第17話

 総理大臣には、難なくなることができた。もともと、勝算のある戦いを挑んでいた。政界では、私の起こす革命に流れが向いていたのだから。前総理は極端に古い人間で、時々差別発言で炎上していた。そんなことも分からない人に政治を任せていいのか。国民の不安感がピークに入った頃を見計らい、私は汚職と弱点を徹底的に押した。

 すると、思ったより簡単に勝つことができた。少し物足りないぐらいでもあるが。


「本気ですか、総理!」

「奴隷化の法案とはどういうことですか!」

 目の前から記者が迫ってくる。シャッターの音が耳障りだ。

「ですから、これは奴隷化の法案ではありません!」

 そんな記者を一掃する。確かに、この法案は今までと比べてかなり異質なものだ。しかし、私は必要だ。一番最初の法案なんだから、そんなに人が来なくてもいいのに。

 今回成立した法案は、雇用者と労働者による直接契約を可能とし、その年齢を引き下げるというものだ。私が公約として掲げていたものの一つである、貧困の解消。それを活性化させるためのものだ。

「憲法には違反していません。この法案でも労働者の人権と、子供の教育環境は適切に守られます。」

 記者は頑固なもので、こういった反対意見の方が多く出るようなことを進めると、必ず否定的な意見を言ってくる。この法案は大丈夫だ。かなり無理をして通したのは事実だが、それでもかなりの支持者もいる。

 今回の法案で最も重要視されているのは、雇用による人権尊重と、成人の有無が必要ないことだ。もちろん、子供を働かせることは非常に問題だ。憲法的には子供を働かせることはできない。

 しかし、現在その法律によって飢えていく子供がいることも事実だ。生活保護法はもう50年前には撤廃された。

 理由は一つ、金がないからだ。


 もう、政府にはお金がない。税金も限界になり、各地のインフラが困窮している。別に借金が問題ではない。国の運営は今も昔も変わっていない。問題は一つだ。

 世界的な貧困が広まった。今や世界中で食糧も燃料もなくなっている。政府は泣く泣く保護をやめた。

 今、政府関係なく貧困を止める法案が必要だった。


 通称「奴隷化法案」。私の持ち込みだ。

 労働者と雇用者が直接契約をし、雇用することができる。


 その関係が奴隷のようだから奴隷化法案と言われた。そんなことはない。貧困を救う重要な政策だ。


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