第18話 襲撃
鬱蒼と生い茂る木々の合間からリンの鋭い刃がゴブリンの首を切り裂く。突然の奇襲に慌てふためくゴブリン達であるがリンのあとを追うようにしてファイアーボールとアースニードルが二体のゴブリンの頭を吹き飛ばした。
「よし、いい感じだな」
洗練された動きと息の合った攻撃を褒めるリック。それを聞いて嬉しそうにするリンとアルシェ。セーラはとょっと恥ずかしいのだろうモジモジと体をくねられる
ゴブリンの集団を倒しそれを剥ぎ取る練習も兼ねておりリンとアルシェ、セーラは普段というか小さい頃からやっていた為出来るのだが俺ができないため三人の可愛らしい先生に教えもらいながらゴブリンの素材を剥ぎ取っていく。
ゴブリンの素材はお金にすらならないようなものしかないがある所だけは高値で取引される。その部位とは睾丸である。ゴブリンの睾丸は精力剤の一種として重宝されており、初心者の冒険者などにはなかなかいい報酬源となる。が、女性の立場からすると動物でも関係なしに自らの苗床にするゴブリンの睾丸など剥ぎ取りたくないため女性冒険者は剥ぎ取ることがない。
男性も似たようなもので、精力剤の一種になると知っているがやはりゴブリンという下等で匂いが酷い部位を剥ぎ取りたくはないので高値ということになる。
変な剥ぎ取り方をすると睾丸に詰まったゴブリンの精液が撒き散らされとてもじゃないが嗅いでいられないような臭さである。
「うげぇ…」
男としてもそこ部位を剥ぎ取る作業は股間が縮まる。三人の教え方が上手いためここまでの狩りで大方は綺麗に剥ぎ取ることが出来て、猪や狼の毛皮や肉なども俺のアイテムボックスの中に収納されている。
一回目の剥ぎ取り作業を行った瞬間に吐き気が酷くて全てをリバースしそうになったが、リン、アルシェ、セーラがいる前で情けない姿を見せるわけにも行かないため無理やり飲み込み頑張って切り分けた。
三、四回目になるとだいぶ慣れが出てくるため胃の中のものが外に出てこなくなり、今ではだいぶ作業の一部となっていて慣れって怖いなと思いながら慎重にゴブリンの睾丸を剥ぎ取った。
「…この足跡は」
俺らが倒したりゴブリンの近くに奇妙な足跡が残っていた。ゴブリンのものではない二足歩行の生物だ。しかもかなり足が大きい。50センチぐらいあるのではないだろうか…。
リンとアルシェも足跡を見つけたのか嫌な雰囲気が立ち込めている。二人からしてみればこれ程嫌な相手はいないのではないだろうか。セーラも流石に気がついたのか引きつった顔をしながらその魔物の名前を口にした。
「オーク…」
オーク。豚の顔をしてでっぷりとした腹…異常なまでに繁殖力が高くゴブリンと共闘することもしばしばあり、女を犯すことに定評のあるあのオークである。
女性の敵とまでいわれるゴブリンとオークであるが、ゴブリンと違いオークは多少の力があり群れで襲われると冒険者としても厄介な相手であり女の場合は酷いものになる。ここにヒルダが入れば王族の姫騎士が「くっ…殺せ」みたいな展開になるのだろうがあいにく俺の女のため渡すわけにはいかない。
リンとアルシェも流石に腰が引けており俺の服にしがみついている。セーラも離れた位置は嫌なのかなるべく俺の近くで行動する。
足跡からすると小規模のようだけどこんな場所にオークがいるとなると他のパーティーが気になってくるな…。
ここより深いところは流石にFクラスの生徒ならば危険だと判断できるが俺らが寝泊まりしているあのログハウスの辺りまで多少の危険はあるが入り込める。そのため、ゴブリンごときでは満足しきれなかったヤツやフラッグの回収のために潜っていってしまう危険もある。
オークなんてのを相手するほどFクラスの奴らは強くない。冒険者ですらそのめんどくさい相手に顔をしかめるのにその実力にも育ってない見習いが倒せるほど甘くはないのだ。
「全く…楽しい遠足だと思ってたのにな」
リックの身体から殺気が迸り始める。それは正しく獣そのもの…喰い殺さんばかりのその瞳にリンとアルシェそしてセーラも握り締めたリックの体をより一層強めた。
すぐにマップ機能でFクラスのみんなの位置を確認する。Fクラスの仲間達の光点が激しく動き回っている所はないようなのでまだオークに襲われているということは無い。
ただ、俺らよりも奥深くに気になる場所があった。間違いなく開拓されたであろう地形と太い木々の位置に家らしきものが密集しているのだ。
