第7話 反ワクチンのチラシを見てみよう
皆様、ごきげんよう。
前回、私が新型コロナに罹患した話を書いた。
ちょうど治りかけてきたというか、状態がかなり改善していた頃の記事だ。
その後、なんとか治ったと言いたいところなのだが、実は後遺症に苦しんでいる。
症状は倦怠感、筋力低下、咳といったところだ。
咳については、元々喘息持ちなのが悪化した感じだ。
喉の腫れが引いているのに咳が止まらないという、なかなか苦しい状態だ。
筋力の低下は本当に困る。
食品の袋を開けられないほど、体に力が入らない。
倦怠感も筋力の低下が原因なのかもしれない。
ということで、病院で診察を受けたところ、『コロナ後遺症』との診断結果を得た訳だ。
最近のコロナは毒性が弱いそうだが、私のように体が弱い人はまだまだ注意が必要なのだろう。
そんなつらい日々を送る私のもとに、怪しいチラシがポストに投函されていたので紹介したいと思う。
簡単に言えば『反ワクチン』を訴えるチラシだ。
コロナで苦しんでいる人の所に投函するなんて、余程ネタにされたいのだろう。
ということで、お望み通りネタにしてやったという訳だ。
誤解がないよう、最初に断っておくが、ワクチンを打つか打たないかは自由だと考えているし、批判するつもりは全く無い。
強制ではないし、リスクはどちらにも存在するからだ。
ネタにする理由は、あくまでも怪しい内容で騙そうとしている点に尽きる。
ちなみに私はワクチンを3回接種している。
今回の罹患にどれほど影響があったのか分からないが、少なくとも致死率が高い時期に罹患することは無かったので効果があった可能性はある。
私が接種した時期はテレビで連日、ワクチンの危険を報道していたように記憶している。
『国民全員PCR検査をしたほうがよい』といった発言をしたコメンテーターもいた。
ワクチンの話をする前に一応触れておくと、PCR検査は偽陽性、偽陰性がそれなりの確率であるため、国民全員に検査をすると偽陽性者が大量に出てきてしまう恐れがある。
医療機関はより逼迫するし、偽陽性が原因で重症化率や死亡率が低下することで、正しい統計を取ることができない事態となるのだ。
マスコミに多い傾向なのだが、母数が多いほど統計的に優れていると勘違いしがちである。
病気や薬に関する情報は統計ではなく疫学であり、似て非なるものなのだ。
さて、ワクチンの話に移ろう。
コロナワクチンの成分と言えば、mRNA が有名だが、他にもポリエチレングリコール、コレステロール、塩化カリウムなどが含まれているらしい。
このポリエチレングリコールは毒性が低いため医薬品に使用されることが多いのだが、まれにアレルギー反応を起こすことがある。
ワクチン接種時にアナフィラキシーショックについての注意を受けると思うが、恐らくはこのポリエチレングリコールを想定したものと思われる。
このように、ワクチンの成分だけを見ても決して安全が保証されている訳では無いのだが、それでも打たないリスクより打つリスクの方がはるかに低いと考えられた訳だ。
つまり、武漢で発生した頃の致死率は3割程度だと考えられており、もしもワクチンを打たずに集団免疫を獲得することで事態の沈静化を図ろうとした場合、人口の7割が感染し、そのうちの3割が死ぬことになるので、単純計算で2000万人程度の死亡者が出た可能性がある。
ワクチンだって安全が保証されている訳ではないが、それでも『もし感染したら3割の確率で死ぬ、感染力の強いウィルス』をノーガードで迎え撃つのか、『低確率で死ぬかもしれないが高い確率でウィルスから守ってくれるワクチン』を打つかの2択であれば、ワクチンを打つというのが合理的な判断だということは言うまでもないことだ。
現在においてはオミクロン株以降で死亡率が低下していること、ワクチンの効果が薄れていることから、絶対に打ったほうが良いとはいえない状態かとは思うが、ワクチンの基本的な考え方はやはり死亡リスクの比較で考えるべきだと思う。
子宮頸がんワクチンもリスクが指摘されて接種率が低下しているのだが、実は子宮頸がんで死ぬ可能性の方が大分高いので、将来的に子宮頸がんで亡くなる方が増えるのではないかと懸念している。
というのが、ワクチンに対する私の考え方だ。
だが、ワクチンはとにかく危険だから打ったら駄目だと言う人達がいる。
私とは考え方は異なるのだが、あえてチラシをじっくり読んでみようと思う。
――
まず、1枚目。
全国の死亡者数を折れ線グラフにしたものが書かれている。
一見すると、2022年の死亡者が大幅に増加したように見えるのだが、グラフの最低値が100,000人から始まっているので、よく見ると実際はそれほどでもないのだ。
このように 0 から始まっていないグラフは人を騙す際によく用いられるので注意が必要だ。
また、あらゆる死亡理由の死亡者を合計しているだけなので、ワクチンとの因果関係を関連付けるのは無理がある。
さらに裏面には、『ワクチンの解毒方法』が列挙されている。
すげえな……。
解毒するくらいなら打たなきゃいいじゃないか。
なんで、わざわざ打って、解毒するんだろう?
