第16話

『只今、内閣総理大臣指名選挙が始まりました。昨今では───。』

 虚ろな声が響き渡る。国会議事堂の目の前で、リポーターが身振り手振り伝えている。

 政治への関心は決して高くない。現状維持を求める人々は多い。その中で、彼女は際立っていた。

「今こそ!国民を守るための政治を!」

 大声で、熱く語る彼女の名は、鈴木梨花。私の幼馴染で、親友だ。

「うーん。桜、このパスタも美味しい!」

「あはは。ありがとう!」

 梨花は、満面の笑みを浮かべる。彼女の内面を本当の意味で知っているのは私ぐらいなものだろう。

「梨花、選挙出るのー?」

「うん。それが夢だからね!」

 何の屈託もなく返事をする梨花。やはり彼女は隠している。

「それで、本当は?」

「はあ、また心を見透かしたなー?」

「まあまあ、教えてちょうだいよ。ほら?」

 梨花は大きくため息をついた。

「何としてでも勝ち上がる。それだけ。」

「あはは。梨花、目が怖いよー!」

 また、笑い合う日々が小さなカフェに訪れていた───。

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