あの丘のオーベルジュ

全体的に静かで、流れるように進む話の中に、繊細な料理がくっきりとした彩りを添えていて、フルコースを食べに来た時のような整った気持ちになります。

存在する空気感が綺麗で、お話に吸い込まれていきますよ。

切なさと滲むような優しいさが好きな人は、ぜひ読んで欲しいお話です。

後、料理好きな人は、絶対見るべきです！


ひとつ問題があるとすれば……

料理があまりにも美味しそうで、お腹が空いちゃうこと。


日向風さんの、料理描写は飯テロです。

最初読むと、いい話だったなぁと、感じさせてくれて、再度読むと涙が出そうになりました。帰り途中だったので我慢できましたけど🥺

誰しもが生きてきた中で一度は感じたことのある悩みに、とても素敵な回答を与えてくれたなと思います。

お魚調理の描写が細かくて、こんなところ嬉しがるの私の他にいるのかしら？と少し心配にはなりましたが（笑）

人の深い優しさが感じられる、とてもいい物語でした。
ぜひ皆さまにもお薦めしたい良作ですよ✨

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（447文字）

何気ない食事でも、それは食材が料理する人によって手を加えられたもの。
美味しいと思ったら、その一言をいってみましょう。

そのことで、誰かが救われるかもしれませんから。

そんな優しい気持ちを覚える掌編です。

調理師学校に通う真希が先生に紹介されて訪れた元オーベルジュ（フランス発祥の宿泊施設を備えたレストラン）。そこの料理人との心温まる飯テロ短編です！

隣で作ってるところを見ているような臨場感。

作ってる途中に『自分なら必ずする事』を料理人がしないのですが、その謎が解けた時おおおおお！となりました。

もう匂いがこちらまでしてきそう。
音がこっちまで届いてきそう…。
というか……してきます！！

お腹がすくよーー！！

料理とは何？
主人公が行き着いた答えがとても温かかったです。

この料理人の、そして真希の料理を食べたい…！

読んだ後の食事は魚に決定になります。
そのつもりで呼んでください…続きを読む

読んでると、おいしい料理を食べたくなりますが、
こんな高級な食事には最近ありついていないなと
日向風さんがXにあげた写真をみてお腹を満たすのでした。

わたし自身、

・食べることが好き
・プロの料理人さんをリスペクト
・魚を捌くのが趣味

…なのもあり、物語の世界に惹き込まれてしまいました。

丁寧な調理工程や、お料理の描写に感動したのはもちろんなのですが、
料理人を志す真希が、料理人をやめた「彼」から学び取ったこと。

それを短編の字数で、静かに美しく書ききっている作者さんの技量に脱帽です。

とかく長い描写が敬遠されがちな時代ですが、本気で取り組んで知識がある方が書く文章は、それだけで読ませる力があるなと感じました。
いやあ、ほんとに美味しそう！

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（483文字）

「“普通に”美味しい」
料理人を志す主人公が、友人からふと告げられた一言。

「“普通”って、なに？」
真剣に向き合っているからこそ、何気ない言葉が心の奥にしこりとなって残る。
そんなリアリティあふれる冒頭に引き込まれ、 中盤では息を呑むような衝撃を、そして終盤には希望の光を見せてくれます。

海を望む丘、あたたかな陽光、赤く透けるワイン、新鮮な魚介――
何度も読み返している物語ですが、読むたびに胸を満たすのは、 色彩のきらめきと温もり、そして未来への小さな希望です。

好きなことに打ち込んでいるはずなのに、いつの間にかやりがいを見失ってしまった。
何のために続けているのか、わからなくなって…続きを読む