第13話 ソロとパ―ティの違い

■大岳ダンジョン 20層


『おーい、サグルー。いったん休憩しろ。両脇の美女二人がぐったりしてるのが配信されちゃってるぞ☆』


 イヤホンから聞こえてくる声に俺は足を止めた。

 急いで攻略したいという気がはやり、一気に走り続けていたのである。


:うっ……気分が

:これが、ドローン、酔い

:<しばらくお待ちください>


 視聴者も同じようで、俺はついついやりすぎたことを反省した。

 モンスターも最低限倒せるときは倒すくらいで、逃げの一手だったのも揺れで酔った原因かもしれない。


「鐘丹生先輩、姫野……すまない」

「うきゅぅ~」

「うにゃ~」


 俺の謝罪に人間の言葉ではない返事がきた。

 これは不味いと思い、俺は二人を休ませるために〈収納〉からテントを出して急いで組み立ててる。

 

:これ早送りとかじゃないのか?

:ああ、リアルタイム配信だ

:人間、素早く動くと分身してみえるものなんだな……


 コメント欄に反応をしたいが、今はテントで二人を休ませるほうが先だ。

 こういうときの処置を間違うと最悪のケースもあるのが探検というものである。

 テントに銀色のマットを引いて、二人をゆっくり寝かせた。


「外を警戒しつつ、食事の準備をするか」


 朝から走りっぱなしだったし、【Dphone】で時間を見れば10時を過ぎたところである。

 3~4時間で20層までこれたが、俺が抱きかかえての全力ダッシュでの結果なので、ここから先はゆっくり進む方がいいだろう。


「ソロなら俺だけでいいんだが、チームは大変だな……」


 今までソロで洞窟に潜ったり、ダンジョンにも入っていたがパーティでの行動の経験はほぼないので、難しさを感じていた。


「今日はレトルトカレーを作るぞ。カレーは肉も、野菜も、炭水化物も一気にとれるから探検家の必需品だ。カレー粉だけでもいろんな肉が食えるから、常備しておくといい」


 一応配信は繋がっているので、俺はドローンに向かってこれからやることを説明する。

 反省をしなくちゃいけないが、今やることではなかった。


:水を沸かせばレトルトカレーに湯せんご飯も食べられるから水の確保大事。

:〈収納〉欲しいー!

:【得る借り】で買えば?

:ン百万なんて、年収だよ。無理ポー。


 コメントでは俺の所持しているスキル〈収納〉についての話をしていた。

 普通に買えばそれだけかかるのだろうが、ドロップでスキルカードが出るのを待つのは苦行である。


「〈収納〉はスライムゼリーを食べて手に入れた。だから、スライム系のモンスターが持っているはずだ」


:【悲報】全ダンジョンのスライムが消滅する恐れ

:すぐにリポップするから、消滅にはならないんじゃね?

:たしかにぃー!

:というか、食べて手に入れるって、スコップ師匠の【潜在能力】?


「俺の【潜在能力】は……敵だ」


〈収納〉からいつものDAI製のスコップを取り出し、ひゅんひゅんと回してみる。

 修理したお陰で、軽々と扱えるし強度もありそうだった。

 火をつけたまま立ち上がると、近づいてきた藍色のスライムにスコップを両手でもって構える。


:スコップ師匠、マジでかっこいい。

:バリってるバリってる!

:スコップのはずなんだけど、本当にかっこいいよな。

 

 とびかかって来た藍色スライムをスコップの面でもって弾く。

 パァンと藍色スライムが爆ぜて、消えていった。


「水が沸騰したら、飯を温めなきゃいけないんだ……とっととと」


 鍋をこぼさせないように後ろのテントに向かって移動していくスライム達をかたっぱしから倒していった。

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