第7話

 これでこの生活も終わり、いつものスラム生活に戻ることになる。

「ところでですが、梨花さん。親っていますか?」

「え?」

 驚きのあまり、素っ頓狂な声を出す。

「いえ、すみません。ただ、あまりに気になったもので。このあと、親御さんにきてもらって書類を申請してもらう必要があるのですが、いらっしゃらなければ代理が必要ですので。」

「い、います。」

 親などいない。とっくに捨てられている。多分どこかにいるだろう。でも、私が近づいたら殺されるかもしれない。だからって、この人のお世話になるわけにはいかない気がする。

「そうですか。では、あとは親御さんとのお話になりますので、好きなタイミングでお帰りください。」

「はい。」

 私は嘘をついた。小さな嘘だ。もしかしたら、嘘をついてはダメだったかもしれない。もう、手遅れだ。


 ◯─────◉


「ねえねえ。ナンちゃん!」

「うわぁぁぁ!」

 朝。起きると隣に桜がいた。いや、ここはスラム街なんだけど。

「どうしてここに?」

「いやー。ナンちゃんが一人で飢え死にする予感がしたからさ。」

「えぇ。」何でわかるのよ。

「あはは。ねぇ、知ってる?」

「何を?」すかさず、私は聞き返した。


 彼女は、耳元で呟いた。

「私はね、怒ると怖いんだ。」



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