要約してみると、以下のようなことが書かれている。
・熱めのお茶を飲もう。カテキンだよ、カテキン!
・ウコンを摂ろう。
・納豆を食べよう。微細な血栓を溶かすぜ!
・食物繊維を摂ろう。
・加工食品を食べるな! 発酵食品を食べろ!
・小麦製品を避けろ。残留農薬が問題だ!
・天然塩を摂ろう。
など、なかなか香ばしい情報が盛り沢山だ。
っていうか、ただの健康オタクじゃないか。
なんだよ、残留農薬って。
私は、それがどう作用してワクチンが解毒されるのかを知りたいんだよ。
――
2枚目。正直なところ、すでにお腹いっぱいなのだが。
コロナワクチンによる死亡認定数が 596名だと書かれている。
死亡された方々には心からお悔やみを申し上げたいが、先程書いたようにワクチンがなければもっと死亡者が増えていたことは容易に予想できる。
恐らく、政府だって想定の範囲内だと思われる。
何度も言うが、ワクチンは絶対に安全というものではない。
裏面にはワクチン接種後の被害が表形式で書かれていた。
症状や死因、症状が出るまでの日数が書かれているのだが、これが見事にバラバラなのだ。
様々な被害があることをアピールしたいのだろうが、疫学の観点で見るとワクチンと被害の因果関係が無いように見える。
先ほど、疫学と統計学が違うと書いた。
ざっくり言うと、統計学は雑多な情報から共通点を見つけ出すのが目的で、疫学は同じ条件の集団から傾向を探すものだ。
医薬品の開発や疫病の原因を探る場合は、疫学を使用する。
治験では同じ条件下の被験者を多数集めてデータを取っていることが知られているが、あれは疫学に基づいている。
よく、『ワクチンの被害を国は認めようとしない。因果関係がないといって誤魔化す』と言われるが、実際にこのようなデータで因果関係を認めることは難しいように思われる。
――
3枚目。
mRNA ワクチンの危険性に対し、偉い学者が警鐘を鳴らすという構成だ。
特に改良型ワクチンとして開発中の『レプリコンワクチン』が危険だということらしい。
まだ実際に接種が開始されている訳でもないし、試験中に重大な問題が見つかった訳でもないのに、なかなか想像力が豊かだと感心する。
心配なのであれば、しばらく接種を見送って影響を確認してからでも遅くはない。
『地雷原の正しい歩き方は誰かの後を歩く』ということだ。
実際に問題が起きる可能性も否定はできないが、未来に起きることは誰にも分からないのだから。
『レプリコンワクチン』は、自己増殖型のため効果が長続きする特徴を持つのだが、このワクチンが他人に感染する等と書かれている。
でも、どうやって他人に感染するのかまでは書かれていない。
せめて、根拠ぐらい書いて欲しいのだが、『偉い先生もそう言ってる』という体でゴリ押しする作戦らしい。
じゃあ、私も偉い人が言った言葉を引用させてもらうことにする。
『当たらなければ、どうということはない』
――
ということで、危機感を散々に煽りつつも、科学的な根拠に結びつかない残念なチラシであった。
でも、一定数は騙されるんだろうな……。
そういえば、私の父親は私が初任給で家族のために買った電子レンジを見て、こう言って怒鳴ったことを思い出した。
「電子レンジは電磁波を出すから危険だ。お前は俺を殺すつもりなのか!」
アル中でヘビースモーカーのくせに、よくそんな事を言えたものだ。
人の善意を非科学で切り捨てるとは、子として生まれたことを後悔するレベルだ。
きっと父親は未だに電子レンジを一切使わない生活をしているのだろう。
随分前に蒸発しちゃったので、確認する方法もないんだけども。
これは非常に大事なことだと思うのだが、テレビや週刊誌の情報をそのまま信じるのは止めた方がよい。
特に、やたらと危機を煽る情報の取り扱いには注意が必要だ。
きちんと調べ直すくらいはしてもよいと思う。
ということで、そろそろ締めようと思うのだが……病気になると、どうしてもネガティブな思考になりがちだ。
今回はお笑い要素が皆無だったけども、次回は是非盛りだくさんにしたいものだ。
皆様も健康には気をつけてほしい。
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