俺、男です。

 

 

 

 

「はーいみなさーん、そろそろ席についてねー」

 

 そんな担任の声掛けと共に1時間目の授業が始まった。あの後、春奈ちゃんと少し話して仲良くなった。最初こそは驚いてたけど、だんだん慣れてきたのか自然体で楽しそうに自分のことを喋ってくれていた。なんでも、甘いものとサッカーが好きらしい。雪ちゃんも交えて3人で話していると少しずつ他の生徒も入ってきて教室が埋まっていった。色々な人に話しかけようかと思ったんだけど、春奈ちゃんから『絶対みんなパニックになるからやめときな…』と言われた。まぁ、今日の一限自己紹介とかやるらしいからね、その時でいいかとも思った。

 

 教室の窓際一番奥に座って、静かになった教室を見渡す…まじで、女子しかおらん…。あとさこないだ言ってた説立証したわ。本当に可愛い子しかいない、いや〜冥福ですね〜。

 

「今日の一限は昨日言った通り、自己紹介とかをしていくからね。みんなちゃんと考えてきた〜?」

「考えてきました」

「自信ないです〜」

「時間ください」

 

 クラスの人たちは色々なことをガヤガヤと言っている。なんか、担任も優しそうでクラスのみんなは元気そうだ。雰囲気もよさそうでいいクラスだな〜。

 

「はい昨日言ったからもう始めていきますね。じゃあ…そこ!今大きな欠伸をした雪ノ下春奈さん、あなたから自己紹介をしてもらおうかな。そして、春奈さんから後ろにいきましょう」

「ふぁ〜…え、春奈ですか!?あ、欠伸なんてしてませんよ…?」

 

 俺の前の席に座る春奈ちゃんが指された。すぐにバレる嘘をついて時間を稼いでいるのか、それともただのアホなのか…おそらく後者だろう。クラスのみんなも笑ってるし、もういじられキャラ路線だなこりゃ。…てか、これじゃ俺二番じゃん!うわっなんも考えてないって…。

 

「本当?」

「うぅ…しました、わかりました。春奈から自己紹介させていただきます」

 

 …考えなきゃな。とりあえず名前だよな、それに趣味か。あとは今後どうしたいかとかかな?”普通”の自己紹介ってのは。

 

「おほん…春奈の名前は雪ノ下春奈です!好きなスポーツはサッカーで好きな食べ物は甘いもので、特にドーナッツが好きです。このクラスのみんなと1年間競い合ったり、遊んだりして仲良くしていきたいです!これからよろしくお願いします!」

 

 そうそう、自己紹介ってこういうやつだよな。久しぶりすぎて緊張してきたわ…。俺も好きな食べ物言おうかな。よし、次は俺の番か…「で、皆さんお分かりだと思いますが…ここまでは建前です!」…え…まだなんかあんの?

 

「…えぇ、語ってやろうじゃないですか!私の性癖を!」

「「「うぉぉぉぉぉーー!!!」」」

 

 うーん雲行きが怪しくなってきたなぁ。本当に何言ってんだよあいつは、元気なあほろりの癖に。…ていうか、なんだこの熱量…まるで前世でのエロを語る男子高校生のそれだぞ!

 

「私は!幼気な男子高校生を監禁して私以外と関わらせないようにするシチュエーションが好きだぁ!!何日も何週間も何ヶ月も監禁し続けて、ずっと私がお世話していて、私以外との関わりを除外して最終的に媚びたような顔で見てくる男の子が大好きだぁ!愛を独占して私だけのものになる感じ…くぅ、あれが本当にたまらない。私だけへの愛になったドロドロの感情は胸を締め付けられるというか…こっちもドロドロになっちゃう!そして、監禁後のなんとも言えない表情に何度もお世話になったことか!さぁ、みんな私についてくるんだ!私が見たことのない景色を見せてやろう!」

「さすが春ちゃん!」

「姉貴って呼ばせてくれ!」

「…今度その本見せて」

「いいスタートダッシュ切ったなぁ!」

 

 春奈ちゃんの自己紹介すごく反響もらってるけどさ…この世界の自己紹介ってこんな業が深いんかよ。真後ろに幼気な男子高校生いるんですけど、怖くなってきたんですけど。

 

「ふっ春奈はみんなについてきてもらってもう満足した…新しい道をみんなに享受できたならそれでいいさ。さっ次の人に行ってくれ」

 

