それは誰かに迫りくる

昭和中期。ルポライターの「私」は奇妙な体験をした人から様々な話を聞く。それは知ってはいけない世界に触れる事だった。
ある取材では、海に魅入られた男を。ある取材では、奇妙な声をきいたというサナトリウム患者を。またある取材では、事故に遭って以来「夢のような街」を見るようになった少年を――。
「私」は時に各地を飛び回り、常識では理解できないような体験をした人々からエピソードを聞き、読み物として仕上げていく。
やがて「私」は、自らも奇妙な体験をするようになる。それだけでなく、常人ではできないようなこと、ありえないようなことができる、と自覚していく。
「私」は自身に起こっている事象を淡々と受け止め、また次の取材へと赴いては、それを記事に仕立てていく。
――「それ」は誰かに迫りくる。
その「誰か」の中に…続きを読む