第11話 ダンジョン攻略
ダンジョンとはファンタジー小説やアニメ、ゲームにおいて魔物が生息し宝箱や伝説の武器などが手に入るといわれる地下に広がる謎の大空洞である。
アースガルドにおいても同じことがいえる。突如として現れるダンジョンには宝箱があり、魔物も沢山いる。そして狭い中で戦わなければならないという危険なもので入口にて入場規制を行っている。
が、一度クリアされてダンジョンについては自由に出入り出来ることになっている。これは危険度の高い魔物は生まれたばかりのダンジョンだと大勢いて、最深部のダンジョンコアを破壊することによりその発生が止まるのだ。そのため、一度クリアされはダンジョンについては基本的に弱い魔物しか住み着いておらず、宝箱も存在するため観光スポットとしても有名になる。
ダンジョンによって生み出された魔物は地上に生活する魔物と違い魔力の塊であるため倒すとゲームのように霧散してモンスターメダルとしてドロップ品を落とす。それが討伐の印となり冒険者ギルドにて納品することによりお金と換金したり牙など武器に使えるものについてはギルドから引き出されることになる。
一々剥ぎ取ることがないためダンジョンに潜る冒険者も多いのだが、死亡率もそれに伴って高くなっている。ダンジョンの中は基本的に無法地帯であり、背後を襲われ、モンスターメダルを奪われることもあるし、殺されてしまった人間についてはそのダンジョンに吸収されていくため、完全犯罪となってしまう。その報告してきた冒険者に詳しく事情を聞くこともない。
そういった輩がいるためにダンジョンは普通の地上よりも危険に満ち溢れた場所と言えた。
「それで、俺達にダンジョンに潜れって言うのはやっぱり新しいダンジョンってことですか?」
ダンジョンが生み出される原因はハッキリしていない。それこそ街中にポンッと現れることもあるし、辺境の地にひっそりと生まれることもある。
「そうよ…ちょうど貴方達が実地訓練をする場所となっている森林地帯にね。冒険者ギルドの方に頼んでも良かったんだけど……リック君たちなら腕試し程度に行ってこれるんじゃないかしら?」
「くく…そういいつつあれだろナターシャ先生。新しいダンジョンに生まれた宝箱はクリアされたダンジョンの数倍レア物が多い。俺らがダンジョンという場所で特訓できることを引換に何割かを寄越せってことだろ」
「話が早くて助かるわ〜…そう、リック君。私たちに宝箱を開けた数の4割をくれないかしら?そしたらその場所を教えてあげるし中身についてもいらない物でいいわ…リック君達が実戦を先に経験できてヒルダさんとのパーティーについての訓練にもなる。ダンジョンの奥地に眠るレアな武器についてもリック君の好きにしていい。どうかしら?」
4割…まあ妥当だな。もしこれがナターシャ先生じゃなくほかの人間なら、暗殺者や盗賊を雇ってクリアした直後に殺し、すべてを奪った後、それを山分けしていけばいい。信頼できる場所の依頼でも基本的に5割…ヘタをすれば6割を持っていかれる可能性もある。それもレア度の高いものを優先的に。
当然、その冒険者に対して直接依頼してきた場合最初に依頼料と準備にかかる金額を渡すことになる。もちろんそれも馬鹿にならない。新たなダンジョンに挑むのだ…危険が高い所だからこそ依頼料も馬鹿にならないし、準備費用も相当のものになる。
その対価としてクリア後の報酬が差し引かれていくのだが、ナターシャ先生の場合依頼料はないが、準備費用については全額負担。報酬についても好きにしていいときた。
裏がありそうだが、デメリットと掛けてみるとどう考えてもメリットの方が大きい。
まずメリットの方だ。
1、俺達の特訓になる
2、パーティー戦における訓練も行える
3、魔物との戦闘について授業より早く学べる
4、通常の依頼と違って破格の条件(報酬)
5、ダンジョンの楽しさがわかる
