生ける伝説異世界に立つ

Gs提督

第1話 異世界ktkr

ようこそ、剣と魔法の夢の世界エルダーワールド・オンラインへ!」


2084年…世界は遂に完全VRMMORPGを完成させた。完全というのはその世界に肉体ごと送ることだ。つまり、現実の世界と仮想、つまりヴァーチャルリアルの世界を繋いだということだ。その中でも特に人気を誇るのがこのエルダーワールド・オンライン。VRというのは既に完成系になっていたこの時代では学校も仕事もすべてVR空間で行われる。もちろん世間帯からいい目で見られない時代もあったがそんなものは時代の流れとこの最先端技術によって押し流されてしまった。


医療に関してももちろんそうだ。これが後押しされたと言ってもいい。現実の肉体が寿命を迎えようとも仮想世界における肉体は老いることがない。そのため、ほとんどの人間は現実という世界を捨てていた。いや、VRの世界こそが本当の世界のようになったのかもしれない。


ゲームにもそれは影響を与えた。夢のような技術が開発され四年掛けて第一号のゲームが発表された時に胸が踊った。遂に自分自身が主人公になるゲームができるんだと。



それから数年が経過しエルダーワールド・オンラインというエクリテンス社が発売した最新型のVRMMORPG。売り文句は[剣と魔法に包まれし新たなる世界で自分の人生を歩みそして栄光を勝ち取れ]というもので、中世の時代に魔法や魔物といったものを取り入れた新たなる世界を作り上げたというべきだろう。



もちろん世界から大絶賛を受けた。現実世界の技術を仮想世界で作り上げることはたやすいのだ。それを見ているし内部の構造もわかる。作るのだってほとんど手間いらずだ



しかし、中世の時代というのは文献にしか残っていない。古代遺跡とかも存在していたがやはりはっきりとしないものは仮想世界で創りにくいのだ。



それを完成させた後、もう一つの完全VRゲームも発売された。バトルワールド・ウォーというゲームでこちらはFPS仕様だ。このバトルワールド・ウォーの特徴は実際の武器や技術力及び資源のみで戦わなければならないというもの。このゲームが発売された理由は利権争いからなのだが、想像以上の人気が出ている。


技術を提供したものについてゲーム通貨が支払われたり、戦争で活躍したものについては大きな賞賛とともに世界各国から招待及び勧誘を受ける。それこそトップモデルやハリウッドスターと出会う機会やそれまた声優さんや歌手なんかにも出会う機会もあるのだ。



ゲーム通貨の話をしよう。ゲーム通貨はVR…そうだなVR世界のことはVRシステムと呼ぼう。VRシステムにおける全ゲーム共通の通貨だ。現実世界のお金は不要となり、ほとんどすべてのものがこのゲーム通貨によって売り買いされるようになった。


つまり、バトルワールド・ウォーで技術提供や戦闘活躍者には現金で巨万の富を得ることになるのだ。


エルダーワールド・オンラインについても同じことが言える。魔物を倒し、お金が手に入る。それをゲーム通貨に換金することによりリアルマネーとなり得るのだ。



ちなみにゲーム通貨はリルという名前である。



さて、本来の話に戻そう。このVRシステムの中で俺はある種の英雄と称された人物だ。エルダーワールド・オンラインそこで俺は誰もなしえない。いやなしえなかった偉業を達成し今やエルダーワールド・オンライン接続プレイヤーの中で知らぬ者はいないという。


その偉業とは全ボス制覇及び裏ボスの六週間単独撃破というものだ。


エルダーワールド・オンラインでのボスは躓くものも多いという、ただ単にエルダーワールド・オンラインではそのHPの多さがモノもいうレベルの話ではない。


それこそ一個小隊での戦いで一、二時間掛けて討伐するのが基本となっている。もちろんそのボスを倒すのは自由だが…そう、金目当てや名声が欲しいために挑む者もいる。最初のボスはまあ、どんなに弱い奴でも倒すことは出来るが物語の最後のラスボスと呼ばれるものは選りすぐりの一個大隊を率いて戦ったとしても倒すことがかなわなかったと言われるほど鬼畜難易度となっている。


