お願いって何だろう…?
恥ずかしかった昼休みを終えて、午後の授業もあっさりと終わった。授業はやっぱり普通に難しかった。あと、弁当は4人でちょうどぐらいだったから、本当にあの二人を誘っておいてよかったよ…。一人だったら絶対ダウンしてた。
「はーいみんなー、今日は一日お疲れ様っ。入学二日目からぎっしりと授業したから疲れたでしょ?今日は早く帰って、しっかりと体を休めるのよ。じゃあ気をつけて帰ってね〜ばいばーい」
…思ったんだけど、うちの担任結構フランクよな。よし、俺も帰るかぁ。今日は色んなことあって疲れたし、なにより学校が久しぶりすぎた。まぁ、結構楽しかったけど。
「あ、そうだ!修斗くーん」
「はい、何ですか?」
帰ろうとして、荷物をまとめていたら先生に呼び止められた。…やっぱりパンツの件怒られるんだろうか…。
「今から私と一緒に職員室に来てくれない?色々と話さなきゃいけないことがあるから…」
「分かりました」
「じゃあ行こっか」
みんなが帰るところを一人だけ呼び出して、職員室に一緒にいきましょう…これ、説教確定演出じゃん。期待値90%くらいあるって、激アツやん。
「じゃあねみんな〜また明日〜」
とりあえず向かいますか、まだ説教って決まったわけじゃ無いし。その前に挨拶だけ…クラスのみんなとはあんまり話せていないけど、挨拶は大事だよね?
「本日はお疲れ様でした、明日もよろしくお願いいたします」
「ばいばーい」
「さよなら」
約一名めちゃくちゃ堅いけど…もう慣れてきたな。
「ここが職員室なんだけど、来るの初めてだよね?」
「はい、初めてです」
「だよね〜。今後何かと来る事があるかもしれないから場所覚えておいてね」
「分かりました…」
そんな来ることになるか…?はっ、初日でそんな問題児扱いとは…目をつけられたかもしれん…!
「とりあえずここの応接室の席に座っていてね、お茶は冷蔵庫の中にあるやつどれでも飲んでていいから。私は校長先生呼んでくるから少しだけ待ってて」
「CCレモンでもいいですか?あ、ロールケーキにチョコケーキもある…迷うな」
「いや適応すんの早いし、なんならリラックスしてきてるね!確かにいいとは言ったんだけど…もっと遠慮するもんかと思ってたよ!」
遠慮…ふっそんなもんくそくらえだ。
*怒られると思ってるから逆に落ち着いてきているだけ
先生は華麗なツッコミを見せて部屋から出ていった。いや〜俺、女の子のパンツを貰ったから校長先生まで呼ばれてんの?もしそうだったとしたらただのアホじゃん。それで退学とか末代までの恥やで。…でも流石に1回目は注意かな?初手全力謝罪が安牌か?そんなふうに今後の出方について悩んでいると、校長先生を引き連れた先生が戻ってきた。
「こんにちは、佐藤修斗くん。私は洋星学園校長の若葉だ、よろしく」
「よろしくお願いします」
うわぁ、校長めっちゃ綺麗じゃん…。枝毛の無い赤髪をポニーテールに結んでいて、気の強そうな雰囲気を醸し出しながらもどこか優しさを感じさせる。そして、グラマラスな身体をしていて、今まで見た中で一番胸がでかいのにウエストはきゅっとしまっている。Gくらいかな?そんな女性がスーツ着てるから正直エロい。年は20後半くらいに見えるけど校長でしょ?若くね?
「…驚いたな、私の身体を前にしてもそんな視線を向けてくるなんて。大体の男は顔が青ざめるのだが…どうやら君は違うみたいだ」
「そうなんですか?すごく魅力的だと思うんですけど…」
「こんなおばさんにお世辞でも嬉しいな。あいにくこの世界の男性が一番嫌いな身体付きをしているという自覚はあるのだが…君は面白いな」
若いと思うけどなぁ。あれか、この世界の男って性欲とかが減っただけだと思ってたけど、性に関する意識もだいぶ変わってきてるんか。この校長どう考えたってエロいよ、これが分からないなんてこの世界の男ってEDなの?
「さて、あんま長話をするのは体裁的によく無いから、手短に3点ほど君にお願いがある」
お願い…よかぁったぁ〜!説教じゃなかったよ。これで退学停学コースは免れた!てか、お願いって何だろう…?