次にデメリット
1、破格の条件のため裏がある可能性
2、ダンジョンクリア時における別の業者の不意打ち
3、当たり前だが命の危険性
だが、ナターシャの言葉を信頼するとすると、デメリットの2番はなくなると言っていい。彼女が直接俺に依頼をかけた時点で、ナターシャの方にも何かしらのメリットがあるのだ。それをやすやすと殺すわけにはいかないだろう。入口に見張りでも立ててくれるだろうと思う。
「リン、アルシェはどうだ?最大限の支援はするがそれでも不意の一撃は避けられないかもしれない。それでもダンジョンに潜ってみるか?」
「リック様と離れる方が危険ですよ。リンはリック様について行きます」
「アルシェも…同じ」
「ヒルダは?」
「問題ないわ。勝ち目の無いリックに叩きのめされてばかりで憂さ晴らしには丁度いいわね」
う…そう言われるとな…一応ブリュセンの処罰による決闘の日時が知らされるまでには会得して欲しいから厳しめにしてたという自覚はあるが…そこまでストレスが溜まってるなんて思ってもなかったな…
「悪かったよ。言ってくれれば良かったのに」
「ふふ、嘘よ。リックに特訓してもらって自分の力が試せるいい機会だからというのが本音よ。でも訓練がちょっと厳しかったかしらね」
うーん…もう少しゆっくり進めるべきだったかな…悪いことをした。
今後の特訓はゆるくするか。あんまり詰めすぎても体を壊すもとだもんな。
「全員参加ってことでいいわね。それじゃあ早速だけど今夜から向かってもらうわ」
「今夜ですか?ああ、そうか実地訓練の日が近いしダンジョンが周りの魔物に影響を与える可能性があるから…って事か」
「そうよ。Fクラスの人達が特殊な環境で育った人と言っても初めてのパーティーで慣れない環境での訓練になるから小さな問題でも潰しておきたいのよ」
「分かったよ。それじゃあちょっくら装備品をみんなに渡してやるか」
エルダーワールド・オンラインで俺が頂点に立つ為に行った事の中にレアドロップを落とすまでの周回だ。普通にオンラインゲームなら当たり前の事だがエルダーワールドにおいてはかなりの時間を浪費するボスの討伐やレアモンスターを探す時間なんてものを周回プレイするとなると本格的に廃プレイヤーぐらいしか行わないだろう。
現に俺が必要のアイテムボックスに存在する装備でもレアモンスターから確率で落とすとんでもなく低い確率の武器もある。それがハリセンという武器だ。
ネタ武器…そういわゆるネタ武器として有名なハリセンだがエルダーワールドのボス泥を除いて最高のレア度を誇るものである。そしてそのハリセンに対する説明はこう書かれている
「運命の魂にもその一撃は届き、全力の威力で振りかぶりつっこむことにより大地を穿つ神撃の一撃となる」
まあハリセンの癖して本気で振り抜けば大地に穴が開くほどの威力を持っているし、幽体などといった肉体を持たない的に対しても効果を得られる武器だ。実際俺は使わなかったがかなり強いらしい。
それを渡そうと思ったが止めた。リンに持たせても正直可愛らしくないから却下だ。
しかしあまりにも高性能な装備を渡してしまうとその性能に過信していざと言うときに自分の判断ができなくなる可能性もある。そうなってくるとやはり俺が自前で鍛え上げた装備でも渡しておいた方がいいかもしれない。
ハードコート一式がいいかな。序盤だとかなり重宝する装備だし肌が露出しないものだから女性にも人気がある。
俺が造ったハードコート一式の装備は基本的にスキルを重視し、なおかつ軽量化を図っていた。まあ、俺が装備するように作った物だがいい物が揃ってきてしまうとお蔵入りしてしまった一品である。
リンには茶色のハードコートと鋼鉄の手甲、硬化の指輪、テレポートリング
アルシェには黒色のマジックコートに魔女の帽子、MPの指輪とテレポートリング