VRシステムの中における時間を浪費するだけでなくゲーム通貨による防具の修理費用。アイテムの補充費用や時間のかかるボス戦はあまりいい目で見られなかったがそれでも巨万の富を得ることが叶うしかもゲームで…というのは大きな後押しとなって未だに攻略しようとするものが絶えないということだ。



結果、俺は単独によるラスボス討伐の1人目として歴史に名を刻んだ。もちろんこのエルダーワールド・オンラインのゲームマスターさんやエクリテンス社の社長さんからお褒めの言葉及びゲーム通貨9兆リルを頂いた。



そしてこう告げられた。



「君には裏ボスの討伐を依頼しよう。これを達成した場合はさらに9兆リルとVRという名を捨てた本当の世界に送り届けることを約束しよう」



ゲームマスターの言った意味を理解するのにあまり時間はかからなかった。そう、例えどんなにVRシステムが発達しようともそこはVRでしかないのだ。だがこのゲームマスターはこう言った「本当の世界」つまりは俺に裏ボスの討伐という偉業を成し得た場合転生ということをさせてもらえるということだ。



もちろん俺は全力全霊を掛けて裏ボスの討伐を行った。鬼畜難易度を超えた裏ボスはそれはもうとてつもないほど強かった。まず自己再生能力に加え、半減したHPを完全回復する魔法や状態異常を無効化する謎のベールを身に纏ったり実は第二、第三形態がありというクリアさせる気が全くないものだった。



結論から言うとリアル時間六週間に及ぶ連続戦闘によって俺の肉体は完全に言っていいほど形状を保てなくなった。



「おめでとう。君は僕達ですら成し得なかった単独による裏ボス撃破をやってのけた。この裏ボスとの戦闘でVRシステムが機能できなくなるまで戦い続けることこそ、本当の世界に行くための鍵なのだ。それじゃあこれが最後になるだろうが新たなる世界で新たなる人生を歩んでくれ。我が愛しの子よ」

それが昨日の出来事である。俺が目を覚ました時そこは小さな丘になっている草の匂いや澄んだ空気の美味しい場所だった。


一日かけて実践や検証した結果本当に別の世界のようだ。ただし、ゲームの時の基本的なものはそのままのようでマップやアイテム及び魔法やスキル、お金についてはそのまま引き継がれたようだった。



「やっちまったな」



そう口にしたのだが本当にやっちまったな…だ



つまり、俺の基礎ステータスは裏ボスを倒せるような状態のままさらには金やレジェンダリーウェポンなどといった物まで兼ね揃えている。



テンプレのようだがステータスと念じてみると、視界のすべてに映し出される俺の恥ずかしいステータスが



名前□リック

種族□人王種

レベル□1(1/25)

称号□なし

HP□280,040

MP□460,090

戦闘適正□SSS

戦闘スキル□鏡月□羅刹一鬼□狼牙□狼牙(絶)□鬼化□鬼龍化□一閃□千閃□月華□月華(菊)□月華(椿)□絶楼□千龍方陣□風縫い□影堕し□自損強化□鮮血吸収□雷神風神

魔法適性□SS

魔法スキル□ライトニング□ファイアランス□ダークブレード□インフェルノ□ストーム□ダイヤモンドダスト□ハリケーン□ホーリーアロー□オールエクスヒール□ドレインブレイク




つまり、俺は裏ボスを倒したそのステータスを引き継ぎさらにレベルアップするようになってしまったということだ。スキルについてもその時のままだし。





「きゃぁあああああ!!!!」



お約束のようだな…声的に助けても問題ないかもしれない



ひどいと言われようが可愛い子じゃなければ助けるつもりは無い。エルダーワールド・オンラインでの掟第1条、女子を救う時は顔で判断しろ


女性の敵と言われること第1条はなかなか男性陣からは絶対とされている。まあ、よくあることだがオンラインの中で襲われていた女子を助けようとする時はその顔をしっかりと確認しないと後々痛い目を見るということから始まった。


