探検サークル存続のためにダンジョン配信をはじめたら、人気のJKインフルエンサーを助けてバズってしまった件
橘まさと
第一章 大岳ダンジョン編
第1話 ダンジョンで出会いが起きるのは間違いだろうか
■奥多摩 大岳ダンジョン 1階層
暗いダンジョンの中を探検家のような恰好で俺――暮明 探(クラガリ・サグル)——は歩いていた。
ぶつぶつとつぶやきながらも、寄ってくるスライムを蹴飛ばす。
ぷよんと跳ねて転がっていくスライムに目をくれずにダンジョンの奥を目指して俺は次の階層へ進んだ。
配信画面を開くが、コメントも同時接続数も0のままである。
「浅い層の配信じゃダメか……やっぱりRTAとか目立たないとダメなんかなぁ?」
【Dtube】と呼ばれるダンジョンの様子を配信できるプラットフォームサービスが、2024年1月から始まっている。
すでに人気Dtuberも生まれており、ダンジョン関連商品を販売するアウトドアショップ【DAI(Dungeon Armament Inc)】のCMキャラクターになっている人だっていた。
俺? 俺は2024年8月現在、チャンネル登録者数も友人1人だけという底辺配信者である。
——成果を夏休み終了までに出さないと、公認サークルから外して、活動資金は打ち切ります。
学生課のお局様(通称)にそう言われて、成果発表のためにダンジョンの攻略配信をしようと4月から始めているが、配信業なんてやってことないし動画もろくに見てない人間なので、手探りで配信をし続けている。
この夏休みの間になんとかしたいと思い、奥多摩のダンジョンを攻略しようとやってきたのだ。
本当なら、まだ完全攻略のされていない【上野地獄門ダンジョン】に挑むのがいいんだろうが、人が多くて入場制限がかかっているし、俺は冒険者というよりかは洞窟探検家である。
「奥多摩まで来たんだから、成果の一つでも持って帰らにゃな」
俺はゴブリンを
◇ ◇ ◇
■奥多摩 大岳ダンジョン 11階層
ダンジョンドローンを起動した私は、撮影したボス戦のチェックを行う。
赤い自慢のポニーテールが揺れて、可愛く映っていた。
武道家系の装備で整えているので、動きやすさを重視したスパッツにスカートスタイルなのは、視聴率がいいから。
配信画面にいくと、待機者は10万人。
今日もいっぱい来てくれていてうれしい。
さぁ、ボス戦後の休憩も終わったので、配信の再開をしようと私は立ち上がる。
「みんな、こんにちはー! みんなの”織姫”姫野 織香です! ダンジョン探索再開していくよー♪」
:休憩お疲れー
:再開ワクワク♪
:休憩中だって配信しててもいいんだよ?
「休憩中はさすがにダメーだよ。今日は20層のボスを倒すところまでやっちゃうよ♪ 作戦は~」
:ガンガン行こうぜ!
:ガンガン行こうぜ!
:ガンガン行こうぜ!
チャットで大量に流れる作戦コールに私は満足に頷いてパンチのポーズをとった後、元が鍾乳洞だったダンジョンの内部を進んだ。
滑りやすい部分はあるものの、DEXとAGL、STRにバランスよくステータスを割り振った私は難なく障害を越えていく。
「はぁっ!」
沼地トロールと呼ばれる2mくらいの人型のモンスターも掌底を叩き込んでから、
再生できるモンスターといっても粉のようにバラバラになっては無理だよね♪
:相変わらずかっこかわいい!
:織姫ちゃぁぁぁん!
:あれ、変なスライムがいない?
視聴者の一人が気付いたのは、赤黒いスライムだ。
普通は青系で透明度の高いのは一般的だが、サイズも大きく不気味さが漂う。
「変なスライムだけど、スライムくらいなら……てやぁっ!」
私は気にせず、珍しいモンスターの討伐シーンは美味しいと思って、攻撃を仕掛ける。
スライムの様な軟体でも
そう、今までは……。
ブチャッと嫌な音が響き、飛び散ったスライムの破片が私の体にまとわりついて動く。
「きゃぁっ!? いや、なにこれぇぇぇ!?」
にゅるにゅるとした感覚が気持ち悪く、肌の上を動きたびにゾワゾワしたものが来た。
:え、これって放送事故!?
:や、やばいんじゃない!?
:もしかして、服が溶けたり……
視聴者の反応に嫌な言葉があり、私はスライムを掴んではがそうとするが、スライムは逃げ回り視聴者の予想通り服を溶かしていった。
それどころか、何かの毒なのか体が熱くなり、集中力が低下していく。
「ま、不味い……配信、きらな、きゃ……」
ドローンの指示を出そうにも声を出す口にスライムが貼りついて言葉が出せなくなった。
:え、ちょ、おま!
:スライムめぇぇ、なんとうr……けしからんことを!
:織姫ちゃんが汚されちゃう!(ちらっ、ちらっ)
「ブラッドスライムだな……って、服がとかされてるじゃないか!? 待ってろ!
急にやってきた男の人が私の知らないスキルを使って、スライムを吹き飛ばしてくれた。
誰だか知らないけれど、とても助かった……。
「焼却処分もする!
飛び散ったスライムがくっついて再生する前に火炎放射器のように手から炎を出して焼き尽くすと、プスプスと焦げ跡と煙が立っていた。
鮮やかな動きに私はぼーっと立ってみていることしかできない。
「大丈夫……じゃないな、これをキテクレ」
自分の上着を脱いで男の人が渡してくれた時、私は自分が下着姿になっていたことに気づくのだった。
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