第6話 恐怖のコロ助ナリ

 皆様、ごきげんよう。

 第5話から1週間以上経過してしまい、全国4000万人の『エッセイ日和』読者の皆様には申し訳ない気持ちで一杯だ。


 実は2週間程前になるが、肩から肘にかけて強い痛みを感じ、近くの治療院に行った所、神経痛との診断を受けた。

 名前は知っていたが年寄りの病気だと思っていただけに、遂に自分もそういう歳になったのだと寂しさを感じている。


 だが、7月末には私にとって最大のイベント、アメリカンプロレスWWEの日本公演が待っており、プロレスファンの私は神経痛を抱えて両国国技館に向かったのだ。

 4年前の公演はコロナで中止してしまったので、5年ぶりの公演復活にテンションは爆上がりであった。

 『我々は5年間待ったのだ! 両国よ、私は帰ってきた!』

 心の中でそう叫びながら、スーパースター達の公演を楽しんできたのだが、なんと新型コロナに感染してしまった。

 私は在宅ワーカーなので基本的に外に出ることはあまりなく、感染ルートは完全にコレだ。

 しかも、隅田川花火大会の日でもあったため、会場に近い両国は大混雑であった。

 まさに感染に最も適した環境が用意されていたということになる。


 ちなみに、私は非常に体が弱い。

 長い人生の中で、私より体が弱い人を未だに見たことがない。

 子どもの頃は授業中に具合が悪くなり、保健室で寝ていることが多かった。

 ちびまるこちゃんに出てくる山根の気持ちが痛いほど分かる。


 そんな私がついにコロナと遭遇してしまったのだ。

 もはや必然と言っても過言ではないだろう。


 異変を感じたのは公演から2日後の夜。

 仕事を終えた私はひどい頭痛を感じており、風邪薬を飲んですぐに寝たのだ。

 長い貧弱人生の中で培った、早めの対処だったが、残念ながら翌朝にはもっと酷い状況になっていた。


 全身の関節が痛い。

 頭が割れるように痛い。

 うわっ、すごい熱が出てる。

 フラフラして歩くのも困難。

 ちょっと油断したら意識が持っていかれそうだ。


 これは相当やばいと感じた。

 数多の風邪をひいてきた、風邪っぴきのスペシャリストである私がそう直感したのだ。


 自分の力で病院に行くことを頭でシミュレーションしてみたのだが、どうも無理そうなので家族にタクシーを手配してもらった。

 おかげで、かかりつけ医の診察を受けることができた。

 このとき、私はインフルエンザであることを期待していた。

 インフルならタミフルですぐ完治するからね。

 だが、診察結果は無情にも『コロナ』なのであった。



 新型コロナは風邪だと言う人がいる。

 多分ふざけて言っているのだろうが、半分は当たっていると思う。

 なぜなら、処方される薬は風邪の時に出されるものと完全に同じだったから。


 半分当たっていない部分は、そもそもの定義の問題である。

 『風邪とは、風邪の症状を示す疾病のうち、風邪でないものを除いたもの』が、風邪の定義なのだ。

 インフルエンザや新型コロナは風邪の症状を持っているが、その危険性から分類を分けたので、もう風邪ではない。

 などと定義の話をしたところで、結局は風邪薬を飲むことになるのだ。

 これは、一刻も早い特効薬の登場が望まれる。



 罹患した感想はというと、思った以上にキツイ。

 インフルもかなり辛い印象があるのだが、それの倍くらい辛かった。

 一番症状が重かったときは、寝ているときは悪夢を見るし、起きているときも意識が朦朧としていて、悪夢と現実の違いがよく分からないほどだった。

 30分寝ては頭痛で起き、また30分くらいするとまた意識が無くなる、そんな寝起きを繰り返したことは初めての経験だった。

 武漢で確認された頃に比べ、かなり弱毒化したはずなのにまだこんな破壊力があるとは……。


 その一方で対策が上手くいった所もあったので紹介しようと思う。

 コロナ等の感染症が感染する経路は主に3種類あると言われている。

 口、鼻、目である。

 口からの感染は手洗い・うがいで対応できるのだが、鼻と目の対策はあまり知られていない。

 結論から先にいうと、どちらもザバザバ洗い流してしまえばよいのだ。


 まずは目の洗浄だが、商品で言えば『アイボン』とか『アイフラッシュ』といった洗眼薬がこれにあたり、カップに洗浄液を入れて目に当て、目をパチパチするだけで綺麗に汚れを洗い落とすことができる。

 一本あればかなり長いこと使えるので、是非常備しておきたい。

 意外なことだが、目からの感染はかなり多いらしい。

 特に目を擦るクセがある方は是非試して欲しい。


 鼻も同様に『鼻うがい』がある。商品で言えば『ハナノア』や『ハナクリーン(サーレS)』というものがある。

 専用の容器に洗浄液を入れ、一気に押し出すことで鼻の中に洗浄液が勢いよく噴出される。

 なんだか痛そうで怖いと思われるかもしれないが、実際にやってみると全く痛くないどころか、す~っとして気持ちがいい。

 洗浄後の液体は反対側の穴から出るので、喉に流れ込む心配もない。

 はっきり言って、クセになる気持ちよさだ。


 私は『ハナノア』を使っていたのだが、3~4回分で無くなってしまうためどうもコスパが良くない。

 そこで、『ハナノア』の容器に安い『サーレS』を入れて使用している。

 『サーレS』は粉末で1包装あたり『ハナノア』1本分の量を作ることができる。

 これが50包装で1,500円程度なので、値段を気にせず使い続けられるのだ。


 今回、鼻水がほとんど出なかったのだが、これは『鼻うがい』を頻繁に行った結果と考えている。

 鼻はかみすぎるとヒリヒリしてくるので、今後はかむより洗浄をオススメしたい。

 もちろん、感染症予防だけでなく、花粉症にも効果的だ。



 少し、話は変わる。

 私は若い頃に新卒の女の子(J子とする)を弟子にしたことがあるのだが、J子は私とは真逆で風邪をひいたことがない健康優良児であった。

 風邪をひいたことがない? そんな人いるわけないじゃん! と思っていたのだが、現実世界で実在していることをこのとき初めて知ったのだった。


 ある日のこと、J子が真剣な顔で私に話しかけてきた。


「昨日……♪さんが私の夢に出てきたんです……」


 おいおい、マジですか。

 ま、まさか、色っぽい話じゃないだろうな……。


「どんな話か聞いて良い?」


「夢の中で私が体調を崩していたら、♪さんが引き出しを開けて『さあ、好きな薬をいくらでも飲むといい!』って言ったんです。で、引き出しを見たら、一面に薬が詰まってたんです」


 いや、どんな夢だよ!

 俺のドキドキを返せ!

 っていうか、なんでそんな報告してくるんだよ。


「ねえ、俺のイメージってそんな感じなの?」


「そんな感じですね~」


 ならばと、実際に引き出しを開いて見せたのだが、引き出しの半分くらいに薬が詰まっていたのだった。

 ちなみに、大体の事態に対応できるほどのラインナップを揃えていた。


「残念! 引き出しの半分でした~」


「いや、大して変わらないじゃないですか。こんな量の薬を見たのは生まれて初めてです」



 こんな感じで、体が弱いが故に医薬品を色々試してきたのだが、周囲からは薬オタクだと思われていたのだった。

 感染対策はしっかりやるべきだと思うが、ほどほどにしないと薬オタクのレッテルを貼られてしまうので注意が必要だ。

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