第13話

「ちょっと、桜! いい加減どこにいくのか白状しなさい!」

「えー、いやだよぉ!」

 桜は、私を連れて駅までやってきていた。病院を抜け出せるタイムリミットは3時間。もう、1時間が経っていた。

「着いたよ。」

「ここ?」

「うん。」

 ここまで1時間。わさわざ難病の私を連れ出してまで私に見せたかった景色。階段を上り切った先、目の前に広がるのは、


 …病院だった。


「桜、病院しかないけど。」

 目の前には、病院がある。小さな病院。私たちが入院している場所だ。

 その奥には小さな林がある。病院以外に見ることのできる場所はない。つまり、桜は病院を見せたかった…?

「そうだよ。」

 桜は、この病院を肯定した。

「私は、この病院を見せたかったの。」

 ますます意味がわからない。もう一生を病院で過ごしてもおかしくないという時期なのに。桜は病院を見せた。

「お、来た来た。いい頃だね。降りよう!」

 桜は、そう言って駅から降りていく。なんで駅に登ったのよ。

 階段を下り、病院の駐車場に着いた。すると、桜は駐車場にいた男性に声をかける…?

「こんにちは!」

「こ、こんにちは。」

 突然声をかけられた男性は戸惑っている。私と桜を交互に見て、顔は驚きに満ちていた。

「咲希、わからない?」

「え?」

 桜は、突然そう言った。


「この人が、あなたのお父さん。」

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