「お願いってなんですか?」
「まず一つ目は部活動に必ず入る事がこの学校ではルールだが、男子は所属しなくても良くなっている。でも、君がもし入りたいというのなら新入生が入り終わった後にして欲しいんだ。つまり、入部期間後って事だ」
なるほど…確かに部活はどっかしらには入ろうと思っていた。それでみんなと一緒に期間に入ろうとすると男目当ての入部者が増えるってことかな?そうなると色々部活間でいざこざが
…多分こうだろ、この世界の思考についてわかってきたわ。
「何となく意図はわかりました」
「うん、理解してくれたようで何よりだよ。では二つ目のお願いなんだが、とある男子生徒の家に行ってきて欲しいんだ。まぁ、このお願いは急ぎでは無いから、追って詳細を伝えるよ」
「あ、俺以外にも男子いるんですね。正直どんな子かくらいは今知りたかったんですけど、詳細をあとで伝えてくれるならその時まで楽しみにしてます」
男子生徒俺以外にいたんだ、よかったぁ…!青春っていうのは男友達とバカやったり猥談したりとかもあるからな、男友達も欲しかったんだよなぁ〜。ノリがいいやつだといいな。
「そして次が最後のお願いだがこれは個人的なお願いだから無視してくれても構わない。ただ、聞いてくれたらありがたいという話だ」
なんか、空気重くなってきた…そんなしんみりしないでよ、なに言うの?俺シリアス苦手なんだけど。…超進学校の校長が直々に一生徒に個人的なお願いをしてくるんだ、流石に大切な話なんだろうな。
「聞くだけでいいなら…どんな話でも聞きますよ」
「ありがとう。それで最後のお願いは…」
ゴクリッ
まじで何言われるんだ…?
「男性の義務として数十年前から追加された男性結婚法のうちの一つの話だ。高校を卒業する年齢となった男性…つまり満18歳だな。その歳になった男性は妻を最低で5人娶らなけばならないという法律があるだろ?その5人の内何人かをうちの学校から娶って欲しいというお願い…というか私の我儘だ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「そうか…やっぱり無理か…。すまん、やはり我儘を言ったな。聞いてくれただけ嬉しいさ、ありがとう」
いやそういう事じゃ無いんだけど!え、そんな法律あるのかよ…知らんかった。実質ハーレム認めますよってことでしょ、やば!…あと毎度のことながら早とちりしてるしさ…どうしてこの世界の人はこんなに勘違いすんの?
「いや、無理って意味じゃ無いっすよ!」
「…え?」
「その5人娶るって話詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「もしかして、この事知らなかった感じか?」
「…はい」
っ…やばい、気が緩みすぎてた…。このことってもしかして超常識だったりするのか?『こんなの知らないなんておかしいな…君もしかして転生してきた?』とか聞かれちゃったりするかも…!
「…君もしかして…」
やばいやばい…誤魔化さないと…。なんて言うか、ど忘れしてました?いや、常識的な問題は流石に忘れないだろ…あれ、詰んだ…?
「ち、ちが…「箱入り息子だったりする?」」
…よかった、なんか変な勘違いしてくれてるじゃん。はぁ…助かったぁ〜。てか、箱入り息子って何やねん。
「箱入り息子なら仕方ないか、よほど大切に育てられたんだろう…。しかし、詳しく語ると言っても今言った通りだぞ。男性は妻を最低5人を娶らなければならない、そのまんまの意味さ。まぁ、この私の我儘を聞いてくれたとしても、別に今すぐ答えを出せという話じゃ無いよ。3年間学校に通って、いいなと思う子がいれば妻にして欲しいって話だ。可愛い我が校の生徒たちに夢を掴むチャンスをあげたいだけなのさ」
男性結婚法ねぇ〜…正直まだよくわかんないや。みんなのことはなんだかんだ好きだけどまだ結婚は考えられない。知り合って間も無いってのはあるけど…何より世界の常識に慣れてないから。…あと、自分に自信が持ててないから…いけない、ネガティブ思考は禁止だ。
「以上で話は終わりだ、あくまでお願いだからそんな気負わなくていいぞ。貴重な男性に話を聞いてもらえるだけでありがたいものだからな。じゃあ私達は会議に出なきゃだから、気をつけて帰るんだぞ。時間をとらせて悪かったがとても有意義な時間だった」
「分かりました、先生達も気をつけてくださいね。」
扉を開けて先生達は会議に行ってしまった。…最後のお願いの件、ここの学校の人じゃ無いとしても義務なら考えなきゃだよなぁ…。色々と考えなきゃだから頭がパンクしそうになってくる。はぁ、疲れたな…帰ろ。
「…そういえばうちの担任一言も喋ってなかったな」
大事な話の最中、うちの担任は置物と化していとさ。
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