第20話 ここが変だよ昭和ウルトラマン

 皆様、ごきげんよう。


 私は幼少期、ウルトラマンに夢中であった。

 巨大怪獣から地球を守る姿に、大いなる憧れを抱いていたのだ。 私が宇宙や科学に興味を持ったのも、彼らの存在が大きいと思う。

 同じく特撮の仮面ライダーも一定の人気があったが、ウルトラマンの人気には遠く及ばなかった。 大きいは正義。


 だが、やはり大人になって振り返ってみると、色々と変なところがあることに気がついたのだ。 無邪気に憧れていた少年はもう何処にもいない。 今は心が汚れきったおじさんになってしまったということか……。

 年を取るというのは、なんと残酷であろうか。

 ちなみに、なぜこのようなテーマを取り上げたのかというと、第17話のドラゴンクエストが想像以上にうまくいったからだ。 つまり、二匹目のドジョウを狙ったという訳だ。 ぐへへ。


 本題に入ろう。

 ウルトラマンが地球にやってきたのは、なんと1966年ということらしい。 58年もの昔から地球を守ってくれているのだ。 なんとありがたいことではないか。

 そういえば、ウルトラマンの顔は何やら神々しさを感じると思い調べてみれば、やはり仏像の特徴を取り込んでいたらしい。


 昭和のウルトラマンは、初代ウルトラマンから始まり、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウ、ウルトラマンレオで一旦終了し、アニメ版のザ☆ウルトラマン、1980年のウルトラマン80までとなる。 ここまでが今回の範囲となる。



【小学生が考えたような設定】


 初代ウルトラマンのラスボスといえば、ゼットンだ。

 コイツはやばい。 ゼットンが放つ火球の温度は1兆度もあるのだ。 まるで小学生が考えたような設定だが、さすがのウルトラマンもこれには敵わず倒されてしまう。

 今まで散々ウルトラマンに助けられてきた地球人は、自分たちの力だけで倒さねばならなくなった。 そこで登場するのが、岩本博士が発明した『無重力弾』またの名を『ペンシル爆弾』である。


 ペンシル爆弾と呼ばれているとおり、見た目はただのペンに見えるのだが、当たればゼットンを粉々にできる性能を持っている。 これまた、小学生が考えたような武器である。

 実際、これでゼットンを粉々に破壊するのだが、以降のシリーズでは無かったことになっている。 ウルトラマンより高性能なのに。



【郷秀樹】


 帰ってきたウルトラマンといえば、主人公の名前が『郷秀樹』であった。

 当時人気があった男性アイドルといえば、『郷ひろみ』『西城秀樹』『野口五郎』が挙げられるだろう。 つまり、お察しのとおりだ。


 無念なのは『野口五郎』であろう。

 実際、ライバルの2人に負けている感があったのだが、トドメを刺された形となってしまった。



【Q歯科】


 私が歯医者を嫌いになった原因。 というか、トラウマ。


 ウルトラマンエースの主人公、北斗星司が歯の痛みを感じていたところ、たまたま見かけた『Q歯科』という怪しい歯科医院で治療を受ける。 その後から、北斗は超獣の幻を見るようになり、町中で銃をぶっぱなすなど、大暴れをしてしまう。

 北斗は『Q歯科』が原因だと気付き再びやってくると、歯科医の正体は女ヤプール(超美人!)であった……という、ただ不気味なだけな話だ。


 北斗が治療のために口を開けて無防備にしているのだから、その隙をついて喉をかき切ってやればよいものの、虫歯の治療をしてあげた上で幻覚を見る装置を取り付けるという回りくどい方法をとった。 そもそも、北斗が別の歯科医院に行ったらどうするつもりだったのだろうか。

 最後は銃弾一発で瞬殺される女ヤプールであった。



【ウルトラセブン被害者の会】


 ウルトラ兄弟は、『M78星雲・光の国』出身だが、レオと双子の弟アストラは『獅子座L77星』の出身だ。

 母星がマグマ星人という侵略者に滅ぼされてしまい、なんとか逃げのびてきた地球に再びマグマ星人の侵略が始まる。 この頃、地球はウルトラセブンが守っていたのだが、戦いに敗れて足を骨折しただけで変身できなくなってしまう。 そこでセブンが目を付けたのが、同じく宇宙人のレオだったという訳だ。


 レオはウルトラ兄弟ではないので、戦闘のプロではない。 一応、空手だか拳法だかの達人ということだが、とにかく負けまくってしまう。

 そこでセブンはレオに修行をつけるのだが、車で後ろから追い回し『轢かれたくなければ、もっと早く走れ!』みたいなことを言うのだ。 そもそも、こうなったのはお前のせいだろう。

