依頼解決…え?






「友達か…」


 友達を作りたいって一体どうすれば良いんだろう…。普通に過ごしていればできるものだと思うし、そうじゃないって事はなんかしら事情があるんだろうか?あれか…自己紹介やらかしたとか?


「鈴木さんもしかして…初日でやらかしちゃった感じ…?」

「えっと…初日に学校行けていないんです」

「あ〜寝坊して日にち間違えちゃった的な?わかるよ俺もそう言うのやったか…」

「重そうな荷物を持っているおばあちゃんがいて、放って置けなくて…」


 目を伏せながらも答えてくれた。それなのに俺と一緒にしちゃってごめんなさい!鈴木さんはただの良い子でした…。いや〜こんな良い子ならすぐ友達できると思うんだけどなぁ。それにしても荷物重そうなおばあちゃん、なぜか良い子の前に現れがちなんだよなぁ…。


「まぁ二日目から登校すると自己紹介とかも色々大変だよね!俺も、自己紹介の時色々あってさ…」

「二日目は迷子の子供がいて、放っておくと可哀想で放って置けませんでした…」


 …うん、まじでごめんなさい!俺なんかとはやってること違うもんね…。同級生の女の子からかって襲われそうになったり、性癖暴露大会やってたり、パンツを持った帰ったりしてるわけじゃないもんね…。改めて文字に起こすと酷いな…こりゃ比べちゃいかんわ。


「…えっと〜三日目は…?」

「三日目は外国人の道案内を…」


 どんどん目を伏せてくからもはやお辞儀みたいになってるよ!ていうか、やっぱりめっちゃええ子やん!え、なにこの子、最初の三日全部人助けしてたら学校に行けなくなっちゃったって事!?なんと言うかまぁお人好しというか…難儀な性格をしてますね。


「…それで、流石に入学して三日連続で学校に行けてなかったから、流石に4日目からは行きづらくなって不登校になってました」

「…なんというか…優しすぎない?」

「昔から困ってる人を放って置けなくて…」


 優しすぎる性格だけど、色々と気にしちゃうタイプか〜。悪いことしているわけじゃなくてむしろ良いことだし、手伝ってあげたいけどどうすれば良いものか。あれ…そういえば学校来てないのにどうやってここを知ったんだ?HPでも見たのかな?


「でもこのままじゃダメだって思って…」

「それで、うちの部活をホームページかなんかで見かけて来たってこと?」

「いえ、知恵ちゃんに相談したらここに連れられて初めて学校に来ました」

「知恵ちゃん?」

「そこにいる私のいとこです」


 椅子に座っている誰かを指さす。えっと、そこにいる私のいとこ…春奈ちゃんでもなく影山先輩でもなく…なんか1人と目があったな。


「じゃーん、なんと友恵ちゃんは先生のいとこでしたー!」

「確かに…目元とか結構似てるかも…」

「あ〜よく見ると雰囲気似てますね…鈴木さんをちょっとアホにしたら先生になりそうです」

「…ちょっとそれどう言う意味ですか!?」


 身を乗り出しながらピーピー喚いている先生は置いておいて、依頼を解決しなければ。…いや、普通に驚いたけどね。


「でもさ、友達を作るっていうのならもう解決してない?」

「…え?」

「いやいや、まだ依頼を受けたばっかだよ?」


 さも当然のような顔をしながら春奈ちゃんが何かを言い出した。一体どういうことだろうか…もう解決しているって。あ…もしかしてそういうことか…?


「だってさ…私達はもう友達じゃない!」

「え?」

「確かにさ、今は依頼をした人とされた人だけど…そんなもの関係なしに、一緒にお菓子を食べてお話ししたらもう友達だよ!依頼てあろうとなかろうとね!少なくても私はそう思ってる」


 こんな良い子とわかっていて、春奈ちゃんが放っておけるはずがないよな…。それにしても人の意図を汲むのが上手いな…それだけ周りを見ているっていう証拠か。


「そうだね…俺ももう友達だと思ってるよ。そのカバンについてるキーホルダーってフラシスのパリオでしょ?俺もそのゲーム好きなんだよね、今度ここの部室で一緒にやろうよ」

「え、ずる〜い…私も混ぜてね!」

「わ、私も一緒にやりたいです…」

 

 いや〜最初の依頼は平和的な解決をしたなぁ…。俺としても友達が1人増えて嬉しいし、依頼も解決してウィンウィンだね。


「そう言ってもらえて嬉しいです、ありがとうござ…「けど!それだけじゃ私達お助け部は終わりません!」」

「「「え…?」」」


 あれ、もう依頼終わりそうだったんだけど…春奈ちゃんがなんか言い出したぞ。春奈ちゃん以外全員宇宙猫みたいな顔しちゃってるよ。


「私達お助け部は依頼を完了しただけでは終わらないんですよ。120%依頼を解決するまで…そして、その後のアフターフォローも完備しています!」

「つまり…どゆこと?」

「つまり…私達だけでなく他にもたくさんお友達作っちゃいましょう!」


 フンッと自信ありげにない胸を張っていた。この部活って120%依頼を解決するまで終わらなくて、アフターフォローもあるんだ…初めて知ったんだけど。随分と手厚いな。


「あ、ありがとう?」

 

 ほら、さっきまで鈴木さんも前向けて解決しましたみたいな流れだったのに、春奈ちゃんが暴走し出したせいで困惑してるじゃん!鈴木さんは実際友達を作ろうと思えば作れると思うんだよね。だから、その背中を押すだけの依頼だと思って、春奈ちゃんの提案を良いなって思ったのに…。


「友達を欲しいっていうのならば、100人くらいできるまで一緒に頑張りましょう!…ということで好きなことってあります?」

「…いや、話の切り返しえぐぅ!」


 机を叩いて立ち上がりテンションが最高潮に上がったと思いきや、落ち着いて好きなものを聞いてきた。いや、前半の内容と後半の内容の温度差凄すぎでしょ!風邪ひくって!


「強いていうのなら…お茶ですかね…?」

「お茶ね…よし、わかったよ!また明日同じ時間にここに来て。そうしたらこの依頼の続きをするから」


 突然言われたことに戸惑いながらも、鈴木さんはコテっと小首を傾げて好きなものを告げた。いや〜春奈ちゃんは一体何をしたいのか…まじで検討がつかない。まぁ鈴木さんのために何かしようと思っているのは伝わるんだけど…。


「それじゃあ今日の部活は終わりで!解散!」

「ちょ、ちょっと!」


 そう言って春奈ちゃんはダッシュで部室から駆け出していった。まじで、ずっとよく分からないんだけど。春奈ちゃん、君は何をしようとしているんだ…。


「…春奈すごくダッシュしてた、何かあったの?」

「分からない…」


 春奈ちゃんがダッシュで教室から出ていって、入れ替わるかのように雪が教室へと入ってきた。日直の仕事を終わって戻ってきた雪は、なぜダッシュしていたのかと困惑していた。そりゃ混乱するよな…俺も混乱してんだもん。


「それじゃあ今日は解散にしますか?」

「…そ、そうですね…」


 さて、明日はどうなることやら…。



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