第12話 二階層
第二層は面白い構造のダンジョンとなっていた。恐らくテーマは堕ちた天空城といった所だろう。二層の扉を開くと墜落したように大穴の場所に大きな宮殿があった。
その中に入ると豪華な装飾品や名のあるであろう画家の絵などが立て掛けられていて恐らく歴史に興味のある人ならば夢のような空間に違いない。
残念ながらダンジョンの一部となっているためそれを剥ぎ取って持ち帰るということは出来ないけど…。
エルダーワールドにはないダンジョンのタイプのためかなり興味がある。この天空城にはある秘密が隠されておりそれを解き明かす事によりボスの部屋に進める仕様となり魔物の姿が見えない。どうやら謎解きがメインの場所らしい。
まず中央ホールのど真ん中に黒光りしている石碑がありそこに書かれていた文字によると
天空城が生まれる前この世界に長い髪をしたそれはもう美しい女の子がいました。その女の子はこのお城の王様に気に入られ大切に育てられました…その美しさが故に目が合う異性を虜にし婚約した男であってもその心を掴んでしまうほどの美貌に王様もそして自身も困ってしまいました。
王様は考えました。この城を空に浮かべ他国の王子5人の中1人を選ぶ儀式を行うと。
一つ、霊峰の神石
一つ、世界樹の枝
一つ、巨女蜘蛛の糸
一つ、龍の涙
一つ、虹色貝の殻
これらを持ってきたものを姫の婿として向かい入れるとそう言い残し城は空へと飛び立った。だが数百年たっても現れずついに天空城は天から地に堕ちてしまったということ。
つまり、竹取物語のかぐや姫ってところか。
という事はどうやら謎解きというより品物を集めてそれによって進むべき道が開かれるってわけだ。
面白い…
どうやら、一つ一つ探すというよりこの天空城の中の場所にその場所まで転移する場所がありそれを探さないといけないということか
まあ、適当に探せば見つかるだろう。
かれこれこの広い天空城をくまなく探したところしっかりと五つの転移門があった。もしかしたら偽物もある可能性もあるため最初に俺が入って出てこなかったり30分しても来なかったらすぐに転移の魔法を手動で発動させて逃げてくれという指示を出した。
リン達が猛反対したがどっちにしろ進まなくてはならないし、入らないわけには行かない。
この中でも一番強い俺が先行するのは当たり前という事を話して無理やり納得してもらった。
幸い一番強そうな龍の涙が必要なら30分位はかかる可能性があるが、それ以外ならまあ簡単に取れるものばかりだしすぐに戻ってこれるだろう。
「んじゃ…見てくるな。そんなに心配するなって…大丈夫だよ」
リンとアルシェには頬にキスをし2人が赤面して地面に顔を向けている隙を狙ってヒルダの口を蹂躙するように貪って門の中に入った。
真っ白光が視界を多いつくし目をつむり次に目を開けた時、そこは大海原であった。白い砂浜や青い海。この照りつける太陽の暑さ。
流石に服を脱いだが、どうやら探すポイントのあたりには飛ばしてくれるらしい。
そして転移門は問題なく作動しているようだ。それを確認すると向こう側も大丈夫と安心したように中に入っていく。
そして俺と同じようにこんな綺麗な空間に出るとは思っていなかったようで口を開けていたが、だんだん熱くなってきたのだろう…額に汗が滲み出てきていた。
「いいわよね…男って…上半身を脱いでも恥ずかしくはないんだし」
「脱げばいいんじゃね?誰もいないんだし大丈夫だよあ、やっぱそれはなし…主に俺が不味いからこれ着てくれ」
アイテムボックスから取り出したのはいわゆる…いやどう見ても水着です。例えこのダンジョンが、危険な場所とわかっていても目の前に海があるなら泳ぐしかないだろう。
そして何故男の俺が女性物の水着を持っているかというとそう、何を隠そうガチャである。
サマーサンシャインというエルダーワールドにおいて誰しもが忘れない最大級の2週間に及ぶ大イベントがあった。
そこで手に入るチケットを集めてガチャガチャをするのだが水着ガチャは何故か男女別ではない。
そのため暇つぶしとして参加したオレがぶっちぎりの勢いでチケットを獲得しガチャを回していったところ60着近くの水着を手に入れ、扱いに困ってしまったという出来事があった。
そして手渡した水着はそのガチャの中でもかなり低確率というかほんとに出たのが奇跡みたいなものの内の一点がある
それがこちら、スクール水着。そう誰しもが1度は目に焼き付けたいような成長し始めた高校生の女子が着込む女性の体にフィットするあの有名であり卑猥なスクール水着である。これを発明した人に感謝したい。
学校で一番綺麗な女子の水着姿を目に焼き付けようと血まなこになったあの日々は忘れられないだろう。
俺の友人も何人か失った…だが成し遂げた時の達成感を俺はまだ覚えていた。100歳を超えたジジイが何をと思うだろうが仮想世界に住まう人間なら100歳を超えるなんて当たり前のことだしまだ若かったからな。
もちろんそれを身につけてもらうのはヒルダである。リンにはヒラヒラが沢山ついた可愛らしい水着を、アルシェにはちょっとセクシーを意識した女の子が着るような黒いフリルが少なめの水着だ。
リンとアルシェはその場で着替えようとするのでヒルダを岩陰まで押しやって2人の裸体を見ないようにした。
これは危ない。決して俺がロリコンという訳では無いがどうしてもあの二人の裸を見てしまうと我慢することが出来なくなりそうで怖いのだ。
「それで?なんで私をこっちに連れてきたのかしら?」
ヒルダは俺が何をしたいのか分かっていながら聞いてくる。いや、これは待っているのかもしれない。
「ヒルダ、ここで着替えろ」
彼女は顔を赤面させながら学院の服を俺の見ている目の前で脱いでいく…シュルという布の擦れる音が妙に大きく聞こえ、生唾を飲み込む。
彼女の白くきめ細かい肌がゆっくりと姿を見せながらその痴態を見つめる。
「…ねぇ…もう、ダメこれ以上は」
「ダメじゃないだろ?」
ヒルダは俺の声に体を震わせるが手は動かない。どうやらこれ以上になると我慢出来なくなるっぽいな。
「…ヒルダ」
「あ…ダメッ」
ドンッと俺を突き飛ばしてヒルダはそそくさと着替え始めてしまう。ちらりと横を確認すると岩陰からリンとアルシェが隠れて見ていた。
ありゃ、バレてたか。
「しっかしめっちゃきれいな海だな。これがダンジョンの中だとは思わねぇな」
まるでハワイの海のように生みが透き通っており浅い場所なら珊瑚なども見て取れた。
「そうね…でもあまり長居しちゃ行けない場所なのよね」
ヒルダは美しい青い髪が風によってなびいているのを手で抑えて俺の横に座る。
リンとアルシェは初めての海なのであろうとても大はしゃぎしていてアルシェは大はしゃぎというより笑顔というまずお目にかかることの出来ない顔をしているだけだが、それでも楽しそうではあった。
「居心地が良すぎるってことか…確かに不味いな」
この場所で一番怖いのはそれであった。居心地がいい空間でしかもこんな楽しい場所ならば過ごしたくもなるだろう。
だがそれが命取りになる。ここがダンジョンということを忘れ長居してしまうといつの間にかダンジョンの住人としてその精神を喰らっていかれてしまうのだ。
そうなれば最後、二度と本物の太陽を拝むことなく地下に埋もれることになるんだ。
「ヒルダ、それ脱いでいいよ。こっちの方が似合う」
黒いビキニを手渡してスクール水着を脱ぎ始めるヒルダ。流石に俺もそれは予測してなかったので思わず目をそらしてしまった。
それがヒルダなりの仕返しだったのだろう。してやったりと笑みを浮かべていた。
「リックだけだよ?こんな姿を異性に見せるのは」
「めっちゃ似合ってるよ」
間違いなくそれはヒルダであるのだが、水着一つでここまで変わるとは思わなかった。スクール水着を着せたのはある意味自らの欲望を満たすためのものでありなおかつ似合っていたがどちらかというと幼さが前に出てきた感じだ。
それに比べて黒いビキニは大人のヒルダを前面に押し出したようで、モデルのような体格をしているヒルダにはマッチしていた。
「ありがと…」
さてと…そろそろ帰りますか…
あれ?なにか忘れて…あ…そういえば虹色貝の殻を取らないといけなかったんだ。
「おーいリン、アルシェそこら辺に虹色に光る貝殻ないか?」
「んーないですよー?」
となると…問題はあれだな
「あれだね」
ヒルダが見つめる方角にそれは美しい虹色の殻を背負った十メートルもあろう巨大な貝の魔物がいた。
リンとアルシェも流石に気がついたのか急いでこちらに向かってくるが、でかいくせにどんなスピードなんだよといいたいくらいに速い速度で迫ってくるためビビる。
「あれの中身って食えるのかな」
「メダルになっちゃうかも知れないけど…でもそうか生け捕りにしておけば…ってはぁなんか常識が通じないっておっかないわ…まあ、好きなようにしてみれば?私達は着替えてるからあれはお願いね?」