 パチパチパチ…じゃないわ!どこでパスしとんねん!えーこれ多分俺も流れで性癖いう感じじゃん。…まぁ良いけどさ。何ならもっとビックに行きたいな、男ということを利用してここをもっと騒がしくしてやろう。

 

「トップバッターにも関わらず、良い自己紹介をしてくれましたね。先生も監禁ものはよくお世話になります。現実ではできないことだからこそロマンがありますよね。では、次の人のお願いします」

「分かりました」

 

 性癖に関してもコメント貰えるんだ…恥ずいって。

 

「えぇ〜春奈ちゃんの次に自己紹介をさせてもらいます佐藤修斗です、よろしくお願いします」

「なんか名前男っぽいね…」

「昔だったら男の子が産まれますようにって願掛けで、長女に男の名前つけてたこと多いらしいからその名残りじゃない?」

「でも背も高いし声も結構低いし…それに、制服男の子のだよ?」

「声が低い女の子じゃない?制服は…きっとコスプレだよ。だって男の子が学校に来るはず無いじゃん」

「確かにそうだね〜」

 

 おぉっと自己紹介を始めたら辺りがザワザワしてきましたね。そう!こういうの求めてたのよ!誰だって一回はチヤホヤされて見たいでしょ、やっと男女比の恩恵を感じてきた。てか、制服コスプレはやっぱ共通認識なんかい。

 

「好きなスポーツは水泳で好きな食べ物は辛いものです。これから1年間色々と教えてもらうことがあると思うので、その時は助けてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 パチパチパチパチッ

 

 少しだけもしかして男の子じゃない?みたいな感じで騒めいてるけどほとんどは気付いてないな、てかいるわけないって思ってるんか。さて、こっからが本番だ…。

 

「そして次は…性癖について語りたいと思う!」

「よっ待ってました〜!」

「お前のカルマは何色だ!」

「新たな道を示してくれぇー!」

 

 やばい…ちょっと楽しい。なんか、めちゃくちゃ気持ちいいヤジ飛ばしてくれる子いるんだけど。てか、めっちゃヤジ飛ばすん上手い子いるし…何なんこのクラスおもろ。このうまさ数年間磨いてきたヤジだろ、てことはやっぱりこの世界の学生の自己紹介での恒例行事なんか。

 

「俺は…普通にSMプレイが大好きだ!」

「分かるよ!」

「スタンダードだが、それで良い」

「…じゃあさっきの満更でもなかったんかよ」

 

 いや〜世界が変わろうとやっぱ需要があるもんなんだなSMって。

 

「一番好きなシチュエーションは、俺はSM両方好きだけどどっちかというとMだから綺麗な女性が女王様みたいな服を着て、足とかでふみふみされながら言葉責めとか寸止めされるのかな。無理矢理やられて、さっき気持ちよくなったばっかなのに…みたいな感じのかな。二番目は可愛い女の子を縄とかで縛って、寸止めしたり我慢させたりして苦しそうな表情をさせることが好きかな。春奈ちゃんも言ってたけど、最終的に媚びてくるってのはめっちゃ良いシチュよね!まとめると俺の性癖はSはMを兼ねるってことかな」

「…くっそ惜しい事したなぁ」

「めっちゃ良いね!私のほぼ一緒だよ、修斗とは良い酒が飲めそうだよ」

 

 ふぅ…やり切ったな。この清々しい気持ち、これはこの世界で恒例行事となっている理由がわかるな。

 

「はい、佐藤さんありがとうね。SM先生も好きだからすごく共感できたよ。佐藤くんはレズなのかな?私はバイだからSMものの女の子どうしはありだと思った…「ちょっとまった!」どうしたの佐藤さん?」

 

 あっぶねぇ〜。気持ちよくなりすぎて一番大事なこと紹介するの忘れてたわ。

 

「大事な事紹介し忘れたんですけどそれだけ言っても良いですか?」

「良いですよっ時間はたっぷりとあるので」

「ありがとうございます。えーっと言い忘れたんですけど、俺はレズじゃなくてノーマルです、ノーマルで女の子が好きなんです。つまり俺、男です」

 

「「「えええぇぇぇ!!!!」」」

 

 ふ〜気持ち良いなぁ…。みんなの絶叫が五臓六腑に染み渡るぜ。

 

 

 

 

 

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