うむ…助けに行こうにもその里が人に優しいとは限らない。なおかつ確実にそんな場所で住んでいるやつならオーク位は相手できるだろう。
そう考えてその思考を止めてみた。確かにオークは一体一体の相手は大したものではない…だがこの足跡からすると小規模の群れになる…オーク達の目的がある程度達成されている状態だとすると村が襲われておりなおも危機的状況にある。
オークの大規模な戦闘は危険度がかなり高くなる。感情の起伏が少ないオークにとって死とは怖いものではなく傷ついても突き進む。
つまり死にかけても襲い掛かってくるのだ…。人間と違い怖さを知らないオークが何百も群れで来られたら多少の規模の軍隊では相手にならない。
人間というのは感情が様々だ。例えば隣にいた友人が目の前で殺されたら怒る者…悲しみに嘆く者…狂ってしまう者……自暴自棄になり自殺を図ろうとする者……たった1人を失うだけでこれらのような感情が人間には備わっている。
たった数人が戦闘で命を散らしてしまっただけでもガクンと士気が下がるのだ…それだけ魔物と人間の差がある。どんなに技量や人数で上回っていようが恐れを知らない魔物に対してあまりにも人というのは弱い者なのだ。
結論からいうと助けるべきだと俺は思う。かなり危険な状態なのは間違いないため封印されているステータスすべてを解放するがまあ、単純計算するとオーク相手に大した時間はかからない。
数千万とかいう群れでも倒す自信はあるがそこまでの感じじゃない。
「三人ともちょっとだけ本気を出してくるわ」
リンとアルシェは俺がどうしたいのか、何をしたいのかすぐに察したようで頷き、俺を送り出す。
リン達を強制的にログハウスに転移させるとある方角に向けて俺は歩き出す。大森林の最奥地。いや迷いの森と呼ばれている原因であるエルフの里。エルフの秘技により魔物すら迷うその術によって永遠に近い森に見えるだけで実は大したことのない森林地帯なのだ。
つまりオーク達が現れたのは間違いなく奥地にあるエルフの里に何かしらあったとそういう事だ。
そして、森のあちこちから戦闘の音が響き始める。恐らく既に戦闘が始まりつつあるのだろう。冒険者が入るから何とかなるだろう…ナターシャも動いているし安心だろうが間違いなくヤバイのはエルフの里である。
オークとエルフって言ったらアレしかないのだ。
12秒で最奥地に到達すると幸い…エルフの里がオークに襲われている最中に到着することが出来てギリギリだが間に合ったようである。
エルフの女性達が2m近いオーク達と戦っているが奇襲と包囲されたその里は既に限界を迎えつつあった。傷ついたエルフの女性が里の中央で治療しているが酷く人が多く手が回っていない。
オークたちの中には不意をついてエルフの女を切り裂くものもいてかなり危険な状態であるのは変わりない。
「失礼、エルフのお嬢さん。手を貸してあげましょうか?」
里の中心に転移して治療をしている16歳位のエルフに話しかけるととても驚かれた顔をするが俺に敵意がないこととその輝くオーラを感じ取ったのか頷く。
確認をとったのは里に住まうエルフというのはとても高貴な存在らしくハイエルフ程ではないものの人間の施しを受けるのを嫌う傾向がある。
非常時だから多少のことは許されるがエルフに触れようものなら即刻首を切り落とされてもおかしくはないらしい。
「どなたか存じ上げませんが助かります」
見たところざっと50人位の怪我人。流石に1人ずつは面倒だ…。
「オールライトヒーリング!」
範囲回復魔法であるライトヒーリングの最上位。全回復をさせるオールライトヒーリングはエルフのお姉さんたちに凄く驚いた顔をされたが自身の体がうごけるようになったのを確認したりすると俺に感謝を言いながら戦地に向かっていく。
一人一人回復させるのも時間がなさそうだったし、なにしろこの戦況を覆す必要もあったためどうしても使わないといけなかったが流石に不味いかなと思っている。
こちらではヒールですらとても珍しい治療であり、ヒーリングなど使えるものは本当にごく僅かであるらしいのだ。そして俺が使ったオールライトヒーリングは伝説に残る人物が使ったといわれる最終手段の一つ…とリンに教わった。
それを惜しみなく使ったため何かしら大変なことになりそうだが…治療師の嬢ちゃんには口止めさせる事を誓わせ戦場に向かう。
オークの軍勢は何千という軍隊で単に繁殖時期なのだろうがエルフの女性からしてみればたまったものではない。あれほどの数で攻められてはたちまち娘や年端も行かない少女達も餌食になる。
里の入口まで走ると防戦を強いられているエルフ達が俺に向かってなにやら叫んでいるがそれを気にしているほど悠長なほど暇ではない。
「…イモータルブレイド!!!!」
傍に落ちていたエルフの剣を手にしオークの群れに放つ魔力の篭った武技…イモータルブレイド。魔法によって延長された青く輝くその刀身で横に切り裂く技であり、通常の50倍にまで引き伸ばされたその青い刃によって前方にいたオークの集団の上半身と下半身がおさらばした。
「あと600…」
流石にエルフの里を包囲しているオーク達の相手をしないといけないためオークの持っていたボロボロの剣を掴んで、二刀流になりながら里の周りを円を書くようにしてオークの肉を断ち切っていく。
首を裂き、腹腸を素手で引きずり出し、オークほどの巨体を投げては叩き潰す。
棍棒でオークの頭を叩き潰し、使い物にならなくなった棒をオークの鼻にぶち込んでそのまま膝で蹴りあげ、回転をかけた回し蹴りでオークの巨体を蹴り飛ばす。
槍を拾い、目の前にいるオークの驚愕とした顔を尻目のに5体刺しそのまま腕力の限りを尽くして振り回してオークを蹴散らす。肉と肉がぶつかりあって肉片が飛び散るなか未だに息をしていたオークの頭を踏み潰しオークの刺さったままの槍を投擲しさらに2体を串刺しにして木に差し込まれる。
鬼のような攻撃とその美しいほどの顔が真っ赤な鮮血に染まり肉片と臓物などで描かれていくリックの動きにエルフの女性達が攻撃の手をやめその姿にすべてを奪われていた。
「あと200!!」
ここまで来るとオーク達も危機感を覚えたのか撤退し始めるがそれを許す俺ではない。
だが、その体が動くことはなく、後ろから5人のエルフご俺を押さえ込んだ。
「もう十分です!!人間の方…収まりください」
どうやら俺も知らない間にかなり熱くなってたみたいだな。よくよく見るとオークの群れもほぼ全滅しており、辺りには真っ赤に染まる木々や肉片を残すだけになっている。
激しい闘争本能がゆっくりと鎮火していく…。俺自身この本能を抑えることがとても難しいのだ。燃え上がるような戦闘になるとどうしても興奮したような感覚に陥り殺戮の限りを尽くそうとする。
「…すまない。熱くなりすぎた…その前に身体を洗わせてくれないか?オークの血を洗い流したい」
血塗れの肉片まみれの男と会話するのも嫌だろうにエルフの嬢ちゃんたちは俺をうっとりとする表情で見てくるのだが、流石に俺もこのままだと気持ち悪い。
エルフの人に案内してもらった冷たい小川で血を洗い流していると6名のエルフが俺の体に抱きついてその身体で汚れを落としてくれているようである。
肉付きもよく女の子らしいふんわりとした体つきだが間違いなく戦い慣れした筋肉が隠れている。だがそんなことを気にする余裕もない。6人とも金髪美女エルフに囲まれて身体を洗われていたら変なことを考えることも出来ないだろう。
「人間の方にこうやって差し上げるのは初めてなのですがどうですか?」
「ああ、最高だよ…すごく気持ちいい」
「ああ…素敵…」
俺の腹筋に頬を擦り付けて幸せそうな顔をするエルフや頭についた血を洗い流してくれるエルフの柔らかな胸が後頭部にぶつかったり色々な柔らかな部分を堪能するリックである。
多少の時間はかかったもののエルフ達によって綺麗にされたリックはエルフの里の長と対面していた。というか土下座されていた。
どうやら俺のおかげでエルフの里全員が救われ、処女を散らすことなく生き延びることが出来たのを大変感謝しているらしい。エルフの女性というのは将来に決めた男性と契を結ぶことが一番の幸せであり、オーク達に体を犯されてしまうとそのオークを愛さなければならないと行けなくなるらしい。
そしてエルフの里に入ってきた俺によって救われたエルフの里の全員が俺の嫁として志願しているらしいのだ。
彼女達としてもあれほどの活躍をしたリックの子種を欲しており、洗ってくれた6人のエルフもまた我慢ならなくて襲いに来たというわけか…。
強い人の女になれるというだけでエルフたちにとっては御褒美に等しいものであり、今となっては里を救った王子様。汚らしいオークから全員を救い、怪我をした者を癒してくれたもはや英雄である。
俺としてはとても嬉しい事なのだが、このエルフの里だけども数百人が住んでいる。婚約をしているもの以外でも50人を超えるほどの美しいエルフたちが誘惑してくる。
「だがなぁ…俺としてもみんなを相手にしてやりたいんだが……まあいいか」
族長に少し出掛けてくるがすぐに戻ってくると伝え、三人の女の子を連れてくると言い残し転移してリン達をエルフの里に連れてきた。
リンとアルシェはここまで大勢のエルフと出会ったのは初めてらしくとても驚いていてセーラはハーフエルフということもあり少し怯えているものの俺の仲間ということにしたらエルフの人たちも歓迎してくれた。
「さて、可愛らしいお嬢さんたち…お腹も空いていましょう。お食事を用意しておりますのでこちらに」
リンとアルシェとセーラは戸惑いながらも俺が頷いてやるとお腹がすいたのだろうその人に付き添われていく
リン達と同い年位のエルフの子供たちと、その付き添いのお母さんが仲良く別の家に移動していく。
小さい子がいなくなったこのエルフの里の族長の家に一日中女性の喘ぎ声が里中に響き渡っている事になるのだが、リックとエルフのお嬢さんたちによる酒池肉林状態となった場所にはリン達が入ることは許されなかった。
族長の説明によるととても大切な儀式をリック殿と一緒に教えており邪魔が入ると危険ということになっているらしいがリンの鼻には間違いなく嗅ぎ取れていた。
女がだす魅了の匂いと大好きなリックのヒルダさんと朝帰りしてきた時のあの男の匂い…。
「…っ…はぁヤベェな…」
オークとの戦闘よりも激しい動きにさすがのリックも息を切らして疲れ果てていた。
まる2日を寝ることもせずにエルフたちの相手をしていたためもはや体力の限界を超えて獣のように全員を相手にしたのだ。体中が悲鳴をあげ、エルフの嬢ちゃん達というベッドに倒れ込んだ。
「お疲れ様です…リック様」
リンが扉を開けて俺の元によってくる…このむせ返るような匂いの部屋で平気な顔をしてられるな…。だがリンがここに入ってくることは族長からダメと言われていたが流石に分かるか…。
優しくリンの唇にキスをしてやり彼女の身体を抱き締める。ちょっと苦しそうにするが汗のせいで男くさくなった俺の匂いにやられているのか尻尾が揺れつつも俺の匂いを嗅いでいるみたいだ。
「癒されるな…」
「…ふふ…リック様。すごくくさいです」
「嫌じゃないんだろ?」
何も言わずともリンの顔を見ればわかる。もう少しこうしていたいな…。
リンの気持ちを理解していながら手を出さないのは、その幼さゆえであるがアースガルドとは別の世界から来たリックにそれを押し付けるというのもまた別なのでリンとしてもお願いできない。
恥ずかしさと自分が痴女と思われてしまうのではないかという葛藤があるのだろう。大好きな男に抱かれたいが為に奴隷という身分でお願いするなんてはしたない。
そんなことをリックの胸元で考えているとアルシェが部屋に入ってきた。いつもの無表情であったが何故か気分が悪そうな顔をしつつリックに静かな罵倒をはきかける。
「…汚い」
確かに足の踏み場もないほどのエルフの女達が床やベッドの上で寝ており、その全員が素肌を晒しているのだ。
未だに残る行為の数々を見れば普通はアルシェの言葉の通りに汚いだろう。
「ヒルダが見たら激昂するかな…」
少しばかり怖くなってきたリックは身震いをしてアルシェに懇願する。
「お願いしますこの事はご内密に。アルシェお願いだ…まさかこんなことになるなんて思ってもなかったんだよ…結果としては美味しかったけどさ。ヒルダに言ったら殺される」
「…お兄ちゃんの態度…しだいで……許すかも」
かも…なんですか。アルシェの無表情が少し崩れて悪巧みをしているような笑みを浮かべているが確実にアルシェに一本取られた。
態度次第で許すかもという事はアルシェの気に触ることをしてしまったり怒らせてしまったらヒルダにこの事を喋ってしまうということだ…だがまた何もやらなくても口にしてしまうということのため今の状態で一番権力の高いのはアルシェである。
どんな命令でも聞かなくてはならない。
まるで小さな女王様だ…
生ける伝説異世界に立つ Gs提督 @Gsteitpku
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