文字に味がついている、是非とも読んでおきたい作品です。

 調理する過程や、話しながらも手を動かす様子など、作業の動線が滑らかで自分が調理しているようにさえ思えました。

 その様子は丁寧ですが説明を読んでいるという印象はなく、繊細な描写と組み合わさることで、目の前にキッチンの風景を浮かびあげるために機能しています。

 また、それらの工程で、エマンセやシノワなど知らない言葉を知れたのも嬉しいです。
 フランス語が混ざることで抱く「料理人にとっての日常があるんだろうな」という感覚は、自身が体験したことがない環境への没入感を高めてくれました。

 一貫して視覚的な表現が本当に巧みで、主人公の真希と共に、その様子に見惚れている間に、料理は出来上がります。

 食材と料理人が料理を作り、料理とロケーションが素敵な空間を作る、さらに、その空間と会話が素敵な時間を作り出す。

 料理が完成した後の味を伝えてくれる部分も読んでいて楽しかったです。

 そして、素敵な料理に舌鼓を打っていると、物語は突然進み始める…。

 是非ともこの素晴らしい物語を他の方にも味わっていただきたい。
 そんな気持ちになる、素敵な作品でした!

その他のおすすめレビュー

わたねべさんの他のおすすめレビュー142