 こんな変な修行は、キャプテン翼くらいでしか見たことがないのだが、なぜかこれで強くなるのだ。

 レオの強さは、平成・令和のウルトラマンにも一目置かれているようなので、その点だけは救われたと思う。



【光の国のガバガバセキュリティ】


 『M78星雲・光の国』には、星の運行を制御している『ウルトラキー』という、いかにも鍵という感じのでかい鍵がある。

 あまりにもシンプルなデザインなのでレプリカなど作り放題ではないかと心配してしまうのだが、なぜか先端から強力なビームを撃てるなど、意味の分からない設定もあるので、簡単に複製はできないのかもしれない。


 だが、そんな大事なものが、レオの弟アストラに化けたババルウ星人によって盗まれてしまうのだ。 先ほども書いたとおり、アストラは光の国の者ではないので、明らかに部外者なのにだ。

 慌てたウルトラ兄弟がアストラを追いかけて地球に来て、偽アストラを庇うレオと大喧嘩になるのだが、そこにウルトラマンキングが現れる。 キングが『お前たちの眼には、その男がアストラに見えるのか!』と叱るのだが、双子のレオでさえ完全に騙されていたのだ。 うん、見える。


 よその星を守る前に、自分の星をちゃんと守れ!と私は言いたい。



【制作費がなくなり、出演者のほとんどを殺す】


 ツッコミどころ満載のレオであるが、終盤のストーリーは本当にヤバい。

 主要な登場人物をほとんど殺し、地球防衛隊であるMACも全滅させてしまうのだ。 さらに以降は怪獣も出てこなくなる。


 こうなった原因はオイルショックによる制作費不足である。

 制作費が無いものだから、俳優の削減が必要になり、怪獣の気ぐるみも作れなくなったらしい。

 ということで、俳優さんには死んでいただいて、怪獣ではなく『円盤生物』を出すというとんでもないことをやってしまったのだ。

 円盤生物なら、スーツアクターも不要だ。 上から吊るせばいいからね。


 死んだ登場人物には、レオの恋人やかわいがっていた体操教室の女の子も含まれている。

 余談だが、この女の子は『サザエさん』で『カツオ』の声優をしている『冨永みーな』さんである。



【ウルトラマンであることがバレる】


 昭和のウルトラマンシリーズといえば、『地球防衛隊のメンバーが変身するが、なぜかバレない』というのが、いつものパターンである。

 ところが、『あいつ、肝心なときにいつもいないじゃん』と怪しまれた作品がある。 アニメの『ザ☆ウルトラマン』だ。


 しかも、怪しまれるだけじゃなく、役立たずだとか酷いことを色々言われる。 世知辛い世の中である。

 結局正体がバレるのだが、これはまだ中盤で、話はまだまだ続くのだ。


 中盤以降は宇宙人が使っていた宇宙船を掘り当てて、その宇宙船でウルトラマンの故郷に向かうこととなる超展開が待っている。

 いや、地球を守る任務はどこにいった? 最終回まで戻りませんけど?


 ウルトラマンの故郷では、ウルトラマンの妹(ウルトラ人は通常、古代ローマ人みたいな姿をしている)といい感じの雰囲気になったり、あまりの急展開っぷりに混乱すること間違いなしだ。



【3年B組 ウルトラマン先生】


 昭和最後のウルトラマンといえば、ウルトラマン80だ。

 当時、『3年B組 金八先生』など、熱血教師モノのドラマが人気を博していたのだが、このビッグウェーブに乗るしかない!と……作られてしまった作品である。


 普段は熱血中学教師であり、番組の終盤には怪獣が現れてウルトラマンになるのだ。 だが、当然全くウケなかった。 まさに『二兎を追う者は一兎をも得ず』であろう。

 結局教師は退職し、地球防衛隊に専念するというグダグダに終わった残念な作品。


 主役の長谷川初範さんは人気俳優として成功したので、その点だけは良かったと思う。



【おまけ:新日本プロレス】


 ウルトラマン先生が活躍していた頃だと思うのだが、当時大人気番組であった『ワールドプロレスリング』で驚きの次週予告が流れた。

 『タイガーマスク VS ウルトラマン』 この予告に、私たち子どもは歓喜した。


 タイガーマスクという、スーパーヒーローだけでも楽しみなのに、なんとウルトラマンまで出てくるというのだ。

 このときほど、一週間後を楽しみに待っていたことはなかったであろう。


 翌週、私の目に飛び込んできたのは、銀色のマスクを被っただけのメキシコ人レスラーであった。 なお、円谷プロの許可は取っていなかった模様。


 私と親友の田中君(大のプロレス好き)は、一週間この話ばかりをしていたのだ。

 だが、放送翌日、私たちがプロレスの話をすることはなかった。

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