第18話 ここが変だよイギリス料理

 皆様、ごきげんよう。


 実は今まで黙っていたのだが、実は私は50以上の資格試験に合格している資格マニアなのである。 目についたものを次々に受験していたため、幅広いジャンルの知識を学んでいる。


 私の経験上、試験数の多いジャンルが『料理』である。 実際、私が合格している料理系の資格は、ちゃんと数えたことはないが20くらいあったと思う。

 読者の皆様の中には、私が無類のジャンクフード好きだと認識されている方もおられるだろうが、実は様々な料理を作ってきた。 今は持っていないのだが、若い頃は週末になると中華鍋を振っており、多くの友人達の胃袋を満たしてきたのだった。


 そんな資格系グルメの私が、一度も作ろうとしなかった国の料理は2つある。 『韓国料理』と『英国料理』だ。


 韓国は若い頃に出張で1週間ほど行ったことがあるのだが、とにかく辛いか甘いかのどちらかで、ハッキリ言えば旨味に乏しく、非常に不味かった。 それだけでなく、体の弱い私は辛さに耐えられず、帰国後に体調不良でダウンしてしまった。 辛い食べ物は好みが分かれるところだと思うので、好きな方もおられるだろうが、私には命の危険を感じたのだ。


 そして、もう1つの英国料理に関しては、見れば分かる。 これは不味いのだと。

 例えば、食材として魚があったとする。 日本だと、新鮮なら刺し身や寿司というのがあるし、煮付けにしても素材の旨味を十分に引き出すよう、丁寧な味付けを行うし、煮崩れしないように落し蓋をするなどの工夫を行う。


 だが、英国では違う。

 とにかく煮る。

 これでもかと煮る。

 うーん、あとちょっとさらに煮ておくか。

 よし、そろそろいいだろう。

 魚の旨味が滲み出た煮汁を【全て捨て】、その魚を揚げたら、各自で適当に調味料をかけて食べる。


 こんな調理法が21世紀にもなってまかり通っているとは、実に怖ろしい国だ。


 歴史を遡ると、19世紀に『イザベラ・メアリー・ビートン』という女性が『ビートン夫人の家政読本』という本を出版しており、900ものクソレシピが掲載されているのだ。 共通する特徴は、とにかく焼きまくる、とにかく煮まくる、とにかく揚げまくるという、狂気を感じるほどの火への信頼感なのである。


 なぜ、そこまで火を使うのか、簡単に言ってしまうと、衛生状態や食材の品質が悪いためだと言われている。 英国という土地は、作物の育成には適していないので遠い地から運ぶ必要があり、腐っているかもしれない食材を使わざるを得なかったのだ。

 衛生観念もちょっとおかしくて、地面に落ちたものを平気で料理に使う。 3秒ルールどころの話ではないのだ。


 水も上下水道が分かれていなかった時代があり、とにかく水が汚かった。 そのままでは飲めないので沸かして、紅茶で色と匂いを付けて飲んだとされている。

 アフタヌーンティーに上品なイメージを持っている方も多いとは思うのだが、起源なんて案外こんなものなのだ。


 医学が怪しかった時代に、火を通すことで食中毒を防ごうとしたというのは素晴らしい発見だとは思うが、そのせいで食文化が死んだと言っても過言ではなさそうだ。 ちなみに火を通したり、家庭の冷凍庫で冷凍しても防げない食中毒もあるので、過信は禁物だということを付け加えておく。


 今回はそんな怪しい食文化で生まれた料理をいくつか紹介していこうと思う。

 ★で評価を付けているが、私の独自評価なので大目にみていただきたい。



【スターゲイジーパイ ★★☆☆☆】


 初めて見たとき、自分の目を疑った。

 幼稚園児くらいの子が悪ふざけで作って、親に怒られるようなヤバい見た目をしている。

 ベースとなるパイに、魚の頭を突き刺して焼く。 魚が天を見上げるように見えるので、こんな名前となっている。


 魚料理の宿命で生臭いし、失敗したときは非常に不味いともっぱらの噂だ。 わざわざ余計なことをして不味くしているという、英国料理の悪い所を濃縮したような料理といえよう。



【うなぎのゼリー寄せ ★☆☆☆☆】


 うなぎをぶつ切りにして、塩茹でしたものを冷やす。 すると、煮汁がゼラチンのように固まるのだ。 日本的に言えば煮凝りだ。


 うなぎといえば、日本では非常に美味しいとされているが、甘辛いタレで香ばしく焼いているためだ。 何も工夫せずに茹でただけなので、味は不味いし、骨もそのままなのだ。

 なにより、やっぱり見た目がグロい。



【ローストビーフ ★★★☆☆】


 日本で食べるローストビーフは最高だよね。

 でも、英国は一頭まるごと調理するため、毎食のように食卓に並び続けるのである。 当然のことながら、次第に鮮度も落ちていくので、途中からは我慢比べと変様していくのだ。


 調理自体は余計なことをしていないので、それなりに美味しいだけに残念さが残る。



【フィッシュ&チップス ★★★☆☆】


 これも日本で食べると美味しいのにね。

 普通に作れば美味しいはずなのだが、英国の調理技術や品質管理が最悪なために、ハズレが多いと言われている。

 なお、わざわざ冷蔵庫に入れて味を落とすまでが英国流。



【ハギス ☆☆☆☆☆】


 羊の胃に羊の内臓や香草、タマネギ、スパイスなどを詰め込んだもの。

 食欲を全くそそらない、あきらかに不味そうな見た目をしているが、実際にかなり不味いと評判だ。

 お酒ベースのソースをドバドバかけるのが普通の食べ方だそう。



【ブラック・プディング ★☆☆☆☆】


 黒いソーセージなのだが、素材が豚の血、豚の脂肪をメインに、パン粉やリーキ(西洋ねぎ)をまぜたもの。

 血を使っているから黒く、レバーのような味がする。


 ちなみに、英国の生ソーセージには『E型肝炎ウィルス』が入っていることが多いので、焦げるまで加熱処理をするのが英国流。



【カレー ★★★★☆】


 カレーはインド料理だと思っている日本人は多いが、実は英国料理とするのが正しいと私は考えている。

 元々はインドの郷土料理をベースとしているのだが、カレー粉を発明したのは英国人である。 大航海時代に不味いシチューや、死ぬほど硬いパンを食べさせられていた船乗りはカレー粉に狂喜乱舞したことだろう。


 このカレーは日本で魔改造され、英国に逆輸入されることとなった。

 いわゆる『カツカレー』と呼ばれるものだ。


 日本ではトンカツをカレーの上に乗せているものを指しているが、英国ではチキンカツの上にご飯を乗せ、さらにカレーをかけるスタイルを採用している。 料理に余計なことをさせたら右に出るものがいない英国だが、これはこれで美味しそうな感じだ。

 ちなみに、カツが乗っていなくてもカツカレーと呼ぶらしいので、日本式カレーの意味で使われている。


 ――


 まだ色々な料理がありそうだが、今回はこのくらいにしておこうと思う。


 ちなみに、最近の英国料理は美味しくなったと言われていることをご存知だろうか。

 その原因は大量の移民たちが、料理屋で働きだしたからだと言われている。


 『英国料理が不味いのは、英国人が作るからだ』というジョークがあるくらいだからね。

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