ご主人様、明日デートしませんか?






「今日は学校の部活で………てなことがあったんですよ」

「流石修斗さんです!」

「心配だったけど、シュウちゃんが楽しそうで良かった…!」


 あの楽しかったお茶会から数時間が経ち、学校での出来事に対して二者二様な返答を貰った晩御飯時。土曜日の様に3人でテーブルを囲んでいた。なぜ金曜の夜なのに東雲さんがいるのかと疑問に思う人もいると思うが、そんな大した理由はなく、ただ百合お姉さんが誘っていたらしく帰ったらうちにいただけだ。相変わらず人の前では上品な良い子だった。さっさと本性見せてくれたら良いのに…いや、もしかしてこれが素で俺の前だけおかしいのか?


 そんな事を頭の片隅で考えつつも、楽しく会話をしてご飯を食べ切った。うん、やっぱ百合お姉さんは料理がうまいな!毎日味噌汁を作ってほしいな…ってボケようと思ったけど、よくよく考えたら毎日作ってもらってるじゃん。


「お皿片付けるね〜」

「すみません、いつもありがとうございます」

「いいのいいの〜。シュウちゃんと一緒にご飯を食べれてるだけで私は幸せ者なんだもんっ」


 …天使すぎるて百合お姉さん。てかさ〜最近思うんだけどさ…百合お姉さんってダメ人間製造機だと思うんだよね。いや、俺はダメ人間になってないんだけど、今みたいにお皿とか絶対に片付けさせてくれないし、洗濯物掃除も家事全般何もかもやらせてくれない…。流石に人の家に住んでるんだから何かは手伝いたいじゃん。だから、百合お姉さんに何回か自分でやるって言ったんだけどさ…


『…そ、そうだよね…私みたいなみじんこ以下の性欲マシマシのおばさんなんかにお手伝いされたくないよね…。気を悪くさせてごめんねっ。はぁ…シュウちゃんに嫌われちゃった、もう何もしたくない…』


 てな感じでめっちゃ卑屈になるんだもん。この世の終わりみたいな顔してハイライトなくなるしさぁ…どんよりとした空気を纏うし…。だから、それ以来言われたことはなるべく断らないようにしている。その結果耳かきしてもらったり、風呂上がりドライヤーとマッサージしてもらったり、膝枕でお昼寝させてもらったり、アイスとかお菓子を食べる時あーんしてもらったり…あれ、俺ダメ人間なってる?いや、少し甘やかして貰ってるだけだと思う…?


「桜ちゃんのも片付けちゃうね〜」

「私が片付けますよ?」

「先週は桜ちゃんが片付けてくれたでしょ、だから今日は私に片付けさせてっ」

「分かりました。じゃあ来週は私が片付けます!」

「むぅ〜…ずっとゆっくりしててくれても良いのに〜」


 こうやって2人で会話してる時は普通に両方とも優しい人で済むんだけどね。どうしてだか俺が関わると…ね?これが世界一のモテ男の性か…つらいなぁ〜。


*自称


 百合お姉さんがキッチンで洗い物をし始めた。東雲さんとテーブルを挟んで男女2人きり、何も起きないはずは…ん、なんかスマホの画面向けてきた。画面には黒い文字でらテキストが表示されてる。なになに…


『ご主人様、明日デートしませんか?』


 …なんでテキストメッセージなんだよ、普通に喋れば良いじゃん。別に変なこと言ってるわけじゃないんだし。…テキストが良いなら合わせるけどさ…。


『別にいいけど…どこいくの?』

『それは、明日になってからのお楽しみということで』

『…』

『…行きたいところがあるんです…着いてきてください…』


 ちょっと恨めしげにジト目で見たら、ほっぺたをりんごのように真っ赤にして興奮してるんだけど。なんでなん?まったくこのドMったら、まだ19なのに立派な負け癖ついてるよ…。