VRシステムが普及して言っちゃ悪いがあまりそう言った厄介ごとに首を突っ込むと目に傷があるスキンヘッドのお兄さんやスーツを来たお兄さんなどに襲われるということも多々ある。


可愛い子でさらに周りに人の気配がなさそうならばその子を助ける事もやむを得ないということになっているがそれでも被害が絶えない。特に実況配信している人がそれにあった時の盛り上がりは凄かった。



丘を超えたあたりに荷馬車を崩され、その中で数人の軽装な小汚い男と綺麗な服をした少しだけ腹の膨れている男が剣で斬りあっていた。どうやら奴隷商の様だな叫んだのはその後に積まれていた檻に入っている猫耳の少女の様だ。こちらの様子に気がつくことはないがその猫耳の少女は震えながらこちらの方をじっと見ていた。



嗅覚察知というある種のスキルなのだが、少女の鼻はその人の匂いを感じ取ることができる。これは獣人種の生まれつきの特性でありそのためだけに買われる奴隷も多い。




さて、ここでテンプレのように助けてもやってもいいかもしれない。あんな可愛らしい猫耳少女を救う子ができるのだから…ただ、やはり奴隷という点があまり気に食わない。なぜ奴隷になったのかわからない少女を助けてもそれが快楽殺人者だったりした場合二次的被害を受けるのは俺になる。



それでも…だ、あんなに可愛い子を放置できるほど俺の心は人をやめていないようだった。



俺はその茶色の猫耳が気に入った。そして、ウィスプトーンと呼ばれる念じた相手しか通話することが出来ないスキルを使いその猫耳少女とコンタクトをとった。



「俺の位置を察してるのは褒めてやろう。だが助けるなら報酬をいただく君は何を差し出してくれる」


「……すごい…これだけ離れた位置でも鮮明に……っ…私自身を差し上げます」



ほう?面白いことを言う。仕方ないなその茶色の猫耳をモフるためだ危険を承知で助けてみよう。



俺は大地を蹴った。その衝撃だけで丘の部分が陥没し衝撃波によりあたりの木々が揺さぶられていた。



突如のことに対処が遅れる盗賊…しかし、それを視認するには圧倒的な速度の違いがあった。



俺は既に1人の盗賊に肉薄してその掌底突きし意識を奪う…と思っていたのだが思っていないことが起こってしまった。そう掌底突きしたのだがその衝撃により盗賊の上半身が血の霧にしてしまったのだ。


いや、俺は全力なんて出していなかったし縮地による長距離の移動術を使っただけだ。



初めて人を殺めた…エルダーワールド・オンラインでもPKとか盗賊の殺害をしなくてはならないクエストもあったのだが、その時はこんなふうに血が舞うことは無かった。キラキラと霧散していくだけなのだ。だから今ここで人を殺めたことにすごい違和感を覚えたのだ。



気持ち悪い…すげぇ吐きたい


「っ、ば、化物め!!」



俺に臆することなく斬りかかってきた盗賊の剣を人差し指と中指の間で押さえ込み、そのまま剣をへし折った芸当を目の前で見せてやる。盗賊からしたらたまったものではないだろうが当の本人はちょっとやってみたかったことをしたまでである。


