第33話 ブリーフィング

■鹿児島県 沖永良部島(おきのえらぶじま) 大樹ダンジョン入口


 次元の裂け目みたいなところを通った俺達は一瞬で沖永良部島にたどりついた。

 写真でみただけだが、周囲の形式に見覚えがある。

 ただし、目の前にある巨大な木を覗けばだが……。


「でっかいなぁ……これがダンジョン?」

「そうです。ダンジョン庁の登録では大樹ダンジョンとなっています」


 俺が大樹を見上げて呟いていると、後ろから凛とした声が聞こえてきた。

 振り返れば、迷彩服を着た女性が立っている。

 

「今回の作戦の指揮を務めさせていただきます小松原美鈴三等陸佐です。よろしくお願いします」


 握手を求められたので、俺も握手で答えた。

 年齢は俺よりも上だろうが幹部自衛官にしては若い……若作りという意味ではなく30前後くらいにみえる。


「ああ、年齢が若いと思いましたか? 幹部であるのは現場での権限の問題で特例でなっているんです」


 俺の視線に気づいたのか、小松原三佐が笑顔で答えてくれた。

 背は少し小さいがまとっているのは強者の存在感である。


「暮明探……です。こちらこそ、よろしくお願い、します」

「ああ、口調は楽にしていただいて大丈夫ですよ。冒険者が荒っぽいのはわかっていますし、面倒な人との付き合いにも慣れていますから」


 ふふふと微笑んでいる小松原三佐の後では自衛官が作業を続けている。

 驚いたのは指揮車両という奴なのか、車も入ってきたのだ。


「臨時ですがここにキャンプを作り、ブリーフィングを行います。現状の確認とこれからのことについてお話します」

「なんか、すごくできる人ってオーラがでていますね」


 こそこそと近づいて話しかけてくる織香は俺も素直に頷く。

〈潜在能力:超鑑定〉で小松原三佐を見てみたが、ステータスは高く、スキルの所持数も多かった。

 この人を怒らせないでおこうと心に決める。

 

■鹿児島県 沖永良部島(おきのえらぶじま) 大樹ダンジョン前 簡易キャンプ


「それではブリーフィングをはじめます。急遽決まった作戦なので、粗は多いと思いますがこのメンバーであれば臨機応変にいけると信じています」


 小松原三佐が語りだしたことで、場が引き締まった。

 できる女の印象は間違っていないようである。


「調査の目標ですが、この大樹ダンジョンを登っていくことになります。理由は上空にワイバーンが飛んでいて、国土への影響がでています。法的に領空侵犯にあたるかも微妙なラインなので、首謀者がいるのであれば捕縛か退治をする必要があるというのが藤堂長官の判断となっています」


 ヒューと口笛が鳴る。

 迷宮令嬢が連れて来た仲間のゴリマッチョの一人だ。

 黒人で元軍人らしい。

 わかりやすい風貌と雰囲気を醸し出していた。


「何か質問は?」

「んじゃあ、オレから一つ」


 小松原三佐が尋ねると、口笛を吹いた黒人が手を上げた。


「”不動の壁”ロドリコだ。報酬はどうなるんだい?」

「自衛隊の方から報酬を出すのはいろいろと問題がありますが、皆さんが獲得したものを取得して売却するのを止めません。スキルカードも同じです」

「そいつぁ、ヤル気があがるねぇ。お嬢もそうだろ?」

「はしたないから、その辺にしてくださいな」

「へいへい」


 ロドリゴ以外は質問がないことを確認をした小松原三佐はDphoneを取り出すように全員に伝えた。


「自衛隊で使っているトークアプリを使ってのダンジョン内での通信を行っていきますので、指定のものをダウンロードしてください」

「わかった。そういえば、ダンジョンの配信をしてもいいのか?」

「あ、私もそれは気になっていました」

「配信は行っていただいて大丈夫です。ただ、内容次第ではアーカイブ掲載をやめてもらうこともありますので、ご了承ください」


 小松原三佐の言葉に俺と織香はうなずき、準備を整える。

 沖永良部島で平和な洞窟探検をするためにも、大樹ダンジョンをクリアしようと心に決めた。

 

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