第2話 単位警察24時
単位。
それは人類の歩んできた道である。
距離や重さなど、我々が日常生活を送る上で欠かせない尺度を定めたものであり、その歴史を紐解いていくことで人類の生活が見えてくるのだ。
例えば、インチ、フィート、尺は、それぞれ親指、足、腕の長さを使って長さを測っていた時代の名残りだと言われているし、重さのポンドは1日分の小麦粉の量だったりする。
一見、使いにくそうに見えるのだが、これは極めて実用的だ。
4人家族であれば1日あたり4ポンドの小麦粉を買えばよいのだ。
これなら初めてのおつかいでも、無事に買ってこれるに違いない。
所さんもきっと笑顔を見せてくれるはずだ。
一方で我々が普段使っている、メートルやグラムといった単位は実生活では不便なのだが、学術的な視点で見ると非常に便利だ。
1気圧下で 1cm の立方体に 4度の水を入れると 1cc で 1g。
その 1cc の水を 1度高めるために必要な熱量は 1cal。
といった感じで、非常に計算がしやすいのだ。
このように、私たちの世界を測るための単位は実用性に溢れているのだが、案外そうでもない奴も紛れ込んでいるので、今回はそれを紹介していこうと思う。
まず最初に紹介したい単位は『レモン◯個分のビタミンC』だ。
この単位の問題点を挙げるとすれば、レモン1個分のビタミンCの量がまったくピンとこないことだろう。
非常に酸っぱい量を想像しがちだが、酸っぱさの正体はクエン酸だ。
『食べられるのにクエン酸とか言っている、あいつ』のせいで、我々は正しい量を想像することができなくなっているのだ。
しかも、驚いたことに『レモン1個に含まれるビタミンCはレモン4個分のビタミンC』なのだ。
ちょっと何を言っているのかよく分からない。
『レモン1個に含まれるビタミンCはレモン4個分であるから、つまりレモン16個分であり、ってことは64個分……あれ?』
ほらね、こうなっちまう。
ビタミンCがゲシュタルト崩壊しているじゃないか。
実はこれにはカラクリがあり、『レモン1個分のビタミンC=20mg』と定義されているのだ。
そして、『実際のレモン1個に含まれるビタミンC』は、なんと80mgなのだ。
えっとね……。
『レモン1個分のビタミンC=20mg』って決めた奴、歯を食いしばって前に出てこい!
次に紹介する単位は『馬力』だ。
車のスペックでよく出てくるやつですね。
勘のいい皆様なら、既に予想がついていると思うのだが、『馬1頭の馬力は3馬力』なのだ。
なんでこんな事になったかというと、
・180ポンドの荷物(約81.6kg)を
・1時間かけて
・10,852フィート(約3,300m)移動させる
この力を1馬力として定義したのだ。
つまり、全力を出していない状態を単位としてしまったため、サラブレッドが本気で走ったときの力が実はその3倍だったということだ。
しかも、これは重さの単位がポンドのイギリスの場合であり、グラムを使っているフランスでは、
・75kgの荷物を
・1秒間に
・1m移動させる
と自己流に定義してしまったのだ。
さらに、我が日本国では『1馬力=750W』と定義している。
お願い、もうやめて!
そして、最後を飾るのは『東京ドーム◯個分』だ。
これは言うまでもないだろう。
大きすぎて、全く想像がつかないのだ。
例えば、『東京ドーム3個分』と『東京ドーム4個分』の建物があったとして、どちらの感想も『へえ、でかいね』となってしまうのだ。
これは由々しき問題だ。
『東京ドームの建築面積は46,755平方メートル』らしいのだが、こんなもの覚えられるか!
せめて10,000平方メートルなら、1辺が100メートルの正方形をイメージできるのにね。
もはや、正しい面積を伝えようとする意思さえ感じられない。
これは『東京ドーム』をアピールしたい讀賣の罠に違いないと、私は睨んでいるのだがどうだろうか。
このように、我々の世界には謎の単位が未だに存在しているのだ。
この事態を重く見た我々単位警察は、諸君らに情報提供を呼びかけたい。
報酬は『1粒でレモン21個分のビタミンCを持つアセロラ1年分』でいかがだろうか。
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