ただ、気を紛らわせているだけだ。殺めた人の顔が脳裏に焼きついて離れない。それを紛らわせるためにこんな芸当をしているのだ


戦意を失いつつある盗賊…しかし、その中で唯一号令を出し続ける者がいた。正直に耳障りだったため、へし折った先の剣先を拾い上げてそいつに投げつける



「ぐぎゃっ!?」


まるでゴブリンの鳴き声だな。額に突き刺さった剣先から滴る血を見て青ざめた表情になる盗賊たち。どうやらお頭だったようでその後は簡単に捕縛されることを認めた。


2人だ…たった2人ですんでよかったと喜ぶべきなのかそれとも2人を殺めたことについて深く考えるべきなのか。


奴隷商の人は俺に感謝を述べているがそんなことよりさっさとモフらせろ。それを口にしたら商人は血相を変えて交渉しようとか言い始めていたからイライラしている。



目の前の商人が悪いやつかわからないがとにかくいまはあの猫耳をモフって気を紛らわせないとおかしくなりそうで震えが止まらない。


それを表に出すことはないが商人の顔を見るだけでも腹立たしい気持ちになってしまう



「さっさとそいつを渡しやがれ。じゃねぇとテメェもあの男のようにしてやるぞ」


きつい口調になってしまったがそろそろ我慢が聞かなくなってきた。それを察したか知らないが商人は脂汗を垂らしながら渋々俺にその猫耳の少女を手渡した。




手錠を外されると俺の方に向かって抱きついて来る猫耳の少女。クリクリとした瞳は深い緑色をしていて、眉毛や睫毛はキリッとしているのだがどこか愛らしいそんな顔つきだ。抱き着いてきた時にわかったのだがなかなかいい体つきのようだ。てっきり貧乳のお子様ボディかと思っていたのだがそれは大間違いのようだ。


ろくなものを食べさせてもらっていないのかやせ細っているのだが出るところはしっかりと出ているため目の保養には持って来いだ



そしてそのぷりんとしたお尻から出ているのはやはり尻尾だ。ゴワゴワとしてて手入れされていないことを伺えたのだがそれでも美しい毛並みだったようだ。




俺はその少女の耳をモフモフとモフっているとだんだん先程までの荒んだ気持ちが落ち着いて行くことを感じた。初めての場所で初めての人殺し。なかなかハードな出来事だったが今こうして猫耳少女をモフることによって落ち着くことも出来る。




「そういや君の名前は?」


「はい!私はリンと申します!ご主人様」


スリスリと俺の腹のところで頬をこすりつけるリン。身長は背筋をしっかりと伸ばして150のちょっと上といったところで体重はまだわからないが太っているということは無い。


「ご主人様か…それもいいが名前で呼んでくれ俺は…」



さて、ここで問題が出てきた。ステータスで見た時俺の名前はリックになっていた。これはエルダーワールド・オンラインで使っていたネームだ。しかし本名は東郷とうごうさとしだ。さとしというべきかリックというべきか。


「俺の名前はリックだ。よろしくなリン」



悩んだ結果俺はリックの名前を使うことにした。なぜさとしじゃないのかというと[さとし]という存在は既にいないということにしようと思ったのだ。別に嫌な思い出があるとかそういうのではないし親からつけてもらった名前が嫌なわけがない。だが、この世界はリックでいようと思ったのだ。


外見は少し…いや結構美化されているため、好青年と見えるだろう。年齢的にも17と言った感じで目は少しキツめだが日本人顔になっている。テレビとかに出ている俳優さんみたいなかっこよさがあり、なかなか手間をかけたのがリックだ。



黒髪のショートでワックスを少し塗ったようにところどころ立っているが変な髪型ではない。瞳は青よりの黒みたいな感じで背も高いし筋肉の量もところどころ弄ってあり完璧なイケメンではないがかっこいいと言われるような容姿になっている。ふと思ったがこちらの方ではしっかりとリックの方の容姿のようで安心したのは内緒である。



「リック様は不思議な方ですね。まるで初めて人を殺めたように震えていらっしゃいました。冒険者の方ならだいたい経験することなのでしょうが冒険者ではないのですか?」


「表に出てたか?」


「いえ、匂いで感じました。獣人種の中でも猫族は嗅覚が鋭く人の心の底に思うものを感じ取ることが出来るのです。普通のお方でしたらそこまでけはいをうすくできるものではありませんよ?本当に何者なんですか」


ここで彼女に話していいべきか否か。当然のようにテンプレにハマっている身からしてみたらここで転生したということを話して理解してもらえるかどうかそれとも受け入れられたとしても面倒なことに関わるのだろうかという疑問がある。



「俺は…その転生したんだ。この世界とは丸いっきり別の世界から来た。だからリン俺は初めて人を殺したしこの場所いやこの世界のことが全くわからないんだ」



話すことにした。まだ出会ったばかりでお互い何の接点も無かったが話してもいいと俺は判断した。いや逆に面倒ごとに巻き込まれることを望んだのかもしれない。元の世界ではVRシステムができるまで本当に何も無かった。少しゲームが得意で長時間やっていても飽きることがないくらいだ。


