第一章

第3話


 気持ち悪い。寒い。痛い。怖い。苦しい。虚しい。寂しい。辛い。恨めしい。憎い。痛い。寂しい。辛い。嫌だ。死にたい。笑いたい。話したい。怒りたい。泣きたい。会いたい。ああ、生きたいなあ。

 ここは、どこ?どことなく暖かい。ふんわりと包み込んでくれる。真っ白な世界は、こんなにも暖かい。ただ、ヒリヒリ痛む体が、この世界から逃げる。この幸せな世界が、また揺れ始めた。

「ナンちゃん!起きて!」

「うぅ………」

「先生! ナンちゃんが起きたよ!」

 頭が焼けるような眩暈がする。視界があちこちで飛び散っている。グロい。ゆっくりと起きあがろうにも、全身がこわばっている。

「先生!早く来てって!」

「はいはい。わかってるから。」

 ようやく目を開けると、目の前にはいかにも医者だというような白衣を纏った男が立っていた。なら、ここは病院だろうか。

「おはようございます。お名前はわかりますか?」

「あ、えっと・・・」

「ゆっくりで大丈夫ですよ。」

 医者は、少し微笑んだ。その笑顔は汚く、醜い。

「名前は、梨花です。」小さく呟く。

「梨花さんですか。よろしくお願いします。」

 医者はやけに早く手を引いた。彼にはまだ不気味な笑みが残っているが、それよりも試すような瞳が何よりも恐ろしい。

 まだ、何かあるのだろう。

「検査があるので、しばらくは入院になります。しばらくは、ベッドの上で過ごしてください。基本的にこの病室から出ることはできません。必ず看護師の付き添いが必要です。緊急時はナースコールを押してください。」医者は、そう手短に説明して立ち去った。

 その足取りは、極めて軽快なものだった。

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