『何時?』

『明日11時にここに迎えにきます』

『了解』


 まぁどうせ暇だし行ってあげよっか…あと、将来的に住み続けるんだとしたら、この街に詳しくなっておいてもいいとも思うから…べ、べつにデートっていう3文字に惹かれたわけじゃないんだからね!?…はぁ…野郎のツンデレとかいったい誰得なんですかね。


「いや、全体通してスマホでやる意味あった?」


 終わってから思った。マジで別に変な会話するわけでもないし、文字打つのめんどかっただけじゃん。


「だってテキストメッセージの方が秘密の会話っぽくて…なんかこう…かっこいいじゃないですか…!」


 付けてないはずのメガネを持ち上げて、キラーンッという効果音が聞こえてきた。


「こういうのやってみたかっ…!あひゃぁッご、ご主人様さまぁ!あっ…そこぉ、やめてくださいぃ〜!ひひぃ〜…私っ…ヒンッ…あぁん!…ワキ…ッ弱いんですぅ!!」

「いや、自業自得だよ」


 ちょっと虐めたくなったから、コッソリと後ろに回って脇をくすぐってやった。いや〜スッキリするし柔らかいものも当たって一石二鳥だなぁ。


「はぁ…っ…ん、はぁぁう…」


 しばらくくすぐりを続けていると…じんわりと肌が汗ばんできて、酸っぱい匂いと女の子特有の甘い匂いが鼻腔をつく。…ちょっとクラクラしてくるなぁ。


「…ふ、2人とも…」

「はぁ…はぁ…」


 っやべ、百合お姉さんのことを忘れてた!俺のことを大切にしてくれている百合お姉さんだ、この世界でのこの状況…いくら仲良いと言っても、セクハラで東雲さんが捕まるって!友達が俺のせいで家族に通報されるなんて、そんなの絶対嫌なんだけど!誤解を解かんと…!


「こ、これはっ…「…くすぐりごっこをするぐらい仲良くなるなんて…流石桜さん!シュウちゃんとも大分仲良くなったのね!やっぱり桜さんは頼れる良い子だね、ありがとう!」」 

「…はふぅ…ん…?…あ、はい!そうです…?」


 いや、そこは天然なんかい!?もっとこう…私と仲良くしてたのはシュウちゃんが狙いだったのね!とか、このエロ女狐が!とか来るんかと思ったよ…いや、百合お姉さんはそんなこと言わんか…仮に思っても本心を隠して祝福してくれそうよな。結局、全部俺の早とちりじゃん…あほかよ。


 






 東雲さんを見送ってテレビ前のソファに座る。肩と肩が触れ合いそうな距離でさっきのことについて話をしていた。


「桜ちゃんとシュウちゃん仲良しになったね〜」

「う、うん。百合お姉さんが言う通り上品で良い子だから、すごく接しやすくて話してると楽しいんだ…」


 ごめんなさい!そんなこと一切思ってません!なんならドMだから下品だし、人にセクハラしようとしてる時点で良い子じゃありません!バリバリ嘘ついたからちょっとカタコトになってたわ。


 いや〜にしても、発言している言葉と心がこんなにも真逆なことってあるもんなんだなぁ…。


「ふぁ〜」


 やばぁ…眠くなってきたぁ…。そういえば今日は授業終わってからお茶会でめちゃくちゃはしゃいだし、その後東雲さんとも騒いだから疲労が溜まってるのかな…。ねむぃ〜。


 ペチペチッ


「はい、シュウちゃんどうぞ!」

「百合お姉さん…ありがとう…」


 いつもの昼寝の様に太ももへと誘われる。部屋着のショートパンツから除くムチムチな生脚に頭を預ける。細く長くシミひとつない綺麗な手で、髪の毛を優しく空くように撫でてくれる。…はぁ太ももは柔らかいし…なんだか…すごく…良い匂いで…落ち着く……すぅ…。


「…シュウちゃんおやすみなさい」


 ちゅっ











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