での実践となるため明日は丸一日自由にパーティーを編成してみてください。お互い仲の良い人と組むのもいいしライバル同士で組み合うのも自由です。ゆっくりと考えて最適なパーティーを作りましょう」
…なるほど。そろそろかと思っていたがそんなに早く実践に移すのか。まあ習うより慣れろだな。確かに実地の訓練の方が確実に経験を積むことが出来るし恐らくナターシャ先生の事だ。鬼神と呼ばれるナターシャの部下みたいな人たちも監視についてくれるのだろう。
ちょっと楽しみなリックである。
「こほん、それでは今日の授業はこれで終わりです。みなさんお疲れ様でした」
寮に戻るとリンとアルシェが俺に抱きついてきた。
嫉妬しているのである。どうやらあの戦闘の後女子達に色々聞かれたりあわよくば仲良くなろうとする人がいてリンもアルシェもイラッとしてしまったらしい。アルシェの所にまで行くとなると相当のことだろう。
リンに至ってはその可愛らしさもあってさぞかし騒がれたのだろう。2人の頭を撫でてやる。
しかしリンとアルシェもどうやら眠いらしい。無理もない俺のというかリュカーンの動きは結構早いから動きを捉えるのだけでも神経を使う。リンとアルシェにとってはかなり大変な事だっただろう。
しかし、二人共今日だけでかなり俺の動きについて来れていたから凄まじい成長力だろう。
ベッドに寝かせてやり俺は約束を果たすためにある場所に直行する。
「待たせたか?」
「ううん…大丈夫…だけどこんな所でしちゃうの?」
「当たり前だ。なんだと思ってる」
「…あ……そこ…すごい気持ちいいかも」
いやらしい事をしている思った諸君…正解である。俺は今ヒルダの部屋にいる。ヒルダ程の実力者には一人一人の個室が与えられておりヒルダの部屋の中は可愛らしいとはいえないがちょっとした工夫が施されていたりちょっとだけエッチな下着があったりする。ちなみに今は水色の下着である。
いやらしい事ってのはマッサージである。
まず服の上からではないしかなりきわどいところも触れたりしているのだがこれはマッサージだ。
ヒルダの為に灰燼招雷を覚えさせるのだがまず、彼女の体をできる限り強化してやらないとならない。そのためにはこうして灰燼招雷に酷使する場所をマッサージしながら魔法で筋肉を整えていくのだ。
ヒルダが卑猥な声を上げてしまうのも理解できる。このマッサージ方法はエルダーワールドの娼婦達にも大絶賛されるほどであり、全力のマッサージをとある娼婦に行ったところ達してしまった始末である。
ヒルダの全身をマッサージしていくがビクンと身体が跳ねたり我慢出来なくなったかのように荒い息とともに喘ぎ声が部屋に響く。
ついでにアロマも焚いているのだがこちらは精神を安定させるものである。決してエロくなってしまうものや敏感になるものではない。多分
「あぁ……ん!や、だめ、ほんと…それ以上は…だめぇえええ!!!」
ヒルダの身体がこれまでかというくらいビクンビクン痙攣したように震えトロンとした目をこちらに向けてくる。まるで何かをねだるような…。
まあ、その何かってのはあれの事だろうがこれは灰燼招雷を会得するために行っているマッサージなのだ。俺だってヒルダのような綺麗な女の子にそのような目をされたら抱きたくなる。
だが、今のヒルダの状態でやってしまうととてもじゃないが身体が耐えられない。それほどまでに敏感になっているのだ。灰燼招雷に使う魔力の流れを教えるためにはこれが一番であり、場所によっては小さな細胞の繊維を使う。それがわからなくてはならないのだ。
「…綺麗な肌だな」
ヒルダの引き締まっている身体はガッシリしたようなものではない。女性と比べてはならないのだろうがヴァルキリーよりちょっと筋肉質である。それでも触った感触で言うと柔らかいから不思議だ。
「どうした?」
ヒルダは枕に顔を押し付けて身悶えしていた。
「悪い、すごく綺麗だったから…つい」
「悪いとはいってない…ただ、嬉しいだけだ…バカもの…」
ヤバイ。血流が完全にあっちに向かってる。ヒルダを滅茶苦茶にしてやりたい。
「誘ってんのか」
「当たり前だ…女に言わせるな」
ああ!!もう我慢ならねぇ
もちろんヒルダと愛を育みました。ヒルダはちょっとMっ気があるらしく言葉責めなどにかなり反応していた。
朝チュンという奴だが、まだ時間は早いからリン達も起きてはないだろう。隠すつもりはないが彼女達にとってこういった行為は苦痛になるかもしれない。いずれ時間がたったら彼女達に本当のことを話してやるつもりだ。
「んん~~はぁ…まだ少し身体が重いな。今日が座学でよかった」
ヒルダも目を覚ましたようだ。もちろん俺とヒルダ共に全裸である。白いシーツには赤い染みが付いており彼女の純潔を奪ったことにかなり征服感を感じていた。
ヒルダは腰をさすりながら立ち上がる。初めてやった更に結構激しくしてしまったのに翌日普通に立つことが出来るというのは驚きだな。鍛えてるだけある。
「さてと、さっさとリン達の元に行ってやれ。私は大丈夫だから心配するな…それと…今夜もお願いする」
「ああ、わかった。それじゃあな」
ヒルダのすこし寂しそうな顔を見てしまうと男としては放置できない。
「ったく…」
「リック?…まっ…んっ……」
リックの身体に抱き寄せられ口の中に舌を捩じ込まれる。乱暴なキスに思わず腰が砕けそうになるが、リックはそれを察していて私の腰に手を回していた。
頭が沸騰するような熱いキスに何も考えられなくなる。リックの脇に手を通して肩を掴む。すごく安心できる形なのだ。
「会おうと思えばすぐ会えるんだ。そんな悲しい顔すんなよ」
「…わかっている」
ヒルダはさらに力を込めて数秒後に手を離した。さっきみたいな悲しそうな顔ではなくいつものヒルダにもどっていて何よりだ。
俺はヒルダの私室の扉を閉めると服についた匂いを嗅いだ。リンにバレるかな…。
俺の鼻でも嗅げるような女の匂いが染み付いている。リンならば獣人の鼻を持っているし俺よりも相当敏感だろう。アルシェも感がいいところがあるからもしかしたら気付くかな。
拗ねた顔をするのを妄想して顔がにやける。周りから見れば微笑を浮かべる好青年なのだが、笑う理由が汚いおっさんそのものであった。
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