ネズミの学校
砂糖 雪
1-1
今はネズミの学校の時間です。
夜の静かな時間の中で、やわらかな月明かりがこの街の一角にある学校のカーテンの隙間から射し込んでいて、教室の中を淡くスポットライトのように照らして映し出しています。
そこには百匹あまりのネズミの生徒たちが並んで座っていて、教壇の上ではネズミの先生が二足で立ち、チョークを片手に持って、黒板に図や文字を書き連ねています。
生徒たちは、皆しっかりと先生の方を向いて、時折髭をぴくぴくとさせながら話を聞いています。たまに誰かが堪え切れずに欠伸をすると、先生はわざと皆に聞こえるようにして、コホンと大きく咳ばらいをします。すると欠伸をしたネズミはこっぱずかしくなってしまい、もじもじとしながら再び真面目な顔つきを取り繕うのでした。
ネズミの学校はもちろん、お日さまが沈んでからが始まりです。彼らのいるこの学校は、昼間には人間たちが普通に使っている学校のひとつです。人間は夜には学校を使いませんから、その時間にひっそりと学校を拝借しても構わないだろうというのが、彼らの言い分でした(もっともな理由に聞こえます)。もしかすると、この文章を読んでいる皆さまの通われている学校にも、毎晩私たちが寝静まった頃を見計らって、ネズミが集まってきているかもしれませんね。
今晩は、雲一つなく晴れ渡ってよく澄んだ秋の夜空が街を包みこみ、まんまるのお月さまが夜空の大海を独り占めしている、少しひんやりとした夜でした。お月さまが夜空を独り占めできる理由は、星がちっとも顔を見せていないためです。というのも、学校から少し離れた場所にあるこの街の中心では、背の高いビルが所狭しと立ち並んでいて、辺り一帯はギラギラと輝いて、ネズミたちの活動するこんな夜更けの時間になっても、多くの人間達がせわしなく行き交っているのです。そのため、地上の光は空高くまでその手を伸ばしています。星が輝くのは夜空を明るく照らしだすためですから、こうなると星は、自分の仕事を奪われたと思って、やる気をなくしてどこかへ姿を隠してしまうのです。
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