ヒルダは自前の装備があるため俺から手渡せるものが限られてくるが一応攻撃の指輪とテレポートリングを装備させた。
鋼鉄の手甲は市販されているものがあるが俺が鍛えたものを手渡しておいた。一応だがそこら辺の手甲とは比べ物にならないほどいい性能のものである。基礎攻撃力上昇、HP増加、敏捷アップを付与しているためおそらくエルダーワールドで序盤のボスまでは使える一品である。
硬化の指輪は指輪本来の防御力上昇に加え、追加の防御力上昇を加えてある。
魔女の帽子はあのトンガリが付いていてその頂点が垂れたような奴でアルシェの黒色のマジックコートと合わさって小さな魔女っ子みたいな可愛さがある。
マジックコートはMP消費カット、物理ダメージ軽減の効果を付与されており、魔女の帽子は魔法ダメージ上昇、MP増加を付与させた。
ついでにMPの回復速度を上げるMPの指輪である。
ヒルダに手渡した攻撃の指輪は攻撃力アップ、ピンチに攻撃力上昇(大)を付与させたものだ。
最後に全員に手渡したテレポートリングは使い捨ての転移魔法が付与されている危険な状態になった際自動発動するようになっている。
場所は俺の泊まっている宿に転移するようになっている。
「リンはめっちゃ似合ってるなその服装に銃を持たせればさすらいの狩人みたいになりそうだ」
尻尾もパタパタと振っておりかなり気に入ったみたいだ。
それから数十分後ナターシャの用意した馬車に乗り込んで森林地帯に向かっていた…馬車と言っても滅茶苦茶尻が痛い…。サスペンションがないため地面の衝撃が直に尻に来る為たまったものではない。
「リック…あれみたいね」
ヒルダは馬車の窓を開けて指を指した。そこにはまるで森林の中に大きな口を開けたダンジョンの入口が見えた。
確かに違和感が凄い。ダンジョンの周りには木がまるで元々生えていなかったように更地になっているし、それ以外は普通に元気な木々が生い茂っていた。
「どうどう。エリザベス…お疲れ。さて皆さん俺はここで見張っておきますのでダンジョンを楽しんできてください。我が師ナターシャ様も貴方達を認めてますからね。忠告しておく事は壁ですかね…目に見えるものを過信してはいけませんよ」
馬車を操っていた従者さんと思った人は実はナターシャの部下でもあった。まあ、それとなく武装をしているし、足の動きから見ても従者というより率先して前に出るような前衛のタイプであろう。
ダンジョンか…いい思い出もあるし悪い思い出もあるから複雑な気持ちだな。いやぁダンジョンのお宝を見つけた時とかはスゲェ興奮したけど、モンスタートラップに引っ掛かったりそれこそ黒光りした虫に襲われたりと悪夢を見たこともあった。
そうそう面白い思いでもあった。カジノダンジョンっていういわゆるお遊びダンジョンなんだけど人生ゲームのダンジョンバージョンで、サイコロを回してその分のマスまで進むことが出来るのだが、しっかりとそのマスひとつひとつにクリア条件が書かれておりそれをクリアしないと先に進めないというものだ。
まあ、○○ゲームで1勝しろとかそういったものからモンスター部屋に転移させられ、一定時間生き残れや○○数討伐せよというものだ。
カジノだけあり、魔物も弱くドロップ品はカジノコインとなっており、意外にもモンスター部屋は当たりという組みわけにされている。
とまあこの話は置いといて、今回は比較的浅い階層のダンジョンだ。地中に向けてソナーを放ったため全体図も分かったし、設置型のトラップも見破れるな。
「うぅ薄暗くてジメッとしてます」
リンは耳をぱたんとおとしてプルプルと震えていた。怖いというよりこのジメジメした場所が嫌なのだろう。俺の手を握る強さもいつもより少し強かった。
アルシェは俺の服の裾をつまんでいるが、怖くないと胸を張ったていた。
ヒルダは普通にしていた。まあ、何度か入ったこともあるのだろう。だが、ヒルダの大鎌とこのダンジョンの広さから考えると少し戦いにくいかも知れない。俺らが横に並んで入れるくらいの一本道であるが、ちょっと戦うには狭いな。
