1日の終わり

 

 

 

「…いや〜本当に申し訳ないです…」

「本当に気にしないでくださいって」

「でも…」

 

 大丈夫だということを伝えても今までの行動が枷となっているのか、中々信じて貰えない状態が続いていた。あれか…前世で考えるなら15歳の超絶美少女を押し倒してキスをしたってことか…いや、アウトだな…!まぁ、正直役得感あるから俺はいいんだけどねっ。

 

「じゃあ分かりました、お願いを一つ聞いてください。それでこの件のことはチャラにしましょう!」

 

 これは良い提案だと思う。こっちとしてもお願いを一つ聞いてもらえるし、それに叔母さん側だって免罪符ができる。うん!めっちゃ良いじゃん!

 …あれ、双方とってメリットしかない神提案したと思ったんだけど、なんか顔青ざめる越して白くなってるんだけど…。いや魂抜けてってる!

 

「叔母さん!戻ってきて!」

 

 肩を力強く揺すって呼びかける。あ、戻ってきた。

 

「叔母さ…「分かりました…いくら払えば良いんですか!私の全財産少ないですがカードごと渡します!この家も出ていくので、どうか…どうか警察だけはやめてください!お願いします!」」

 

 あぁ〜そう言うことか…。別に警察呼ぶ気ないって言ってるのに…。なんかこの人ずっと早とちりしすぎじゃない?

 

「じゃあ、俺のお願いを聞いて貰いますね」

「…ゴクリッ」

「…」

 

 お願いかぁ〜何も考え無かったな…。とりあえず脱げとか言うか?…いや、それじゃあ俺が犯罪者じゃん。じゃあ俺の奴隷になれとか…それじゃ今までの関係と同じになっちゃうもんな…あと、その枠は埋まってるか…。うーん…あ、そうだ!

 

「…叔母さんのことをこれからお姉さんって呼んでも良いですか?」

「え…?」

「…俺ずっとお姉さんって言う存在に憧れてて…。でも、叔母さんに言うのは恥ずかしかったんです。…けど、叔母さんの恥ずかしいところ見てしまったのでこっちも秘密を打ち明けるのが筋かなって…」

 

 嘘を吐く時には事実を織り交ぜて話す。そうすることで言葉に信憑性が増す。姉って言う存在に憧れていたのは本当だ。だけど、その他については一切そんなことを思っていない。だってこの世界来たばっかだもん。

 

「…これで良いですかね?」

「…うんっうん、ありがとね…シュウちゃん。そんなに私のことを考えていてくれてたなんて…私気が付かなかったよ…」

 

 涙をポロポロと溢しながら首をブンブンと振って感動していた。…なんで、ここの世界の人たちこんな騙されやすいんだよ…めっちゃ心痛むんだけど…。

 

 何分経ったんだろう。叔母…お姉さんを泣き止ませる為にずっと背中をさすっていた。あっ…よく考えたら俺お姉さんの名前知らないじゃん。

 

「あ、そう言えば叔母さんの下の名前ってなんでしたっけ?ちょっとド忘れしちゃって…すみません」

 

 お姉さんの前に行ってと顔を合わせると目元は未だに真っ赤だけど、顔は花が咲くような笑顔だった。なんか、すごく笑顔が似合う人だ。

 

「大丈夫よっ気にしないで!私は佐藤百合って言うの!改めてよろしくね!」

 

 佐藤百合…そりゃあ苗字一緒だよな。よしっとりあえず一件落着してよかった!

 

「こちらこそよろしくお願いします!百合お姉さん!」

「…ブハァッ」

 

 どうやら年下からのお姉さん呼びはクリティカルヒットだったらしい…。

 

 

 

 

 

 

「いや〜今日1日色々なことがあったなぁ」

 

 晩御飯を2人で一緒に食べテレビをのんびりと見ていたら、百合お姉さんがお風呂を沸かしてくれていた。先に入っちゃってとの事だったので、家主より先に入るのは気まずいと思いつつも先に頂いた。なんな、思ったよりリラックスできたな…。お風呂の力ってすごいや。

 

「ふぅ…」

 

 異世界転生1日目色々なことがあった。学校に行こうと思ったら間に合わなかったり、迷子になったらドMの変態とであったり、そのドMはお隣さんだったり、お姉さんが新しくできたり本当にイベント盛りだくさんだった。

 

「あんま男女比が逆転してるって感じはしなかったな。明日学校に行けばわかるもんかな…」

 

 貞操逆転しているこの世界。男少ないから貴重すぎて大切に扱われる。だから、傲慢に育ったり引きこもりになったりする。そうなってさらに女性の出会いが無くなってく。くっそ悪循環な世の中だなぁ…。そしてその結果、男性を誘拐して永遠に奴隷にするとか言う思想を掲げる犯罪集団とかも最近問題になっているらしい。

 

「まぁ関係ない話だとは思うんだけどね…」

 

 せっかく生まれ変わったんだ、俺が幸せになることはもちろんなんだけど。せっかくならこの世界の不遇な女性たちにも幸せになってほしい。

 

「その為に頑張りますか!」

 

 あんまり長湯するのも百合お姉さんに悪いし、もう十分リラックスできたから上がるか。

 

 ガララッ

 

「あっ…ごごごっごめんなさい!」

「…」

 

 何で風呂場にいるんだよ…。

 

「タ、タオルを持ってきただけなんですっ決してやましい意図があったわけでは!」

「わざわざ持ってきてくれてありがとうございます…。もしよかったら一緒にお風呂入ります?」

 

 今日1日の疲れをこの可愛い年上むっつりお姉さんをからかって癒されよう。

 

 ボンッ

 

 顔を茹蛸よりも真っ赤にさせて、頭から煙を出してる…。目もぐるぐるしてるしショートしたっぽいな…。うぶやなぁ…。

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る