第10話
高校から進路についての書類が送られてきた。正直なところ、どこかの会社に就職するあたりがちょうどいいと思っている。ただ、私には野望がある。その野望を叶えるためには、何をすべきだろうか。
「また、ナンちゃんは考え事してるの?」
「あ、うん。」
「ナンちゃん。挑戦することも、悪いことじゃないと思うよ?」
「え?」
また、桜は私の心を読み取っている。彼女は、どうしてこんなにも人の気持ちがわかるのだろうか。
「ナンちゃん?ご飯食べないの?」
「え? あ、そうだった。」
目の前には色とりどりの素麺。今は食事の時間だった。慌てて食べ始める。
「うーん。おいしいね!」
桜は、まだ底知れない何かを抱えている。彼女の笑顔は、いつもどこか曇っているのだ。
食事を終えたあとは、再び自習をする。時間が余りすぎるので、授業の範囲をやり終えてしまうことがほとんどだ。もちろん、治験の間は高校で授業を受けることができない。だから、その分授業の予習に時間を当てている。
桜は大体その予習のタイミングでこの病室から抜け出す。私が勉強に集中して周りが見えなくなったタイミングを狙っていなくなるのだ。前に一度逃げ出して、味を占めたのか、事あるごとに抜け出そうとする。
「桜、席に戻りなさい。」
「げ。バレるのか。」
少し顔を赤らめて、桜はそそくさと席に戻る。どうにも今日はやる気が湧かないらしい。そろそろ、ベッドに縛り付けることも検討するべきかもしれない。
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