「…いるな」
「ええ…間違いないわ」
俺は直剣を鞘から抜き、ヒルダは鎌を構えた。リンとアルシェも遅れながらも武器を抜いた。
壁から現れるようにして3体の魔物が姿を見せた。緑色をした140センチくらいの子鬼。ゴブリンだ。手にはボロボロの剣や木の棍棒をもってなにやら騒ぎ始めているようだ。
すまねぇゴブリン語は分からねぇんだ。だがどちらにしろ敵意を向けられているし殺す事には変わりない。
幸い3体という事なので俺が相手する必要は無い。リンとアルシェに任せてもいいだろう。
「アルシェ、リン。頼むぞ」
「はい!」
「…ん」
リンは俺より小さな直剣を握り締めるとゴブリンに向かって走り出す。ゴブリン側もこちらが攻撃すると分かると一斉に襲い掛かるが獣人の身体能力を生かして合間を縫って一太刀でゴブリンを一体切り伏せた。
白い光をまき散らしながらゴブリンの断末魔が響きゴブリンが霧散するとメダルが地面に落ちた。ゲームのままみたいだな。しかし、リンの動きがとても凄い。普通魔物の間を抜けるというのは怖くて出来るものではない。俺だって怖い…それを実践で発揮できるということはリンは才能があるのだろう。
一方アルシェは魔法の詠唱が完了し、炎の槍でゴブリンを貫いていた。焦げ臭い匂いが立ち込めるが最後の一体がアルシェの攻撃にヘイトが向かったようでリンのことを見もせずにアルシェに突進を仕掛けてくる。
ヒルダが咄嗟に前に出ようとするが俺は手で制止する。
「問題ないさ」
「アイスソード!」
氷の剣を握りしめたアルシェは回転しながらゴブリンの頭を振り抜き、氷結させた。
「上々だな。リンもアルシェも初めてにも関わらず動きに問題はなかった。正直ゴブリン如きではリンたちの相手には不足だろうが肩慣らしには丁度いいだろう」
アルシェはファイアランスを詠唱しながらその発動直後に次のアイスソードの魔法を無詠唱で発動させていた。MP消費を抑えているためまだ余裕はありそうだな。
「アルシェちゃん…ダブルキャストを使えるの?」
「いや、アルシェはダブルキャストは使えないよ。俺がトリプルキャストを教えているけど、多分あれは多重詠唱だな。ダブルキャストよりは難易度が下がるけど結構タイミングが難しいやつだ」
簡単に説明するとダブルキャストとは同時に魔法を発動させることで多重詠唱は1度目の魔法を放つ直後に重ねて魔法を構築するものだ。タイミングが大事になる多重詠唱は一発目の魔法によってタイミングが異なるし下手な属性を使ってしまうと思わぬ魔法が発動してしまうためちょっと危険でもある。
「しっかしアイスソードって斬った場所を氷結させる魔法だからダンジョンの地面に差し込んだら全部凍り付くのかな」
まあ、コキュートスを使えば全てが永遠に溶けることのない氷の世界に生まれ変わるけど、ここで使う必要は無い。
「リック…あなたは絶対にそれをやっちゃいけないわよ」
ヒルダは何かを察したように俺を制止させた。全く試してみてもいいじゃないか。面白そうだし
「アルシェちゃん、良かったら試してみてくれない?リックがこのまま暴走しちゃうと本気でダンジョンすべてを凍り付かせそうで」
「…わかった」
アルシェの右手にアイスソードが現れるとそれを石造りの床の間に差し込んだ。するとパキパキという音と共に少しずつだが地面が凍り始めている。
どうやら凍らせることが出来るらしい。俺がやらなくて正解だった。
「アルシェ、そのまま凍らせた場所に意識を向けて剣が突き出しているようにイメージ出来るか?」
「…やってみる」
実はこの凍らせた場所から剣を突き出すのは別の魔法である。アイススパイクという魔法なのだがうまく行けばアイススパイクではない別のしかも少ないMPで強力な魔法を作れるのではないかと思ったのだ。
だが、実際はどうだろうか?