「任せろ」
水着一丁の男と十メートルもある貝というこれまた面白い場面であるが、リックの目が変わると今までヒルダやリン、アルシェ達と仲良くキャッキャウフフしていた時の優しいものが一切なく少しだけ怒っているような気がしたヒルダは首をかしげた
間違いではない。つまりキャッキャウフフの時間を奪われしかもお着替えシーンが見れないということがリックの起爆剤となってしまいキレているという事で間違いはなかったのであった。
「テメェを丸焼きにしてやろうかー!!!!!」
リックの手の平から無数の魔法陣が展開し始めて思わずヒルダやリン、アルシェすらも意識を向けてしまった。それほどまでに魔力の力がとてつもなくそして強大なものであったためである。
魔力の流れというものだ。簡単にいうと通常生活する分にはそれを感じることがないものの魔力の流れが強いところは浅く緩やかな川の流れのようであり、今のリックはまるで氾濫した川の流れのようなとてつもない程強烈な流れがリックの周りに集まっている。
「燃え上がれ!イラプション!!!」
リックには珍しく短縮詠唱による、魔法の発動のため威力も底上げされ、また、その魔法による発動に伴い虹色の貝の走るルートに大きなマグマの池が現れた。
グツグツと煮えたぎるそのマグマの熱さによって海が蒸発しそこに突っ込んでしまう虹色の貝は一瞬にしてその貝殻の口をパカッと開く。
「ふう…まさかマグマの温度でも貝が燃えないとかとんでもねぇな」
確かマグマの温度って約1,000度くらいだった気がするんだけどそれでちょうど美味しく焼きあがるような貝って流石ファンタジーって所だな。
美味しそうな匂いがあたりに立ち込め流石に俺も腹を鳴らす。
醤油あったっけな…
着替え終わったリン達と一緒にとんでもないほど大きな貝をいただく事になったのだがかれこれ1日をここで過ごしているような気がした。確か二階層に到達したのが昼でそのまま飯を食わないで遊んでいたから腹が減っていたのだろう。
貝だけだとつまらないのでちょちょいと海に餌を投げ込んでやると入れ食い状態で魚を入手したためそれらも一緒に焼いたり、生で食えるようなマグロっぽい魚は刺身ににしたらちょっとしたお魚パーティーになっていた。
流石に鮫が食いついた時には驚いたがすぐに逃がしてやった。流石に俺もサメを食べる気にはなれないからな。
取れた魚は鯛のような青色の魚、白色のマグロ、緑色をしたイカ、紫のタコといった色合いが酷い魚ばかりだったが毒とかもないみたいだし試しに食ってみても普通にその魚の味だった為問題はないと思う。
まあ、ダンジョンの中に生成されている魚だし危険度的にはとても低い環境で過ごしたのだろう。外敵に対しての危機感がないというのが食べられる要因になったのかもしれない。
それからリン達は遊び疲れてしまったようなのでヒルダに監視を頼み俺ひとりで四つのお宝を取りに行くことになり、まず、龍の涙を手に入れるために龍のアソコを思いっきり蹴り上げたところ泣いてくれたため簡単に手に入れることが出来たし、その後凄い猛攻を仕掛けてきたが殺すことはなく痛めつけてあげたせいで俺に頭をたれ、従えてしまうという事になったが無視して帰ってきた。
次は霊峰の神石。高い山の頂上にある神が作ったと言われる石。単なる石ではなく賢者の石とも言われる錬金術において最高峰のものだ。
山登りをするとかいうめんどくさい事をしないといけないし魔物がわんさか襲ってくるため、縮地による移動と空間に魔力で作った足場を作ってそこを飛んで霊峰の山頂まで15分で到達できた。
空間縮地と名付けよう。いわゆる魔法少女とかが足場に魔法陣を展開してそこに乗っているような感じだが長時間も足場にすることが出来ないため一瞬で作ってそこを足場に跳躍していく感じだな。
石はルービックキューブである。色は緑色だけだし、これの面白いところは勝手に動いている所だな。
カチャカチャという音とともに回っているためアイテムボックスの中に入れておかないと落ちそうだ。
三つ目は世界樹の枝。ポキッと折るわけにもいかないので世界樹の近くに来た精霊さんと仲良くなったためお願いしたところ快く渡してくれた。
「うーん…せっかく仲良くなったのに離れたくないわ…一緒にいっていい?」
「いいよ。精霊さん、強いだろ?」
「ふふ、ここを任されるものなら当たり前よ!私はドリアード大地と世界樹を守る守護精霊神よ。普通の人間なら瞬殺できるんだから!
