第38話 空から巨人が降ってきた
■沖永良部島 大樹ダンジョン 外縁部 入口前
日が沈みかけはじめたころ、大樹の中に入れる大きな空洞が見えた。
「ゴールが近いとなると、足が速くなる現象はなんだろうな?」
「ただのラストスパートだと思うよ~」
トーコからのツッコミを受けていると、俺のスキル〈危険感知〉が警鐘を鳴らしてくる。
前方で競い合いながら先に進むスメラギと織香に俺は注意を促した。
「二人とも、〈危険感知〉が騒いでいる。おそらくボスが来るぞ」
『『了解!』』
通信で二人が答えたと同時、ひゅーんと落下する音が響きズシィィィンと巨人が降ってくる。
どういう仕組みになっているかわからないが、できれば着地地点がズレて下へ落ちて欲しかった。
「フォレストジャイアントだね~。どこが森なのか小一時間といつめたいけど~」
トーコのツッコミが今日は冴えている。
だが、その様子に不安を抱いた俺は釘を刺した。
「ダンジョンにも慣れて余裕ができているのかもしれないが、油断大敵だぞ」
「そうだね~、反省するよ。フォレストジャイアントはSTR、VIT型。タフで強いタイプだけど、動きは遅いはずだよ~」
『でしたら』
『私達が有利ですね!』
先行している二人が息ぴったりで答えてきて、目の前で戦闘を始める。
足元を織香がローキック等で攻め、上半身の方をスメラギが電撃のように移動して突いていった。
巨体を相手にひるむことなく立ち向かう二人の姿はとっても映える。
:二人の連携がすごい!
:これがSランク冒険者の戦い方かぁ
:10階層のボスくらいなら余裕だろうなぁ
:なんか、敵がかわいそうになってきた
離れてみている俺よりも、ドローンが近くで撮影しているので、迫力の映像が配信画面には映っていた。
「なんというか、素早い動きですごいな」
:スコップ師匠、コメント下手かw
:師匠のコメント小並感w
:師匠は戦いのプロじゃないからなぁ
俺の一言にもコメントがついているが、散々な有様である。
そうこう言っているうちにフォレストジャイアントが倒れ、消えていった。
ドロップは魔石だけで食べられる部分はない。
「目玉とか落ちるかと思ったがそうでもなかったか……」
:スコップ師匠悪食w
:師匠、食べるものは選ぼうよ
5000:これで美味しいもの食べて、師匠
初のスパチャが入ったが、俺は素直に喜べなかった。
「さて、これでセーフエリアのはずだ。中に入ったら休憩といこう」
「そうだね~」
俺とトーコは先行する二人に続き、大きな空洞に入っていく。
■沖永良部島 大樹ダンジョン 内部空洞 第1セーフエリア
そこは木の中ではあるものの、光る苔がついていてうっすらと明るかった。
わざわざそういう仕掛けをしているのか分からないが、何かしらの意図を感じる。
「一体、ダンジョンとはなんなんだろうな? ゲームのように作られた存在のようだ」
「どうしたんですか? 哲学っぽいですね?」
織香が隣にきて、俺の顔を覗いてきた。
哲学という訳ではないんだが、あまり考えてもしかたないと頭を振って流した。
「さて、ゆっくりできるセーフエリアだ。美味い飯を食うぞ!」
「美味しいご飯ってなんですか?」
「もちろん、探検1日目はレトルトカレーだ」
期待していた織香がしゅんとなる。
:師匠、 美味い飯というフリから、レトルトカレーはない
:織姫ちゃんを失望させた、有罪(ギルティ)!
:いや美味しいけどさぁ、美味しいけど、ほら!
外野は黙っていて欲しい。
これが俺の正義なんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます