やらかし家主さん
「いや〜本当にありがとね東雲さん。ここまでくればもう大丈夫だと思うから、本当にありがとう」
自宅近くの見覚えのある通りまで東雲さんの協力もあって30分程でついた。探している最中もドM節全開でめちゃくちゃ疲れたけど、協力がなかったら家まで辿り着けなかったと思うし本当に感謝だ。…すごく疲れたけど。
「ご主人様はここら辺にお住まいなのですか?」
「…うーん、まぁそうだね」
こいつに自宅の場所言ったらストーカーされそうなんだけど…。そしたらめっちゃめんどくさいことになるって…。こういう世界になった今、リスクヘッジは大事だよな。よし、ここで別れよう!
「じゃあ俺こっちだから、もう行くね!今日は本当にありがとう!」
「えっ…ご、ご主人様〜!」
東雲さんから逃げるように逆方向へと全力ダッシュをかました。…ちょっと心が痛むけどあんなの毎日相手にしてられないって。
「ハァ…ハァ…この体体力無さすぎるな…。ちょこっと走っただけでこのザマかよ…」
東雲さんと逆方向へ向かってから早数分。遠回りをし自宅へと全力ダッシュをして、めちゃくちゃ疲れていた。けど、その甲斐あって懐かしの自宅についた。
*数時間振り
「いや〜この光景安心す「…あれ!ご主人様!?」」
なんか聞き覚えのある声が左から聞こえたなぁ…。左を向くと想像した通り、さっきのドMがいた。
「あれ、ご主人様逆の道へ走って行きませんでしたっけ?」
「あ、えっとね…」
「あ!もしかして…」
やばい…あんまり関わりたくなくて避けたのバレたか…?
「また道に迷ってしまったんですか!?」
「…あ、そうそう!なんか道がめちゃくちゃ複雑でさぁ、迷っちゃったんだよね!でも、もう家に着いたから大丈夫!」
良かったぁ〜バレてない。てか思ったんだけど、こいつ見た目可愛くて頭良さそうなのに中身ドMなポンコツだよな?残念美少女ってやつか…。あ、自分の家の場所バラしちゃったなぁ…ミスった〜…。
「えっ!ここがご主人様のお家なのですか!?」
「…うん、そうだよ…。ん?そんな驚いてどうしたの?」
…なんか口を大きく開けて、目も見開いていた。えっなんかめちゃくちゃ驚いてるんだけど、そんな驚くこと言ったか?
「ご主人様のお家、私の家の隣じゃ無いですか!?」
へぇ〜お隣さんなんだ………ってまじかよ…!これ終わったじゃん…。自宅の隣に初対面からドM全開でくる変態が住んでるのか…。まじでどんなラノベだよ!
「…これって実質同棲ってことだよね…。私と普通に話してくれてかっこいい男性と家近いとか、もぅほんとにご主人様すぎるよぉ〜」
…なんか小声で言ってるし。はぁ〜ここまでくると逃げられないしなぁ…うん、仕方ないから普通にご近所付き合いした方が良いよなぁ。叔母さん?にも迷惑掛かったら申し訳ないし…。
「はぁ…それじゃあ東雲さん、お隣さんとしてこれからもよろしくお願いします」
この世界では俺の夢を叶えて、未練の残らないようにしたい。そのための第一歩だ。普通に関わるのはドMすぎて疲れるから、対人関係の練習として関わろう…。
「っっ…はい!」
感極まったかのような表情で、差し出した手を握り返してくれた。近所だし仲良くしてきたいから、こういうの大事だよね!
…うーんなんかめっちゃ触り方しつこくて気持ち悪いんだけど…。ペタペタしてくるし……いや、握手長くない!?もう数十秒握ってるんだけど、早くはなせよ!…ちょ、ちょっと待って口近づけて何しようとしてんの!
「おい!指しゃぶろうとするな!」
バカなことしようとしてきたから、握手していた手を思いっきり振り解いてしまった。…まったく、こいつは普通にできないのかよ…。
いやまさかとは思うけど、この世界の女性って全員こんな感じだったりはしないよな…?まともな恋愛できるのか不安になってきた…。
「…ハァハァ…ご、ご主人さまぁ〜」
そんな恍惚とした顔でこっち見てくんなよ!今のどこに興奮する要素があったの…。でも、顔とスタイルだけは良いからドギマギしちゃうの悔しいんだけど!くっそ、こいつに反応したら負けな気がする…。もう…家入るか。
「…んっ」
無視だ無視…。
「…んんっ!」
クッソ気になるなぁ!逃げるように玄関へと向かった。
ガチャッ バタンッ
「はぁ〜疲れた…。まじであいつなんなんだよ…。本当に喋らなければドストライクなのが惜しすぎる…」
ドアを閉じる間際に見たあいつ…小さく震えて潤んだ目で地面にペタンって女の子座りしてたんだけど…まさか、ね…。
とりあえず忘れておこう、そう思って玄関を見渡してからあの言葉を言う。
「ただいま」
誰もいないから何も返ってこないけど、これを言わないと家に帰ってきた感じがしないよな。はぁ〜やっと落ち着ける。
「うーんお昼ご飯美味しかったなぁ。…多分手作りだし結構良い素材使ってそうだよなぁ」
家に帰って暫くして、安心してきたのかお腹が空いてきた。そこで、朝叔母さんがお昼ご飯を用意していたことを思い出してあっためて食べた。結構手の込んだ料理でめちゃくちゃ美味かった。
なんか朝の叔母さんの口ぶりを見る限り、この体の持ち主との関係は良好には見えなかったんだよな…。
「さて、どうするべきかなぁ…」
今後一緒に過ごしていく中で気まずいのはいやだからなぁ…かと言って異世界から転生してきましたとも言えないしなぁ…。何事もなかったかのように行くか…いや、いけるのか?
でも、お互いにあんま触れたくないところだろうから、割となんとかなりそうな気がする。もし、そこら辺のこと聞かれたらいい感じに誤魔化せばいっか。
「あれ、よく考えたら何で叔母さんと暮らしてるんだろう。両親とかはどこにいるのかな…?…まぁいっか、考えてもわかんないし!とりあえず少し寝てから晩御飯作るかぁ〜」
自分の部屋にもどってベットにダイブするとたちまち眠気が襲ってきた。めちゃくちゃもふもふだった。
「ふぁ〜ベット柔らかぁ………ぐぅ」
「……うーん…。ん?やべっもう6時じゃん急いで晩御飯作らないと!」
ベットの脇に置いてある時計はアラームを鳴らさずに止まっていた。多分自分で止めたな…俺寝起き悪いからなぁ…。
とりあえず急いで起きて、台所に行って手を洗って料理をする準備をした。
「懐かしいなぁ…料理するのいつぶりだろ」
社畜時代は料理なんてする気力が湧かなかったから、全部コンビニ弁当で済ませてたんだよな。だから、お金無くなるし栄養偏るしで悪循環になってた。…やばいちょっと思い出してテンションが…はぁ、料理しよ。
とりあえずそんな難しいものは作れないから有り合わせの野菜炒めと、たまたま冷蔵庫あった卵を全部使って卵焼きを作った。あとついでに味噌汁も。うーん我ながらいい出来だっ。ちなみにうちの卵焼きは甘めの味付けです。
「まぁ、久々の料理にしては悪くないんじゃないか?」
調子に乗って少し作りすぎた気もしなくもないがまぁ良いだろう。
テーブルに完成した料理を並べてふと流し目で時計を見る。
「えっもう20時か早いなぁ…」
時間は思っていたよりすぎていて、意外と料理に苦戦していたみたいだ。にしても叔母さん遅いなぁ…残業かな?
ガチャツ バタンツ
「つ〜か〜れ〜た〜」
ドアを開ける音が聞こえ、やっと叔母さんが帰ってきた。呻き声を上げながら、ゾンビのようなフラフラとした足取りでリビングへと入ってきた。
「おかえりなさい叔母さん」
「ただいま〜。まったく今日も残業で疲れたよ…」
「残業ですか…。社会人ってやっぱり大変なんですね、毎日お勤めご苦労様です」
「あははっそうなんだよね…?…えっっ!!!な、なななんでシュウちゃんここにいるの!?」
…やっぱ何もない感じで行くの無理だったわ。そりゃそうよな、なんとなく分かってたわ。
よし、プランBへ移行だ!転生者ってバレないように、いい感じに嘘をついて叔母さんを言いくるめるぞ!
「…いや〜俺今日から入学式じゃないですか。だから、いつまでも叔母さんへ頼りきりのこのままじゃ駄目かなって思って、新しい自分に変わろうと思ったんです!」
貞操逆転世界で絶世のイケメンが、あなたのことを考えて改心しました的な発言をする。いや〜これは勝ったな…。
「…う、うそだ、シュウちゃんがそんなこと言うはずないもん。今まで悪口しか言われたことないし…まともに会話してくれたことないもん。…あぁ、分かった…これ夢か〜。きっと頑張ってる私に神様がプレゼントをくれたんだ…!ゆ、夢なら何しても良いよね…?」
…いや、この体の持ち主何やってんの!思ったより溝深そうなんですけど!せいぜい反抗期の喧嘩くらいかなって思ってたのに、めちゃくちゃ重い感じになってんじゃん!
…なんか、ぶつぶつ唱えながらこっちをガンギマッタ目で見据えてくるんだけど、めっちゃ怖いんですけど!ハイライトの消えた目でこっちに向かってくるんですけどぉ!押し倒されそうなんですけどぉ!
「シュウちゃんっ!クンクンッ…あぁ濃い雄の匂いがするよぉ…!こ、これは夢だもんねちゅうしちゃって良いよねっだって夢だもんね!」
やばい!胸に飛び込んできたと思ったらめっちゃ匂い嗅がれて恥ずかしいんですけど…!てかむ、胸が当たってる…。この状況から逃げなきゃいけないのに逃げたくない!
いや、流石に逃げなきゃ危なくなってきた。顔真っ赤で怖いし目もぐるぐるしててやばそうだし、なんかいつの間にか馬乗りされてるし!…やばい力強すぎて解けないっこれじゃあ逃げられない!
「お、叔母さん!…ヒィィ」
「大丈夫だよ。すーぐ終わるからねっ。力抜いてリラックスしててね!初めてでも痛くしないから大丈夫だよ!」
本気でやばい…!あぁ守り抜いてきた俺の貞操もここで終わりなのか。こんな…こんな終わり方なんて…。
チュッ
頬っぺたに柔らかい何かが触れたと思ったら、さっきまで全力で抑えられていた手足が自由に動くようになった。
「えへへ〜シュウちゃんの頬っぺたにちゅうしちゃったぁ。はぁ〜ずっとこの夢が続いてくれないかなぁ」
さっきまでの喧騒が嘘かのようにニコニコとだらしない表情をしていた…。いや、俺の覚悟返して…。てか、可愛いなぁ!でも真実を伝えなければ…。
「叔母さん…」
「なぁにシュウちゃんっ」
なんか、語尾全部にハートマークついてそうな甘々猫撫で声なんだけど。超絶満面の笑みだし、雰囲気がホワホワしすぎて後光すら見えてきそうなんだけど。
「夢じゃないです」
「…えっ?」
「夢じゃないです」
「…」
「夢じゃないです」
真実を何回も告げるとやっと頭が冷えてきたのか辺りを見回す。そして、自分の現状を確認してほっぺたをつねってる。いや、つねらんくてももう分かってるでしょ…。
さっきまでのニコニコが一瞬にして消えて、真っ赤だった顔は真っ青になってワナワナ震え出した。顔色めっちゃ変わるなぁ…。
「たいっっっへんに申し訳ございませんでした!!!」
俺の目の前にスライディング土下座をかましてきた。それはあまりにも見事な土下座で、もはや床におべこがめり込んでいた。いや、そこまでしなくて良いけどなぁ…。
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