でもあなたは倒せそうにないわね。どんな手を使っても負けてしまいそうだわ…ふふふドリアードのちから見せてあげるわ」
ドリアードは緑色のショートヘアの子で30センチくらいの大きさだが重さが全くない。
俺の肩に座りながら目の前に現れた魔物に魔法を放った。
驚くべきは彼女のMPの量とその魔法の扱いだった。ドリアードが発動させた魔法はアースバインドに似た束縛系の魔法なのだがどう見てもあれは根っこである。
その根っこがまるで生き物のように魔物の体を地面に締め付けるように動き回る。メキャメキャという脊髄の折れるような音が聞こえるがドリアードは魔法をとめることなく更に根っこを追加しついに肉体の限界を超えた重さに魔物が引きちぎれ、血肉と化した。
一度捕まったら根っこに捕食されるのか…しかもあの根っこ細いくせに強度があるから振り回したら斬れたりするのかも知れないな。
「あは!団体さんよ!」
ドリアードは俺の肩の上で立ち上がるとこれまた無詠唱で魔法を発動させた。
「ほーらやっちゃえ!」
狼と熊の魔物が群れをなして襲ってきたのをドリアードは楽しそうに蹂躙していた。
先ほどの根っことは大違いの巨木の幹のよう大きな根っこが100キロ以上の速さで何十本もの数で振り回されるため魔物の強固な鱗や皮膚があったとしてもただでは済まないような乱打が襲っていた。
ドリアードの実力はハッキリしたが想像以上に強いということは分かった。もし、ドリアードが敵だとしたら炎で根っこを燃やしたりすれば勝てると思った人もいるだろうがこの根っこにはドリアードが生み出したものなのですぐに消火することも出来るし、ましてやムチのように襲いかかる根っこを燃やしてしまうと炎が纏った状態となりさらに危険度が増して来るという点があるため炎が効かないのだ。
「ふふーんこんなものよ!どう凄いでしょ」
「ああ、確かに凄かったな。ドリアードいい子だ」
俺はドリアードの頭を撫でてやる。彼女によると俺に撫でられるととても安心できて心が安らぐらしい。そういえばヒルダやリン達にも頭を撫でても嫌がられないというのはやっぱこれの事なのだろう。
転移して戻ってくるとドリアードはとても驚きそして興味津々な様子であちこちを見て回っていた。
ヒルダに合流し世界樹の枝を手渡すついでにドリアードを紹介したところ可愛らしい容姿のためヒルダも警戒心など全く持たずに仲良く接していた。
まあ、ドリアードは精霊だから姿を消すことが出来るし、常人というか俺以外の奴には視認できないような高度な魔法も使えるため実質強いペットが入ったという見方で間違いはないだろう。ペットにしては半端じゃないくらい強いが…。
っとさっさと巨女蜘蛛の糸を集めてくるか…最後の転移門をくぐると洞窟につながっており辺りが一瞬にして暗闇に包まれる。
リックは魔法で周囲を照らしながら道なりに進んでいくと小さな…いや1mもある蜘蛛だから小さくはないか。まあそんな魔物に出くわし、糸を吐き出すがそれを逆に利用し蜘蛛を振り回して1匹を倒す。
キチチチというような嫌な音を鳴らしている蜘蛛だが、どうやら仲間を呼び寄せるものらしくどんどん蜘蛛が増えていく。
天井や横の壁四方八方から蜘蛛たちが押し寄せ俺を伺っているが流石に蜘蛛の大合唱がうるさくなってきた為全てを灰にしてやった。
まあ、そうして一番でかい空洞の中にはボスらしき蜘蛛が待ち構えていてなんというか綺麗なお姉さんでした。下半身から蜘蛛の腹につながっており上半身の腰から上に掛けて普通の人の姿なのだ。しかも全裸。
黒い艶やかなストレートの髪になぜかとある死にゲーのエッチぃあの子を思い出した。まあ殺す必要も無いだろうし穏便に済ませてもいいかな。
いや別に下半身が蜘蛛だけど可愛いから殺したくないとかじゃないからね?
