第11話
「やぁ!」
「きゃぁ! ちょっと、桜。脅かすなんて聞いてないわよ!」
青く広がった空の下、また別の光が病室を照らす。
「うーん。久しぶりだねぇ、咲希。」
「そうね。久しぶりの再会で脅かしてくるとは思わなかったけどね。」
ここはまた別の病棟。入院患者用の病棟だ。
「咲希はまた倒れたのー?」
「そうね。そろそろ疲れてくるわ。」
「そっか。」
緩やかなテンポで進む会話は、また曇り空に変わる。
「一緒に来てよ。咲希。」
「今度はどこに連れていくつもり?」
「へへ。秘密だよ!」
光に溢れた彼女は、また誰かを照らす。
「ばぁ!」
「…今度はどこに行ってたのよ、桜。」
「ちぇ。反応薄ーい!」
桜は、梨花の反応に不満を零す。ぷくりと膨らんだ頬の桜はどこか綻んでいる。
「いい加減サボらないの。」
「はーい。」
桜は不満を述べつつも、着実に食堂へ足を運んでいる。明らかな誘導だ。
夜の廊下は古びた電灯に照らされ薄く黄ばんでいる。そんな、疎外感のある廊下を歩く。
「桜。あのねぇ、勝手に出歩くと治験に影響する可能性があるからダメなのよ。」
「へへ。ほら、食堂に着いたよ。ご飯食べよう!」
「はぁ。わかったわよ。」
光に照らされた食堂には、朝とは違う黒一色の窓がある。冷たい夜が、あたりを包み込む。
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