そのまま大人になってひたすら大きな変動がない生活のみだった。だからかもしれないVRシステムが出来てそれにすぐのめり込みエルダーワールド・オンラインの生ける伝説となったのは。大きな変化を望んだからこそなし得たことなのかもしれない




「転来者なのですね…転来者なら納得できます。」


リンの話を聞くところによるとこの世界は時折別の世界から迷い込んでくる人がいるらしい。その人達の総称を転生しこの世界に来られた者…転来者と呼ばれる。


その者達は普通の記憶を持つものや全くわからないもの。記憶喪失のものなど様々な存在ばかりであるがその者達は普通のものより少し強いらしい。そして、その中でも俺は異質の存在としての転来者ということだ。


有り余る力を持ち世界を救うもしくは滅ぼす力を持つ者。そういったものはこの世界アースガルドに何度か現れたことがあるらしい。全員が歴史に名を刻むほどの偉業や悪名を轟かせたということだ。



それからアースガルドのことを詳しく聞いた、このアースガルドには三大陸が存在しその外に行けたものはいないという。噂などによると海の切れ目があり落ちてしまうと冥界にいってしまうという噂だ。


三大陸は三角形の形に位置しており、俺達がいる大陸をアインス。三角形の上のところだその右下に位置しているのがツヴァイ大陸そしてその反対に位置しているのがドライ大陸になる。これはドイツ語での1、2、3の読み方と同じだったため楽に覚えられる。


アインスには主に人種や獣人種、亜人種、竜人種、魔人族が住まう大陸で比較的温暖な気候であり、年に数回大雪が降るのみとなっている。その大雪も大龍スノードラゴンによる巡航における影響となっておりある意味ではお祭りのようになっているらしい。


そしてツヴァイ大陸はこの大陸とは真逆の人間がとてもじゃないが生活できない場所となっている。年中大雪に見舞われ、場所によっては灼熱の地獄。雷雲が立ち込め毒の雨が降る地域や大地の隆起が大きい場所といったところになっている。


ドライ大陸はほとんど大陸とは呼べないということだ。どうやら大昔は大陸の一つだったようだが大地震などによって大陸が分断、今では島々が連なる場所となっているようだ。



この世界における基本的な生活水準なのだがこれがまたチグハグな部分なのだ。転来者が来ることがあるためそういったものに情報提供されているのだろう。一般の家にも風呂は完備されているし、公衆浴場やトイレなどもある。残念ながらボットントイレであるが…。


基本的な街並みは中世における木造や石造りのものが多く王室などによる場所は純鉱石と呼ばれる硬度の高いもので作られたところもあるというところだ。



通貨について聞いてみたところリルということだ。なぜこの世界でゲーム通貨が基本となっているのか少々疑問に思ったが今の手持ちが全くないということにはならなかったので一安心だ。



肝心なものがステータスなどといったゲームの用語についてだ。これについてもやはり存在しており、各々がそのステータスを見ることが出来るらしい。


だが個人情報や自分の強さを見せるということは本当に信頼している者に限り開示させてもいいということがあり、むやみに見せるべきものではないということだ。冒険者ギルドに所属したりした場合についても基本的な部分のみを見せるだけでもいいということ。



「…覚えがいいのですね。普通の転来者はこの説明だけでも頭が沸騰したかのようになるのですが」


「リンは他の転来者にあったことがあるのか?」


「いえ、私はリック様が初めての方になります。冒険者の方にお話をお聞きしたことがありましてその時にそう告げられたのです」



覚えがいいのかどうかというと微妙なところだがこれがチュートリアル又は取説などと思えば楽に記憶できる。



「あ、見えてきました!」



かれこれ30分ほど街道を歩いていると目の前に大きな街が見えてきた。簡単な柵に覆われた街であるが簡易な造りに見えて実は魔法による大きな障壁が張られており敵対した者やいざと言うときは防衛機能として城壁が地面から生えてくるらしい。