俺がアルシェに教えた魔法は威力でいうと上位魔法。それこそ国の戦力として重宝するような1級魔導師が使う魔法よりも殺傷力のあるとてつもないものが出来てしまった。
アイススパイクはただ地面から氷の剣を突き出すだけのものであり、正直跳躍でもされたら回避できる。一方アルシェによって発動した魔法は通常の氷の剣より小ぶりなものだったが凍らせた地面から何十もの数が射出されるものになった。
「…アルシェ、リンそしてリック。これは封印しておいた方がいいかもしれない。4人の秘密にしておかないと恐らく」
「魔術という存在が根本から覆るな。アルシェのようなMPも少なくて小さな女の子にすらこれほどの威力を与える魔法が扱えるんだ…何年も訓練して教える必要も無いし消費量的にも魔法の訓練をしたことのない一般人ですら扱える」
未だに消えることのない天井に突き刺さっている氷の小剣に目をやりながら厄介なものを作ってしまったと後々後悔しているリックである。
それからゴブリンを6体倒し、1mもあろう巨大なスライムに追いかけまわされているリンや女の子らしい悲鳴を上げて俺にしがみついてくるヒルダなどを笑いながら進んでいく。正直30センチもある蛾を見た時は流石に鳥肌が立った。全力で焼却しました。塵も残さないようにね。
一層目は正直に楽勝であった。ボス部屋の前まで来て中を覗いて見てもいたのはゴブリンの上位種であるゴブリンメイジとソードマンゴブリン、シスターズゴブリンだった。
まずゴブリンメイジはRPGでもあるようにただ簡易な魔法を使えるようになったゴブリンで、ソードマンゴブリンは剣の扱いが上手いゴブリンという事だ。
そして一番気持ち悪いのがシスターズゴブリン。双子といってもゴブリンだからみんな同じ顔なんだが、そのゴブリンが布切れを羽織いまるでシスターのように祈りを捧げているゴブリンである。
回復魔法を使い味方を支援するタイプでシスターズというだけあり確実に2体一緒だ。
さて、ボス部屋の扉はある程度開くことが出来たが中に入ったから閉められてボスを倒すまでは外に出ることは出来なくなる。
ただし抜け穴があり、転移系の魔法を使うことは出来ないが自動発動させるタイプのものはエルダーワールドでは使用可能だった。テレポートリングを持たせたのはそういう理由もある。
「準備は…まあ大丈夫だろ…あのくらいの魔物だったらリン1人でも倒せるだろうしな」
「ねぇ?リック私に任せてくれないかしら?狭い所ばっかだから全力でやりたいのよ」
「…それもそうか…いいよヒルダに任せる」
パーティーの訓練とか一切していない。というよりもバランスのいいパーティーとは言い難いし何しろヒルダの大鎌がリンが接近している場所ごと絡め取ってしまうため、ヒルダとリンが共闘することが難しい。
まあ、ある程度だが俺の視覚を共有してやり、ヒルダの動きを逐一見てやるとその動きに合わせてリンが鎌を華麗に回避するという面白い芸当もあったりした。
「ふふふ!さあ始めましょうか…」
扉が閉まってゴブリン達の索敵範囲に入り武器を抜く。しかし、その動きを見せるより速くヒルダが接的し肩から右斜めに切り落としゴブリンメイジの身体が霧散した。
「まだ行くわよ!」
そこから横に回転し鎌の鋭利な部分が綺麗にソードマンゴブリンの範囲に入り込んでおりそれを見たソードマンゴブリンがしっかりと反応を示し、ヒルダの鎌と剣がぶつかり合うや否やその剣ごとソードマンゴブリンを吹き飛ばし円形の壁に激突する。
「ゴブッ!?」
完全に決まった訳では無いらしく俺の視野に写っているHPゲージを見ると赤色のラインまで突入しているものの徐々にだがそれが回復しつつあった。
シスターズゴブリンの回復魔法のようである。ヒルダは面倒くさそうに舌打ちをするが、俺の前ということを忘れているのではないだろうか?
