第46話 ダンジョン崩落の危機

■沖永良部島 大樹ダンジョン 闇の迷路 セーフエリア


 セーフエリアは広い場所で、今までの暗い迷路とは違い天井に水晶なのか明りが灯っている。

 根や弦が部屋の中に張り巡らされているうえに、床も固い石のようなのでテントが上手に立てられそうもなかった。


「ここは木の中なんだよな……なんで、こんな石造りなんだ?」

「ダンジョンの不思議ですよね」

「全くだな」


 仮眠くらいはできるだろうと寝袋を人数分だけ出して俺は食事の準備を始める。

 動いたからにはしっかり食べるのが俺の流儀だ。


『あーあー、サグル―聞こえるかー?』

「ああ、イカルか。聞こえてるぞ、セーフエリアは電波が届くようだな」

『そうか、3時間くらい通信が途絶えていたから心配だったぞ』

「3時間は結構かかったね~。外の様子は大丈夫か~い?」


 イカルと俺の通信に食事の準備を代わってくれようとトーコがやってきた。

 俺は手を止めて、イカルとの通信に集中する。


『九州方面にワイバーンが来ているけど、熊本城あたりで冒険者達が防衛網を作っているようで何とかなってる。グリフォンに乗って戦う姿はすごいぞー』

「グリフォンか、もう何でもありだな……」

「召喚系のスキルは全然みつからないからね~。潜在能力としてもちょうどいてくれて助かったよ~」

「ちょうどいてくれて……か」


 トーコのいうことももっともなんだが、俺はダンジョンの仕組みといい何とも言えない不自然なものを感じていた。

 洞窟は自然が作るものだが、遺跡は人工物である。

 同じ探検でも違う趣があるように、俺はこのダンジョンをはじめとしたさまざまな物事にの気配がした。


「考えすぎか……」

『どうしたんだ? サグル―』

「なんでもない、今外はどうなっている?」

『サグル達がダンジョンに潜ってから1日たってお昼ぐらいだねー』

「俺の腹時計も悪くない感じだ。今からちょうど飯の時間だったのでな」

『しっかり食べて、休んで残りを頑張ってくれよー。僕ちゃんもこっちで情報収集と整理をしていくよ』

「助かる」


 イカルとの通信を終えると、トーコがホカホカのミリ飯を渡してくる。

 今日は中華飯のセットだ。


「話は聞いていたけど~。コンを詰めすぎないでね~。キミがワタシ達の希望なんだから~」

「そんなに大きな話でもないだろ? そういうのは自衛隊がやるべきことだ。俺は勇者とか英雄とか、そんなのとは無縁だよ」

「サグルさんは私にとって英雄ですよ! カッコイイですし、強いですし、自信もってください!」

「織香、自信の問題じゃなくてだなぁ」


 どう伝えたらいいんだろうかと思っていると、ダンジョンが大きく揺れる。

 地震というよりかは、外から攻撃を受けたようだった。


『サグルさん! 休憩は中止です! 米軍がダンジョンへの直接攻撃をしてきました! ワイバーンで撃墜された腹いせかもしれませんが急がないと崩壊に巻き込まれます!』 


 小松原三佐からの言葉を聞き、俺は中華飯をかきこむ。

 飯くらいゆっくり食わせてほしいんだが、全くどうなっているんだ……。

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