そのため魔物も寄り付くことがなく、さらには戦争という場合についても対処可能というわけだ



「あそこがこのアインスの第二の街であるオルタです。」



オルタは平原を正面に背後を山という自然の防壁になるように作られた第二の首都であるということだ。近隣の村や町にとっても重要な拠点であると同時に夢見る冒険者達の集ういわば冒険者の街と言った感じらしい。周りの平原も強い魔物はおらず初心者でも対処できるため、上級から初心者まで様々なものが集うらしい。



さらに上の冒険者は第一の街でもある帝都エルリンティスに行くらしい。エルリンティスは軍事大国というか英雄達が集う場所とされており冒険者の最終目標でもあった。





オルタの街並みは至って普通だ。どうやらお昼前の時間だけあり人がちらほら見えるだけで外にいる人は少ないようだ。


リンによると街に入るには自身を証明するものがなくてはないけないらしいのだが転来者ということになると例外として仮の通行許可証をもらえる。それから防衛ギルドやら役所やらに行って通行許可証をもらい、はれて街の一員となるのだ。






△冒険者ギルド△



木造の造りの冒険者ギルドには様々な人が往来していた。その中でも俺はかなり目立つようだ。無理もない…防具や剣を一切身に纏わず黒い髪の毛をしているのだ。



このアースガルドには黒髪は珍しい。転来者にはそう言った黒い髪の毛の者がいるのでここにいる冒険者もなんとなくだが俺のことを転来者ということを察したようだ。



俺とリンはカウンターの前まで行き少し胸の大きいきりっとした凛々しいお姉さんのところに行った。なぜ彼女なのかというとこの中でもなぜか周りに人がいなかったし、他の受付嬢は冒険者に媚を売っていてなんだかイラついた。



「いらっしゃいませ、どのような要件でしょうか」


「冒険者の登録をお願いしたい」


「畏まりました。それでは登録に必要な情報の開示をお願いします。念の為ですが今後のクエストの依頼やおすすめをお教えするために戦闘関係のスキルや適性もみせていただけるとこちらとしてもとてもありがたいのですが…いえすいません冒険者になる方でもそう易々と手の内を見せるものではありませんね気にしないでください」



俺は彼女に全てを開示してやった。凛々しい彼女の顔がどのような反応を示すかという変な悪戯心が仕出かしてしまった事であるがその反応は想像を超えていた。スーツに身を包み凛々しい雰囲気を醸し出していた彼女が年相応の可愛らしい声を上げて驚いたその声に思わず惚れそうになる。



「そんな…いえ…すいません。少しお話をさせていただきたいので個室にご案内いたします」



彼女の言う通り俺は冒険者ギルドの個室に向かう。冒険者の目が俺を品定めするような目になるが随分と大人しい。いやテンプレを期待していたんだが仕掛けてこないようでつまらない…




「その全ての開示につきましてはありがたい事なのですが。戦闘適性SSSとなりますと…私達の管轄外になる可能性があります。リック様の場合ですとさらに魔法適性もSSと素晴らしいものをお持ちのようでこれは提案なのですが帝都の方でクエストを受けてもらった方がよろしいのではないでしょうか?」



「いや、それはやめておくよ。別に帝都に憧れているわけでも強くなりたいというわけでもないからな。ただこの世界を見て回りたいしそれには冒険者というのがぴったりだから…それに提案はありがたいが俺は転来者で、クエストについても基礎を知らない。だからなるべくこの地域で経験を積んだほうがいいだろう?」



「…すいません私ったらまさか英雄…いえ神王に匹敵する適性ランクを見たもので動揺してしまったのかも知れませんね。

リック様は転来者ということですので冒険者ギルドと併設されております王立オルタ魔導学院へ入学することもいいかもしれません。基本的には魔法関連の学院ですが基本的に冒険者というのは魔法を少々心得されに魔導学院では冒険者のための基礎訓練も行っています。転来者の皆さんには薦めているのですがどうでしょうか」



