第二章

第8話

 あの日から、おおよそ11年が経った。今年で高校2年生になる。あの後、結局私はあの医者の養子になった。

 資金援助を受ける代わりに薬の治験を受けるっていう契約で資金をもらうことになった。

「それで、この薬を飲めばいいの?」

「そうらしいよー。まだ未成年向けの治験が終わってないから最悪下半身が動かなくなるね。」

「はいはい。大体全部の薬がそうでしょうが。」

 そして、薬を飲む。まぁ、いつもの通り体は何ともない。ちなみに、治験を行なっている間はベッドの上から動いてはいけない。薬の効果だけを調べるために、それ以外の病気になる要因を作ってはいけないのだ。

 というわけで、治験期間は学校を休みベッドの上でひたすら自習ということになる。

 私は別に何ともなく自習するのだが、問題は桜だ。彼女は集中力がない。というよりも勉強を続けていると途中で何かのトラウマが戻るらしい。

 彼女は何か一つのことを続けることができない。私も最初はそうなりかけていたが、気力で解決した。

「ナンちゃん、助けて!」

 彼女は何かに怯えたように震え始める。これは彼女の呪い。そして、闇だ。

「桜。大丈夫?」

「あぁ。あぁぁああぁぁぁぁああぁあぁぁあぁぁぁぁあぁあぁあ!」

 天地を裂かんばかりの怒号が辺りを振るう。これは私が受け止めなければならない。

 彼女の闇を、私は受け止めたい。


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