「すいません。糸を分けて欲しいのですが」
人の言葉を喋れるかどうかは分からないが会話してみたいことには始まらないだろう。
「あら?いらっしゃい。カッコいい坊やねいいわよ…あ、でも…いま切らしてるのよ。だ・か・ら…直接搾り取ってくれる?」
し、搾り取る…まさかあの素晴らしいお胸から白い…物を吐き出すというのか?
流石にそれはなかったものの彼女の蜘蛛側の方に糸を発射させる部位がありそこを優しく握ってやると心地よい喘ぎが彼女の口から漏れ、ピュルルと糸が吐き出されていた。
何故かとても背徳感が凄まじく、生唾を飲み込み更に絞っていくとどんどん彼女の喘ぎ声が洞窟内を木霊していく。
「ん!あん!…上手ね…んん!!ふぁ……ぁ」
彼女から手を離すと物寂しそうに欲情に濡れた熱い瞳がこちらに向くがこんな姿の女性でも俺は興奮できることを知ってちょっとだけ彼女と一線を超えてしまった。
彼女の体が上にのしかかってきた時は恐怖感もあったがそれ以上に彼女の柔らかな体がまるで全身を包み込んでくれるような感覚に陥った。
一戦を交えたところ彼女は普通の女の子である。いや確かに蜘蛛の体があるがそれでもアリです。
「ふぅ…初めてだわこんなに気持ちよくなれたの。ありがとうリック」
「クーネが満足してくれたなら良かったよ。さて、俺は帰るよ。仲間が待ってるからな」
「ふふじゃあその仲間に加えてもらおうかしら?」
彼女の顔を見るが冗談というわけではなさそうである。ドリアードが新たな仲間になってくれたけど…更に追加になるか?
拒否という選択肢は無かったが…とにかく問題が多くそちらの方が大切な気がしていた
「別に構わないが…街中とかどうするんだ?精霊とかみたいに姿を消すことは出来ないだろうし」
やはり一番の問題は街だろうな。クーネは恐らく長い年月を生きてきて人間とも戦ったことがあるのかもしれない。いや、このダンジョンに生成された魔物ではないことは確かだろう。ドリアードだって規則性を持った意思では無かったしあの時魔物を倒してもメダルにはならず肉片とかしていたし、クーネ以外の蜘蛛を倒した時も敵がメダルになっていなかったとすると、恐らくこの転移門は作られた場所ではなく本来ある場所に転移をさせていたという事なのだろう。
話を戻して、クーネの外見は間違いなくというか完全にアラクネである。危険度的には中堅の冒険者が10人態勢で相手をしないといけないくらいのけっこう危ない方のため、味方にしたといっても信用されるわけないし、まず、地上に出した時点でそこらじゅうの国や街を敵に回すことになる。
「問題ないわよ…見ててね」
クーネの体がどんどん小さくなっていき、遂には0.5くらいの小ささになってしまった。
「こうすれば問題ないでしょ?リックの頭を棲家にしちゃおう」
俺の手に飛び乗ったあと、頭に跳躍し隠れてしまった。いや、それはそれで汚いと思うからやめて欲しいのだが…。
しっかりと髪は洗っているぞ?街にはシャンプーとかは売ってなかったが石鹸はあったし、それを調合して特製のシャンプーを作って洗っているからそこまで汚くはないと思うが頭皮の方までは綺麗に洗えているか分からない。
クーネの小ささで俺の頭に住み着くのなら間違いなくそういった所を見られてしまうわけである。
「問題ないわよ。リックの頭はすごく綺麗よ。ふふいい香りもするし本当に快適ね」
「まあ、姿は問題なくなったけど本当にそこでいいのか?」
「ええ、暖かいし毛がフワフワしてて心地いいからね。糸で簡単に住処を作ろうとしたけど必要ないわね。このままでいいわ」
まあ、いいか…。
新たにクーネことアラクネを仲間にしたリックは転移門をくぐり全ての材料を揃え終わった。五つの物を石碑の元におくと正面の重厚な扉が重々しい音とともに開いた。
「よし、みんなこれからボス部屋に挑むつもりだが正直いって厄介な相手ではないと思う。よーし突撃ー」
何とも締まらない感じだが心配は無用というものである。ボスといえど今のチームに敗北は有り得ないだろう。
最強のリックに加え閃光のリン、氷炎のアルシェ、死神のヒルダに精霊ドリアード、糸死のクーネ。
「さあ、殲滅しようか」
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