第14話


「ほら、起きて。朝ごはん食べよう!」

 誰かに揺さぶられている。うぅ、朝なの…?

「おはよう!ナンちゃん。」

「おはよう。ふぁーあ。」

 大きなあくびをかみ殺す。

 途端に大きな視界が目に入る。カーテンをすり抜けてきた光がまぶしく私を照らす。そのたびに、やる気が沸く。

「じゃあ、ごはん食べに行きましょう、桜。」

「そうだね。行こっか!」

 暖かな日差しが私たちを照らす。病院の窓からは、綺麗な雲が見えた。


「それで、何をしてたの?」

 早朝の脱走について問いただす。本来ならかなりの大問題だ。

「えー。話さなきゃダメ?」

「いやなら、いいけど…」

「じゃあ、秘密!」

 桜はそういって口をつぐんでしまった。桜の秘密をすべて聞くことのできる日はいつになるのだろうか。ふと、ずっと、ずっと遠くの青空を見つめた。果てしなく遠い青色が少し手に届くような迫力を帯びていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る