シスターズゴブリンはHPが半分ずつのため片方を切り殺してもすぐに再生できるという厄介な点がある。7メートル以上は離れないがそれでも同時に撃破する必要がある。
「ヒルダータイミングはいつでもいいぞー」
一瞬俺の目を見て合図をすると俺の縮地よりは遅いがそれでもしっかりと敵の目の前まで一瞬で移動し鎌で肉体を切り裂いた。
直後にもう一方のゴブリンの動きが変わるものの俺の縮地とそこから放たれる光速の発勁は見事にゴブリンを爆散させるほどに至った。
流石に血がつく前に消えてくれて良かったものの下手をしたら全身にゴブリンの血を浴びることになったかも知れない。
そして何故かシスターズゴブリンのメダルが落ちないという謎の現象が起きた。
「さて、後はソードマンゴブリンだけかヒルダ、任せた」
「任された」
まあ、もはや一体となったゴブリンがヒルダにかなうはずもなく剣を切り裂かれ肉体も真っ二つにされて絶命した事により一層目をクリアした。
シスターズゴブリンのモンスターメダルが落ちなかった原因は恐らく俺であろう。あの時発勁は間違いなく魂ごと撃ち抜いたと感触で分かった。恐らくモンスターメダルとは魔物の魂を捉えるものなのであろう。そのため、俺の発勁によって魂ごと消え去ったシスターズゴブリンの片割れはメダルになることもなく粉砕してしまったのだろう。ちょっともったいない事をしてしまったかもしれない。
ますます人外じみてる俺の力に苦笑いを浮かべる俺達は二層に続く階段を降っていった
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「こんにちは皆さん。私はオルタ王国王立オルタ魔導学院に在籍しておりますヒルダ・オルネシアンですわ。んふ…堅苦しい挨拶は苦手なので崩してもらいますね。私は学院3年目のいわゆるリック達の上級生という感じかしらね…まあ実力とかの面では劣るけどそれでもムカつくという事は無いわね。リックの実力が桁外れということもあるのかもしれないけど正直にリックのことが大好きよ。身体も重ねちゃった身だしね?
私に灰燼招来という技を教えてくれるために手ほどきをしてくれているし訓練は少し厳しめだけもしっかりと癒してもらってるから大したことはないわ。
学院に入った時私はBクラスという一応貴族たちの派閥による争いが少ない中で比較的魔法に長けているクラスに編入された。私はそこそこ魔法も使えるし武器での戦闘もトップまでは行かないけど上位にランクインする実力はあるわ…使用する武器は大鎌…身の丈以上もある大きな鎌を振り回す姿から異名まで持つ程になったけどそれもあのリックに会うまでのものだったわね。今じゃひとりの男に恋をする乙女ってところかしら?
さて、ナターシャ先生の依頼を受けた私達は生まれたばかりのダンジョンに潜ったのですが一層目の魔物は比較的弱く簡単にクリアできると踏んでいた私が大間違いでした。まさかあのような蛾がいるとは思いもよりませんでした。リックが倒してくれたからいいもののあの蛾…図鑑で読んだところかなりの猛毒の鱗粉をまき散らし人の体に卵を産み付けるという恐ろしい魔物のような気がしたのですが間違いだったのでしょうか
リックには驚かされてばかりですがこうして新鮮な体験をできるリックの周りにいるだけでとても楽しい日々を過ごせていることは間違いないですね。
これからもよろしくお願いしますね…愛しのリックさん?」
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