第28話 ダンジョンコア
■奥多摩 大岳ダンジョン 90階層
怪物を食べたことで、倒して〈自己再生〉のスキルカードとヒュドラ肉というのを回収して、90階層に降りた。
先ほどまでの神殿とは違い、神秘的な空間が広がっている。
円筒形の空洞に螺旋階段が壁沿いに続いてしたに降りている。
天井には水晶なのか、きらきらしたものがあって部屋の中は明るかった。
その部屋の最下層の中央にはルービックキューブのような線の入った立方体が空中で回っている。
ブルルルと俺の胸ポケットが振動した。
「おわっ!? 【Dphone】! すっかり存在忘れていたな……」
激しい戦闘が続いていたこともあり、存在をすっかり忘れていた携帯デバイスを手にして通話を始めた。
『サグル! よかった、つながった! オリちゃんにも連絡しなきゃ……』
「イカルか、なんかずいぶん話していない気がするな」
『巨大亀を倒してからは……4時間くらいか? 途中でドローンが壊れたのか配信が止まって本当にびっくりしたぞ』
「ああ、急いでいたからな……それで織香やトーコ先生は?」
『今30階層だと思う。トーコ先生の傷がやばくて動かせそうにないから、待つそうだ』
「わかった。こっちの状況を確認出来たらすぐに行きたいが、時間の問題だな……」
俺はイカルに話をつけながら、先ほど手に入れた〈自己再生〉のスキルのカードを思い浮かべるが全力で戻ったとしても60階層をすぐにいけるとは思えない。
『サグルは今どこにいる? 何が見える?』
「おそらく最下層だ。ルービックキューブみたいなのが部屋の中央に浮いてる」
『もしかして、漫画とかでよくあるダンジョンコアかもしれないな……調べてみてくれ、ダンジョンコアならダンジョン内を自由に行き来できる機能があったりするんだ』
「わかった! すぐにやってみる」
俺はイカルの言葉に希望を見出して、急いで螺旋階段を駆け下りた。
最下層につくと、思った以上に巨大なキューブが浮いている。
「さわればいいのか?」
くるくると回転しながら浮いているキューブに俺が触れるとシステムアナウンスが聞こえてきた。
〔大岳ダンジョンのダンジョンコアへのサグル・クラガリの第一討伐者登録を行いました。ダンジョンマスターとしての管理機能が解放されます〕
「イカルの言葉があっていたようだな。どうやって使うんだ?」
そう思っているとウィンドウが表示され、使えるものを選べるようになっている。
ダンジョンマスターとしての管理機能というのがいろいろあり、その中に転移機能があった。
〔
再びアナウンスの声が聞こえてきて使い方が分かった。
これならばトーコ先生を助けられる!
「30階層へ転移だ」
空中に俺は伝えると足元に幾何学模様が広がって体が浮くような感覚が俺に広がり、次の瞬間に光が目の前に広がった。
■奥多摩 大岳ダンジョン 30階層
光が消えると、俺の目の前には倒れているトーコ先生の手を握っている織香の姿がある。
「織香! トーコ先生!」
「サグルさん!? どうやって!? 邪神を倒すの諦めたんですか!」
「説明は後だ、これをトーコ先生に使う!」
「〈自己再生〉のカード! それなら、先生は!」
織香が握っているトーコ先生の手を離し、俺はその手にスキルカードを握らせた。
スキルカードが光ってから消え、トーコ先生にスキルが習得されたことを示す。
出血していた部分から血が吸い込まれるように消え、青白かったトーコ先生の顔に生気が戻ってきた。
「よかった……トーコ先生も、サグルさんも……」
「ああ、なんとかな……だが、あんなのがいるんじゃダンジョン攻略も甘くないぞ……その分、最後の部屋は綺麗だったがな……あの部屋を見るためなら、他のダンジョンも潜りたくなる」
「ダンジョンの一番奥に潜ったんですか!? 映像は!? 残念ながら、ドローンが壊れてな撮影できてない」
「もったいです! 今度は私も最下層までいきますからね!」
「う~ん、けが人の前でいちゃいちゃしないでくれるかなぁ~?」
俺が織香と言い合っていたら、調子の戻ったトーコ先生が体を起こして文句をいってくる。
「ダンジョンの奥まで戻った証をみせてやろう。手をつないで」
俺が両手を差し出すと片方を織香が、片方をトーコ先生が握った。
「転移! 1階層」
声を出すと、3人を包む幾何学模様の魔法陣が広がり、俺達はダンジョンの1階層の入口まで転移する。
織香も、トーコ先生も目の前で起きたことにポカーンとした顔で見つめてきた。
「スコップ師匠! 今のって転移!」
「ダンジョンの一番奥に行くと転移できるようになるの!?」
だが、それらは入口に集まってきていた冒険者達からの声でかき消される。
俺達のダンジョン攻略を配信でみて、途中で配信が止まり心配してきた人が集まっていたのだ。
「大岳ダンジョンを攻略したぞ!」
腕を突き上げて俺が宣言すると、ギャラリーが盛り上がる。
その光景にフラッシュがたかれ、エベレスト登頂成功したりした探検家たちの気持ちが分かった。
ああ、俺は心の底から探検家なんだと改めて思うのだった。
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