序章
第2話
久々に、夢を見た。
もう、中身は忘れてしまった。そんな自分が、なんだか虚しくなる。不恰好な未来は、まだまだ幼いようだった。
ふと、空を見上げた。まだ夜の余韻は暖かく、それでいて名残惜しそうに消えていく。
そんな彼らをまた追いかける。それでも、ここはただ一つの地獄である。
◯─────◉
顔を洗いに公園にやってきた。
スラム街には、無料で水を使える場所がほとんどない。ここは、その貴重な一つだ。なんでも、国には面積に対して必ず公園を設置する義務というのがあるらしい。誰もスラム街に公園など置きたくないのだろう。最低限の設備しかなく、トイレも遊具も存在しない。
「ぷはぁ」
やっぱり、顔を洗わないと起きた気がしない。
闇を引きずった雲が太陽に照らされている。太陽は眩しいね。
目の前に見えるのは、錆びた工場。
私は、そこにアルミ缶やペットボトルを集めて持ってきた。
この工場はいつも血の匂いと、焦げた髪の毛の匂いがする。そして、入り口にはいつも知らないおじさんの看板が「世界を救う」だとか言っている看板がある。
反吐が出る。
「おじさん。待ってきたよ。」
「おお、きたか。待ってたぞ。」
「そう、ありがとう。」
この工場はよくわからない場所だ。身寄りのなく、身分の証明もできないような子供から、アルミ缶やペットボトルなどの資源を集めている。それなのに、工場の主な仕事はゴミ処理らしい。
「はいよ。今回の報酬、300円だ。」
「ありがとう。」
「時々は休めよ。まあ、またな。」
ここの受付のおじさんは、いつも複雑な顔をしている。例えば、自らの哀れな境遇に歓喜しているような顔。でも、それでいて悲しんでいるような顔だ。
工場を出ると、知らないおじさんの看板が目の前にあった。
『世界を変える、架け橋に』
なんとも忌々しい。
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