なるほど二種類の選択が出てきたな。一つはこの話に乗って学院生活をエンジョイしてみる。もう一つはそんなものは拒否して血肉が飛び散り戦場を駆け巡る冒険をするか



俺はもう一度学校というものは体験したくなった。高校を卒業して大学に進み社会に出た時誰もが思うだろうああ、高校くらいからやり直したいと…。



VRシステムが確立された中でもそれは思うことが多かった。俺は一つ目の提案に乗った。冒険者としての基礎を学びしっかりとした楽しい学院生活を送ること…。



リンもそれに賛成してくれたようだ。どうやらリンは冒険者ギルドに登録済みで学院に入ることも可能らしい。ただ、金の方だが、入学するためには2000リル。2人で4000リルが必要となるがリンはもちろん持っていない。


そして、凛々しい受付嬢もそのことをわかっていて前借りという形で貸し出すというのを口にしそうになる前に俺は4000リルを差し出した。どこからともなく現れた様子を伺うが大きな反応は見られないため基本的な売り買いについては冒険者ギルドや役所から発行されるカードによる自動精算となっているらしいがこうやってわざわざ硬貨を差し出すこともあることにはあるらしい。



手持ちにはエルダーワールド・オンラインで稼いだ8千万リルとプラスしてラスボス単独撃破による9兆リル、裏ボスの討伐による9兆リルがあるため金に困ることは一切ない。下手をしたらこの国の一部を独占しのし上がることだって出来る金額だ。


冒険者ギルドの前に立ち並んでいた屋台ではパン3個が20リルフルコースの食事をする場所のメニューでは約200リル。


剣や防具などについては安いもので100リル高いものでも2000を超えるものは少ないようだった。そう考えると4000リルというのは俺の想像していたよりもかなり高いものなのかもしれない。


リンに詳しく聞かなかった俺の失態だったが気にすることは無い。この個室には一応信用している連中だけだ。目の前の受付嬢だってかなり高難易度の冒険者受付試験を受けてきた者であり口は固いだろう。まあ、例外があるようだが…



それはまあ置いといて、4000リルを支払った俺とリンは受付嬢であるシルエさんに学院生活での基礎を学んでいた。どうやらシルエさんはその凛々しい姿やちょっとキツめの声に冒険者達も好き好んでかかるものがいないらしい。ああやってコネで入ってきたような受付嬢が媚を振りまいていた方が男性陣からしてみたら血生臭い戦場を癒すオアシスのようなものなのだろう。


シルエさんが受付嬢を辞めさせられることはこのギルドマスターが絶対に許可できないということらしい。キツい声や雰囲気だけで仕事はテキパキとこなすし気に食わない連中の対処も出来る。さらには丁寧な対応等といった感じが出来ているため他の子の任せられない部分を依頼している為でもあった。


いわゆる危ない方の仕事というやつだろうか?



話がずれたな。学院生活での基礎は冒険者になるにつれてのことを学ぶということらしい。魔法使いになる為にここに入学する子もいるらしいがどちらにしても魔法使いでもダンジョンと呼ばれる迷宮や危険な場所に行くために通う事になるため冒険者の資格のようなものになっている。


だいたい12歳とかそこら辺でこの学院に入学し人によるが4年や5年かけて卒業するらしい。卒業試験を合格したらその場でこの学院に留まるか晴れて1人前の冒険者として世界に羽ばたくか選択できるようだ。魔導を志すものはその場にとどまり新たなる魔法を編み出したり、研究を重ね、王宮近くの魔導高等学院への試験となる。


大人になって冒険者になろうとしてこの学院に訪れることは不可能らしい。どうやらレベルという影響のせいで早いうちに戦闘訓練をしておかないとその癖が身につかなくなるようだ。そのため学院生は20歳を超えないあたりの人たちが集まっているようだ。


過半数は12から13…高学年でも16というのが割合的には多いらしい。




「まあ、後は学院で学ぶのが基本ね。それじゃあ入学手続きはこちらで済ませておくから今日はひとまず休みなさい。必要な備品などもこちらで用意しておきますので持ち物に関して心配する必要はありません」



「了解した」



俺はシルエさんと握手を交わしその場を後にした。俺は気が付かなかったのだが、シルエさんの目は仕事の目をしておらず興味、面白いものを見つけたかのようなそんな瞳をしていた。

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